安心できる環境でも学習の難しさを感じる,その要因は…?
前回の記事に書いた「ブレインジム-発達が気になる人の12の体操」の著者,神田誠一郎先生はフリースクールの校長先生。
フリースクールに集まってくるこどもたちの中には,いわゆる「普通の学校」で「みんなと同じように」通い続けることが困難だったこどもたちも少なくないよう。
「みんなと同じように」振る舞うことが難しかったり,「みんなと同じように」できているかを気にするあまり苦しくなってしまったり…「普通の学校」がどの子にとっても過ごしやすい場所ではないだろうな…ということはこどもたちの話を聞いていて私自身もよく感じます。
フリースクールに移ることで「みんなと同じように」という縛り感が弛んで過ごしやすくなったとしても,こどもたちにはまだつらいことが残ることがあるようです。
それが,学習の難しさ。
居心地のよい場でも学習の難しさを感じるこどもたちを見守るなかで神田先生が気付いた,彼らのもつ特徴をこの本のなかで紹介しておられます。
ひとつは,感覚の特徴。 もうひとつは,身体が残している反射。
今回は感覚の特徴について少し掘り下げてみたいと思います。
感覚の特徴として特に気になるのは,まず五感のなかでは視覚・聴覚・触覚。
視覚では,普通に使われている教科書やノートの真っ白い紙だと眩しすぎると感じることもたちがいるということ。蛍光灯・LED・窓からの太陽の光,真っ白い壁からの反射も明るすぎると感じることがあるようです。
聴覚では,大きな音が苦手なこどもたちがいるのはもちろん,たくさんの音のなかから自分にとって必要な音に集中するのが難しいという苦手さがあることもあります。
触覚は身体全体に分布している感覚です。背中がとても敏感だと洋服のタグやベルトが当たる感覚が苦手だったり,椅子の背もたれが気になってじっと座っていられなかったり。足の裏が敏感だと靴下をはく感覚が嫌いだったり,靴を履くより素足でビーチサンダルを履いてばかりだったり。自分から触るのはわりと平気でも,相手から触られるのはダメということもあるようです。
五感以外にも感覚はいろいろあって,たとえば筋肉の緊張具合を感じてほどよくコントロールするための運動感覚(固有受容覚)がうまくはたらかないと,常に筋肉を緊張させすぎていても気付かない,自分の動きをうまく感じ取れないということもあります。
ほかにも,身体のバランスをとるために必要な平衡感覚というものがあって,耳の奥のほう(内耳の三半規管)がこの感覚を担当しているのですが,そのはたらきを邪魔するような反射に影響されて身体のバランス機能がうまくはたらかないというケースもあったりします。
そして,身体全体に関わる内臓感覚といったものもあります。なんとなく胃がむかむかする,呼吸が浅くて胸が苦しい,みたいな感覚と考えていいと思います。過剰な刺激を避ける工夫をしながらゆったりした環境で規則正しい生活を送ることで内臓感覚は安定して,安心して物事を楽しんだりリラックスしてやるべきことに取り組んだりしやすくなるようです。
…長くなってしまったので,次回に続きます。