ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:栄養の補助と心理的治療 序文(2) 前半

「Healing Children's Attention & Behavior Disorders: Complementary Nutritional & Psychological Treatments」

しつこく読み続けていきます!

序文(2) 栄養(分子整合)医学・前半

統合失調症のアドレノクロム仮説:アドレナリンの代謝産物で幻覚作用を持つアドレノクロムが体内で作られて幻覚を起こす。この産生を止めることが治療になる。ノルアドレナリンのメチル化を防げたら,アドレノクロムの材料になるアドレナリンを減らせる。

・ビタミンB3(に限らず,B1,B2,コエンザイムQ10=CoQ10もだが)はメチル基受容体。B3であるナイアシンナイアシンアミドもメチル基を回収するので,脳内のアドレノクロムを減らす作用がある。

・ビタミンB3の大量投与を安全に行えることはペラグラへの治療でわかっていた。ペラグラ治療のための投与量は最大1.5g/日だが,1日3gを数年続けても安全。経口投与が安価。

パーキンソン病治療にL-DOPA補充を行う。症状はよくなるが,ドーパクロムのために精神病的になりうる。B3とCoQによってドーパクロム産生を防げる。

・アドレナリンからアドレノクロムに変化するのを防ぐのに抗酸化作用があるビタミンCやE,ベータカロテンも有効なはず。でも研究デザインをシンプルにする都合でB3のみの二重盲検試験で検討した。その結果,急性期統合失調症にB3は有効だとわかった。電気痙攣療法(ECT)などとの併用も可能だった。

プラセボ(偽薬),ナイアシンナイアシンアミドの3群で二重盲検試験による研究を行った。1カ月間3g/日投与して,2年後の回復状態を評価した。ナイアシンナイアシンフラッシュが起こるため「盲検」にならならないのでナイアシンアミド群も設定した。結果はプラセボ群の3分の1,ナイアシン群とナイアシンアミド群の3分の2が回復し,B3の有効性がわかった。しかし1950年代に精神安定剤が登場したこともあり,この結果はほとんどの精神科医からスルーされた。

・ホッファー博士が独立開業した診療所には子どもたちも訪れた。当初は子どもの診察に消極的だったが,回復スピードの速さに驚き関心が高まった。子どもたちも大人と同量の大量ビタミン療法に耐えられ,80%が好反応を示し,長期フォローも可能だった。子どもの広範な障害に栄養治療は有効だと分かった。

ノーベル化学賞・平和賞受賞をダブルで受賞した者のポーリング博士もビタミン大量療法の支持者だったが,アメリカ精神医学会は高容量ビタミンによる統合失調症治療の価値に関する情報が出版されるのを抑圧しようとした。ポーリング博士は1971年に研究所を設立し,そこでビタミンCとがん治療の研究などが行われた。

(つづく)

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【補足1】アドレノクロムって?
アドレナリンは酸化されると酸化アドレナリンになる。アドレナリンと酸化アドレナリンの片かは可逆的(療法の状態を行ったり来たりできる)だが,酸化アドレナリンがアドレノクロムになってしまうと元に戻ることはできない。アドレノクロムはNADやNADHと呼ばれる物質が少ないときに酸化アドレナリンから変化して作られるが,ビタミンB3はNADの前駆体なので,アドレノクロム産生を妨げることができる,ということのよう。
ドーパクロムもアドレノクロム同様,精神病様症状を引き起こす物質らしい。

【補足2】精神安定剤の登場
本文に出てくる単語はtranquilizer。
最初の抗精神病薬(major tranquilizer)クロルプロマジンが発見されたのが1952年,ハロペリドールが発見されたのは1958年だそう。

【ひとりごと】栄養(分子整合)療法の歴史をざっくり概観できてきている感じ。ナイアシンフラッシュのために本人にも周囲にもブラインドにならないというのが面白かった! 本文によれば,被験者たちはナイアシンプラセボの2群の実験だと説明を受けたよう。プラセボと思いながらナイアシンアミドを飲んだ被験者がナイアシンと同等の改善を示したのはやっぱり高容量ビタミンの効果なのだろうなぁ。