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こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:診断(3) 食物や環境に対するアレルギー,添加物,毒素(つづき)

診断(3) 食物や環境に対するアレルギー,添加物,毒素

「Healing Children’s Attention & Behavior Disorders: Complementary Nutritional & Psychological Treatments」。

前回と同じテーマ、後編です。

 

(つづき)
≪アレルギー食品の影響と残存効果の深度の関係≫
・影響強度の検出
1. 活発,快活,機敏,易刺激性
2. 多動,はりつめている,エネルギーにあふれる,イライラ
3. びくびくした,議論好き,攻撃的,酩酊状態のよう
4. コントロールできないほど興奮,焦燥,手がつけられない躁状態

・残存効果の深度
A. 小馬鹿にする,むずむず,ムカムカ,心ここにあらず,疲労
B. ゼーゼー言う,軽率,痙攣,頭に霧が掛かったような,頭痛,腫れぼったい
C. 混乱,決断できない,不機嫌,無気力
D. 抑うつ,無感覚,混乱,健忘

・よく食べる食物に軽微な反応を起こしていると思われる成人・子どもはレベル1-3にとどまっている。残存効果が成人で持続する場合は病期を発症したと言われるが,経験上レベル2や3の子どもたちは親によって受診させられることになる。レベルCやDはアレルギー反応と気づかれることは稀。

・アルコールの酩酊状態と離脱状態のように,患者の状態も2つの状態を行き来する。どこから始まっても反時計回りに変化する(例:A-1-2-B-…)。ランドルフ医師は「原因不明の精神的・行動的逸脱は環境的見地から調べてみる価値がある」と言う。

・1970年,クルーク医師はアレルギー性緊張疲労症候群を神経系の原発性アレルギー障害として分類した。その内容は以下のとおり。

1. 緊張
(a) 運動:過活動,不器用,リラックスできない
(b) 感覚:感覚過敏,イライラ,羞明
2. 疲労
(a) 運動:疲労,疼痛
(b) 感覚:緩慢,脱力
3. 主要ではない精神神経症
非現実感,抑うつ,奇妙で非合理的な行動,集中困難,神経性チック
4. 関連する自律神経症
(a) 常にみられるもの:眼の下の隈,鼻閉
(b) よくみられるもの:眼科浮腫,唾液分泌亢進,多汗,腹痛,頭痛,遺尿

・こうした症状がある若者たちは,親や教師から叱責や罰を受けたり,同年代やきょうだいから受け容れられなかったりしがちである。

・クルーク医師は,アレルギーを起こす食物のほとんどが毎日口にするものだと気づいた:牛乳,コーラ,卵,そして穀物(特にトウモロコシ)。5-14日間の除去後,その食物を再開すると反応が出現すると考えられる。これを3回繰り返して食物と症状の関係をはっきりさせることを推奨している。8歳女児がチョコレートで心身の不調を呈していたケースもある。

・モスクワで23年にわたって行われていた慢性統合失調症の絶食療法をアラン・コット医師が北米に持ち帰った。入院環境で20-30日の食事制限を行うもので,64%の患者が改善し,47%がよい状態を6カ月以上維持したという。絶食後はベジタリアン食と乳製品を最低6カ月続ける。自験例ではこの方法での入院後4-5日で劇的な変化がみられた。

・ニューボールド医師らは,4日絶食して単一の食物を再開する「慎重な食物消化検査」を広めた。53人の統合失調症患者のうち3分の2は小麦アレルギー,2分の1はトウモロコシと牛乳のアレルギーだと判明し,その他コーヒーや卵,タバコ,チョコレートなども関与していた。神経症や躁病,うつ病でも同様に高頻度のアレルギーがみられた。精神安定剤の抗ヒスタミン作用が抗精神病の効果を発揮しているのではないか,ニコチン酸(B3)のヒスタミン枯渇作用も同じような効果を呈するのではないかと述べた。

・過去5年にわたりリーズ医師は子どもの多動の原因にアレルギーが大きく関与していることを強調してきた。彼は子どもの脳アレルギー・環境性精神疾患を5つのタイプに分類した。深刻な栄養障害をきたした健常児;緊張/不安症状を呈し,鼻汁や疝痛,頻回の呼吸器疾患,発疹,眼の下の隈,青白い,アレルギーの家族歴(特にトウモロコシと牛乳)がある子;統合失調症自閉症の子どもたち;微小脳障害児;本当の意味で知的な遅れのある子どもたち,である。ダウン症の子どもたちも脳アレルギーに苦しむ子どもたちのグループへ加えるべきだろう。

・アレルギー反応の結果として生じる低血糖が,アレルゲンとなる食物へのアディクションの理由をうまく説明している。食物アレルギーの原因となる食物を頻回に摂ると依存が形成され,離脱症状から回復するためにまた頻回に摂ることになる。結果として,患者のお気に入りの食物がアレルギー物質の容疑者だとわかることが多い。離脱期に軽度から重度の低血糖が起こることがよくあるが,低血糖なしにアレルギー症状が起こることもある。4日絶食することで,摂取数時間後に症状が起きる依存症状態から,摂取から数分で症状が起こるアレルギー反応へと変化する。これが,アレルギーや環境の研究の成果として高血糖低血糖にかかわらず炭水化物代謝の障害という考え方を強固なものにした。肝臓・膵臓視床下部・下垂体・副腎も含め身体のどの臓器もアレルギーの影響を受ける。炭水化物へのアレルギーや過敏反応にはさまざまな診断がつけられていることに留意したい。

・炭水化物による依存と同じように,たんぱく質に対して依存状態を起こし,難治性の低血糖に苦しむケースもある。すべての食物が原因食物の容疑者となりうる。高たんぱく・低糖質・砂糖とカフェイン抜きの食事を頻回に摂るプログラムをするときは本人が過敏性を示さない食品だけを用いなくてはならない。

・最近は遺尿の子どもたちの大部分に食物やその他化学物質のアレルギーがみられると唱えるアレルギー医や泌尿器科医がいる。ジェラルド医師によれば,アレルギー反応によっては遺尿筋の攣縮で膀胱容量が小さくなることが主な問題だという。短期的には,イミプラミン(トフラニール)という抗ヒスタミン作用のある抗うつ薬が有効である。女児の遺尿症では反復性尿路感染症がみられる。原因は牛乳・乳製品のことが多い。アンダーソン氏が診た多動児の多くは幼少期に疝痛(たいてい牛乳アレルギー)やイライラがあった。実際,乳製品は脳アレルギーの主要な原因のひとつである。

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【ひとりごと】 抗ヒスタミン作動薬は眠気が強く出るので処方を敬遠しがちだったけれど,見直してみる価値があると感じたし,ナイアシンを活用するヒントにもなると思った。