ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

どっちがいいの? 子どもの躾を脳のはたらきから眺めてみる。

昨日の記事にも書いた書籍「幼児期と脳の発達」,やっぱり鋭い考察がいっぱいです。

息子が小さい頃からずっと私の中で気になっていたテーマ「食べること」についても,またドキッとするような指摘がありました。

子どもがお箸どころかスプーンを使うのもおぼつかない時期の「食べこぼし」問題。幼いうちからきっちり意識させる方が早く上手になるのかいいのか、それとものびのび食べさせるのがいいのか…?

 

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子どもの食べこぼしについて考えるのに、この本ではまずラット(ネズミ)の実験が紹介されています。

ラットの視床下部にある空腹中枢を麻酔で麻痺させると,当然ラットはお腹が空くのを感じなくなるので食べる行動をとらなくなります。
麻酔が切れると元どおり食欲が回復するのですが,この麻酔の効果を長く続けたとき,麻酔から覚めたラット(きっとお腹ペコペコですね)はエサを食べこぼしやすくなるのだそうです。

食べる上で必要な「手で食事やエサを口に運び,こぼさないように口や頬の筋肉を動かして嚥下する」という動作そのものは前頭葉の運動皮質が中心となって担当すること。

でも,空腹中枢を一時的に麻痺させたことによって,麻酔から覚めた後でも食べるための運動がうまくいかなくなるということは,視床下部前頭葉が遠く離れた場所ながら一緒になって食べるための運動をコントロールしているということでは…?

つまり,お腹が適度に空くように(空きすぎたらガツガツだし,空かなければ食べる行動がみられないので)食事の時間や間食の摂り方をうまくコントロールすると同時に,空腹中枢のはたらきを邪魔するような焦りやストレスを招く要素(箸の持ち方について口やかましく言うとか,短時間に残さず急いで食べさせるとか)を与えないような食事の時間を確保することがとても大事だということ。

「ネズミの実験の結果も,このような形どおりのしつけを厳しくすることの無意味さを暗示してくれるのですが…(中略)…昔から言われ続けてきた“食事は,落ち着いた楽しい気分で”ということの正しさを裏付けているわけです」と荒井先生。

…うんうん,ごはんはしっかりお腹を空かせて,楽しく,穏やかな気持ちで食べたいよね!

まだ幼いうちから,ご両親の躾がとっても厳しそうなお子さんにお会いするときには,このエピソードを話してあげたいな,と思います。

そして,我が子はもう食べこぼしに悩むような年齢ではなくなったけれど,心地よい食事ができているかどうか改めて見直してみようと思ったのでした。

みなさんのご家庭では,いかがですか?