とても悩ましい問題,ゲーム依存症。
ゲーム障害が病気として診断されるようになる
ゲーム障害(Gaming disorder)が新しいWHOの疾病分類に加えられることが今年の春決定しました。
2022年の適用開始に向けて私たちも対応を考えないといけないな、と思っているところです。
ゲーム障害を「疾病 = 病気」と位置づけるということは、診断基準に基づいて診断して治療すべき対象になった、ということ。
広いくくりでは依存症とか嗜癖障害の仲間に含まれると考えてよいと思うのですが,医療を提供する側としてはいろいろ戸惑うところもあるわけで…。
ゲーム障害の治療に関して,難しいと想定されること
ひとつは,診断すること。
目の前にゲームをいっぱいして困っている(まずは本人ではない人が心配する可能性が高いですが),という主訴で診察の場に登場したとき,いちおうは診断基準に基づいて診断することになります。
でもゲームを「し過ぎる」の時間や生活への支障の程度とかそういった状態の持続期間とかが診断基準を満たさなくても,やっぱりゲームに関連して困っているという人は存在するはずで,診断基準未満でも介入が必要になる人と向き合うときのスタンスを考えておかなくてはいけません。
お酒でいえば,適正な(?)大酒呑みさんとアルコール依存症と呼べる人の境界を見極める,みたいな話。…微妙さが伝わるでしょうか?
さらに言えば、ゲーム障害ではないインターネットの過剰使用もありますよね。SNS依存とか,ネットショッピング依存とか。そのあたりはこの診断には含まれないけど,やっぱり支援は必要なはず。ううむ,どう扱えばいいのか…。
ふたつめは,未成年でもゲーム使用を制限するルールは何もないこと。
20歳未満の飲酒や,覚せい剤などの薬物使用は年齢に関係なく禁止という法律があるけれど,ゲームは未就学児であってもやりたければできてしまう,ルール無用のもの(R18のゲームもあるにはありますが)。
自己コントロールがまだ上手じゃない子どもたちに,どうすれば治療が必要だと納得してもらえるのか,どうすれば「ゲームの問題を何とかしたい!」と思ってもらえるのか。なかなか難しい問題です。
みっつめは,コレ!という治療法が確立されていないこと。
診断基準を満たしていたので診断した,お子さん本人も「何とかしたい!」と思ってくれた,として…「じゃあ,どうするの?」というノウハウが恐ろしいほど不足しているのです。
基本的には他の依存症・嗜癖障害へのサポートを応用することになるとは思うのですが,法律による規制もない中,自己コントロールの動機づけも大人のようには持ち続けづらい子どもたちに対してどれほどうまく関わっていけるか。
真剣に考えれば考えるほど悩みは深まります。
できることから始めるしかない!
それでも時代はゲーム障害を精神保健や医療の問題として取り扱わねばならない方向へ確実に動いています。
私たちの職場でも今週,まずは親御さんたちに向けて「ゲーム依存やインターネット依存について知ろう」というミニ講演会を初めて開催しました。
子どもが部屋にこもって没頭しているゲームはどんなものなのか,何がそこまで魅力的なのか,ゲームをし過ぎるとどんな影響が出るのか,家族はどんなふうに声を掛けたり関わったりすればよいのか。
そんなことをまず親御さんに知っていただくための会。
まだまだ工夫の余地はありそうですが,まずは親御さんに知識を身につけてもらうことが先決。
その前に,私たちが知識を得ることが必要。
「知らない」「関係ない」で済ませず,興味関心を持って向き合っていこうと思います。
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