ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

親が頭を働かせてはじめて育つ子どもの意欲

やっぱり良書でした、「幼児期の脳と発達」。

なかなか読み切れなかった「幼児期の脳と発達」、ようやく読了しました。

最後の第5章、たぶん荒井先生が最も強調したかったメッセージがすごく心に響いたのでこの本に関する記事の締めにしたいと思います。

頭を使った子育て、してますか?

先生が最終章で嘆いておられるのは、子育てのことを自分の頭を使って考えていない親が多い、ということ。

マニュアルに頼る、ハウツー本に頼る、…。
安直な答えを求めがちな子育ての風潮への厳しいお言葉がありました。

先日の記事で、視覚・聴覚・体性感覚刺激として入力してきた情報を縁上回や島で判断する、という話を書きましたが、

nao-chun.hatenablog.jp

ここでの判断が帯状回経由で前頭葉へ送られる先は、前頭葉にある「まとまった運動・まとまった言語・意欲と意思決定」の三角形。

子どもの脳に入ってきた刺激に子どもが強い関心を抱けば、その情報が前頭葉の三角形に送られ、触ってみたり、遊んでみたり、それについて尋ねたりといったアクションが起こるわけです。

子どもの脳を刺激して活発に働かせたいと思っても、たくさんのものを見せればいいわけじゃないし、親の好みで見せるものを勝手に選べばいいわけでもない。
その子が何に関心を示すだろうと考えて、子どもにとって魅力的な刺激となるものを親が与えてあげなくてはいけません。
そのためには、親が日頃から子どもの様子をよく観察して、判断して、子どもの好みに合ったものを選んで提供する、という親の脳にあるふたつの三角形の活動が必要となるわけです。

そして子どもはその魅力的なものにワクワクする興味を抱いて、「これは何?」「どうしてこうなるの?」と触れてみたりもっと知ろうとしたりすることで、子どもの脳のふたつの三角形も活発に活動することになります。

子どもはこうした疑問を「親として選んだ存在」にぶつけてみるし、それに対して親がふたつの三角形を働かせて期待どおり答えを返してやることで、子どもからの信頼はまた強まり、さらに次の疑問に出会ったときまた親に尋ねてみようと思うようになります。…

子育てはこの工程の繰り返し。

結果的に子どもの脳のふたつの三角形も、親の脳のふたつの三角形もどんどん活動しながら育っていくことになる…親子でお互いに脳を育て合うことが子育てだと言えそうです。

大切な、親の心構え

荒井先生は、

我が子の長所は長所として認め、欠点は欠点として厳しく観察しながら、しかも、なお我が子の成長していく生命力と発達していく脳の機能を信頼するのが親としての心構え

と、この章に書いておられます。
そして、どうすればその心構えができるのかという問いへの先生の答えは、

「わが子ではあっても、親である自分とは全く別個の人格を持った人間になる存在なのだ」と認め、同時に「親としての心底からの愛情を注ぐ」という一見矛盾した心構えを持つ以外ない

とのこと。
わが子は自分とは違う人間だからよく観察しないと分からない。
でも、わが子が絶大の信頼を寄せてくれている親である自分だからこそ、子どもをしっかり育ててやれる。

そんな気持ちを忘れずに、自分の脳をフル回転させて子どもと向き合える親でありたいな、と思いました。

この本にはたくさん考えさせられるところがあり、折に触れて読み返したい1冊となりました。
絶版になってしまっているのが本当に残念。
いつか再販されたらよいのですが…。

幼児期と脳の発達―どうして育つ?

幼児期と脳の発達―どうして育つ?