ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

臭いものに蓋をしていたら、子どもの自殺は減らせない。

「自殺の要因 6割『不明』」ってどういうこと?

ちょっと重い話題ですが、これは触れずにいられません。
どうぞおつきあいください。
今日のNHKニュースより。

とても悲しい、残念な結果です。

職場の業務として「自殺対策」に取り組んでいる立場のひとりとして、申し訳ない、歯がゆい思いです。

自分には何ができるんだろう。
何をしてくればよかったんだろう。

新たな子どもたちの自殺を防ぐためには、残念ながら防げなかった自殺を後から振り返って、何が起きていてなぜ防ぎきれなかったのかを知るのが最も役立つはず。

でも、このニュース記事にもあるように、原因不明とされてしまった自殺が6割もあるのです。

それが対策を考えるヒントを得られにくくしている要因のひとつだと思うし、何より遺されたご家族にとって、我が子が突然命を絶った理由を「不明」で済まされて納得いくはずがありません。

臭いものにはフタをする文化?

家庭内で虐待死が起きたり企業などの組織で自殺者が出たりしたときには、(いいか悪いかは別として)たくさんマスコミにも取り上げられて多くの事実が公になるのに、学校で起きていることは本当に表に出てきません。

今世間を賑わせている教員による教員いじめは、たぶんおとな対おとなの問題だから隠せなくなっただけ。
(本当に、被害に遭われた先生が自殺せずにいてくださってよかった、と心底思います。まずはゆっくりと、安全なところで休養していただきたいです。)

児童や生徒対教員、子ども対おとなの問題の大半はおとなたちによって何重にも隠されているのだろうと想像できるし、子ども間で起きたいじめ調査の結果を含めた「告発の声」もおとなの手によって幾度となくかき消されているのではないかと思うとぞっとします。

そういえば、もう何年も前のことですが…。
教育委員会から「教員を対象とした自殺対策の研修をしたいので講師をしてほしい」と依頼を受けたことがありました。
そのとき言い渡された条件は「タイトルに『自殺』という言葉を入れない」こと。

ええっ?!
自殺対策研修ですよね…しかもそちらからのご依頼なのでは?

モヤっとしましたが争うのも面倒だったので、2枚目のスライドに
「今日は自殺対策のお話をさせていただきます」
とデカデカと書いたこと、今も忘れません。
ちょっとおとな気なかったですかね…。

でも,都合の悪いことは見えないようにする、臭いものにはフタをする文化が学校や教育委員会ある限り、悲しいけれど子どもたちの自殺問題に正面から取り組まれる日は来ないのかもしれません。

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「助けて」と言ってもらいやすいおとなでいたい

追い詰められた子どもたちがことばでや行動でSOSを出しても、それがいつも徒労に終わってしまったら、子どもたちは学習性無力に陥ります。

「何を言っても無駄、どうせ誰もわかってくれない・助けてくれない」って。

子どもたちにそう思わせないためには、子どもたちに「おとなに相談してよかった! ちょっと事態が好転したぞ」と感じてもらう経験をおとなが提供することが必要。

それは、親でも、支援者でも、近所のおじさんおばさんでも、学校の先生でも、習い事のコーチでも誰でもできることだし、本当に誰であってもよいと思うのです。

仕事柄、悩み多き子どもたちにたくさん会わせてもらっている私自身も、そんな大人のひとりでありたいと心から思います。

おまけ

最後に余談ですが、以前いじめ調査を積極的に受けていらっしゃる探偵さんの本を読んで、こんな形で頼れるおとなもいるんだと感動したので、ここでご紹介しておきますね。

いじめと探偵 (幻冬舎新書)

いじめと探偵 (幻冬舎新書)

数ヶ月前、NHKの番組でもこの探偵さんのことが取り上げられていたと思います。
今いじめに悩んでいるお子さんとその親御さんの突破口や解決の糸口になるヒントのひとつとして、少しでも役立てていただけたら嬉しいです。