ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:診断(4) 行動面、知覚面、生物医科学的な、そして知能の検査…ビタミンB3欠乏(NAD)検査

今日は祝日ですが火曜日なので、いつもどおりひとり読書会。

ビタミンB3欠乏(NAD)検査

・精神科の診断は曖昧で、患者が5人の精神科医に会えば5通りの診断がつくかもしれない。しかし薬物療法を含む治療方針は5人とも変わらない。特定の治療が有効な患者たちを見つけるのに、尿中KP検査同様、ビタミンB3への反応性も役立つ。B3が効くということは、NAD-NADH系がうまくはたらいていないからであり、NAD欠乏症=臨床閾下ペラグラ=ビタミンB3欠乏だからだ。

NAD欠乏は、以下の4つの栄養不足に起因する可能性がある。

  1. 低タンパク食によるトリプトファン欠乏。ペラグラの原因のひとつ。
  2. ロイシン過剰、イソロイシン不足。トウモロコシはイソロイシン欠乏の原因になる。
  3. ピリドキシン欠乏。これはトリプトファンNADに変換するとき必要。
  4. 必須脂肪酸の欠乏によるプロスタグランジン不足。プロスタグランジン不足はペラグラの本態病理。必須脂肪酸の不足や必須脂肪酸をプロスタグランジンに変えるビタミンB3、B6などの不足による。

・30年ぐらい前に行った実験で、自分のところへ紹介されてきた、障害のある小児患者38人にビタミン(本見て)と少量の向精神薬を服用させ、心理療法は行わなかった。調子が良くなった子どもはビタミンBをプラセボに置き換え、ある程度病状が悪くなったらビタミンBを再開した。3年の研究の結果、家庭の事情等で脱落した数名を除き、ほぼ全員にビタミンB反応性(ビタミンB依存性)がみられた。反応は診断にはよらず、ほとんど全員が多動傾向であった。

・これらの子供たちはビタミンB3依存症、臨床閾下ペラグラであると結論付けた。特徴は、

  • 多動
  • 学業成績不良
  • 知覚の変化
  • 社会的関係の獲得・維持困難

である。

・データによればビタミンB3異常は遺伝するようで、片親からなら25%、両親からなら75%遺伝する。隔世遺伝することはない。

・ペラグラの診断にはビタミンB3への反応を見るしかないが、ビタミンB3依存も同様である。両者の大きな違いは、左右対称性の褐色の皮膚色素沈着。統合失調症に色素沈着が見られないのは彼らは大抵部屋にこもり、日光に晒されないからだろう。

・ペラグラ発症者が精神病を発症するずっと前に緊張、抑うつ、パーソナリティ障害、疲労などのあらゆる症状を呈することはあまり知られていない。臨床閾値下ペラグラは気づかれず不適切な治療をされていることを示唆する。適正量のビタミンB3を恐れず使えばいい。

・KP検査などでビタミンB6や亜鉛の補給が必要な子どもたちを見つけることができるが、おそらくB3にもよい反応を示す。B3とB6の代謝は密接に関係していて、B6の不足は抗ペラグラ補酵素であるNADの産生低下を引き起こす。B6補充でも、より強くNAD産生を促進するB3投与でも治療可能。これは科学的にはNAD欠乏症だが、NAD濃度を高めるものはなんでも治療になるということになる。トリプトファンはその一部がNADに変換されるため効果がありそうだ。NADやNADHも市場に出回りつつあるが、これも有効だろう。統合失調症に毎日1g投与して、B3よりも効果があるのをずいぶん前に経験した。

・ペラグラにおいてもビタミンB3依存性においても、臨床診断は重要な役割を果たしていない。かつて崇められていたIQ検査を含め、精神科医による記述的診断の将来性を改めて例証している。

ひとりごと

5人の精神科医に会えば5通りの診断がつく、の言葉に図星をさされた気分。
B3とB6とNADの関係が自分の頭の中で整理されてよかった! NADを増やすためにはB3もB6も有効で、B3のほうが効果が高いということ。でもB6にしか果たせない役割もあるはずで、すべてB3で賄えるわけではないのだろうな。