ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

【第1弾】「発達障害バブルの真相」に衝撃を受けています

読みたい本が多すぎる!!

秋の講演・研修会ラッシュ(というほどでもないですが…)が終わって少し時間を取りやすくなったせいもありますが、最近読書量が確実にに増えています。

それも1冊読んでいるうちに読みたい本が新たに2冊出てくるペース。本の虫な私にとっては、自転車操業を上回る嬉しい悲鳴です。

新たに読み始めた本は「発達障害バブルの真相」。

発達障害バブルの真相: 救済か?魔女狩りか?暴走する発達障害者支援

発達障害バブルの真相: 救済か?魔女狩りか?暴走する発達障害者支援

書店で表紙とタイトルだけは見かけたことがあり、そのときはいわゆる「反精神医療系」の本だと勝手に思い込んで手に取ることもなかったのですが、こちらのサイト「治そう!発達障害どっとこむ」の「診察室であまり聴けない医療情報」のページで紹介してくださっている方がいて。

これは絶対読もう!と購入しました。

…なんていうか、いろいろ衝撃です。

第1章 作られた発達障害バブル

「先天的な脳機能障害」としておきながら、実は脳を実際に検査してその結果をもとに診断しているのではない(p.21)

たしか、DSM-5でも「先天的」とは断定されていなかったように記憶していますが(「発達早期よりみられる」くらいの表現)、本当に先天的かどうかを確認した科学的研究の存在を私も知りません。不勉強なだけかもしれないのでご存知の方がいらっしゃればぜひ教えていただきたいです。
でも「生まれながらの」「生来の」「生まれ持った」脳の働き方の違いがある、という表現は当然のように使われていますよね。医学部の講義でもそのように教わりました。
脳機能画像などを用いて発達障害者の脳の働きを科学的に確認されようとしている先生は間違いなくいらっしゃいますが、何か変化が見つかったとしてそれが「先天的かどうか」は知る由もないわけで…。
このあたりのことは意識して今わかっていることを正確にお話しするようにしなくては、と強く思ったところです。

「科学的な根拠のある診断ができていない」と杉山登志郎先生が指摘(p.23)

杉山先生のようなこの道の大家にそうはっきり言っていただけるとむしろスッキリします。

発達障害診断は適切な支援に結び付く場合もあれば有害なレッテルとしては当人の人生を破滅させる場合もあるでしょう(p.25)

現状では診断を伝えるのが私のみに許された行為であることを考えると、診断を伝えることの重みを医師が十分に念頭に置いて診断告知に携わる責任があると私は思っています。
初診で診断を伝えるなんて考えられないし、仮に「うちの子の診断って何なんですか? 発達障害ですか?」と尋ねられても「今の時点では分からない」とバカ正直にお答えしています。
本人の状態が落ち着いて、診断があった方が本人に合った本人の望む支援につながると確信できたときに、診断についてのお話を初めてじっくりすることがほとんどですし、それも「必要な間だけしばらく診断名に頼らせてもらったらいい」というスタンスでお伝えしています。
本人の役に立たない診断なんてクソ食らえです(おっと、暴言失礼!)。

2002年の「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」の「発達障害は6%(6.3%)」という数字は、担任教師による回答に基づくもので、専門家チームや医師による判断ではない(p.40)

えええーっ?! これには本当にビックリ。この数字は本当に色々な所で色々な支援職の方が引用していますもんね。私もこれまでそんなこととは知らずに使ってしまったことが何度もあります。
これと関連して、

うつ病バブルと同じ発達障害チェックリストの普及(p .30~)と、そのチェックリストの中身(p.42~)

にも驚きを隠せません。DSMに基づいた内容とはいえ、あまりにも雑な使われ方のような…。この乱暴なチェックリストの利用法に異議を唱えてくださった児童精神科の先生がいらっしゃることには少し救われますが、結局数値だけが独り歩きしてしまったという経緯があったのですね。

目に余るのは、少しでも不適切な振る舞いをする子どもたちにすぐに受診と投薬を進める教師や保育士の存在(p.63)

これは診療の場にいると悲しいけれど本当によく経験することです。
受診なんてしようと思っていなかったお子さんと親御さんが「学校から『病院に行って診断を受けてお薬を出してもらったらどうか』と言われたので…」と不本意ながら予約してこられることがあるんです。
そういうときの基本対応は自分の中では決まっています。
「お子さんご本人のお困りごとがあって治療をご希望されるならお受けする」、それだけです。

むむ、いろんな思いがかき立てられる…

さらっとレビューを書くつもりが、いちいち何か連想が広がり、日頃自分が考えていることを振り返らずにいられません。

また続編を別記事で書きたいと思います。