ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

【第3弾】「発達障害バブルの真相」に衝撃を受けています

発達障害バブル」、まだまだ知りたい!

驚きの内容に満ちたこの本。

発達障害バブルの真相: 救済か?魔女狩りか?暴走する発達障害者支援

発達障害バブルの真相: 救済か?魔女狩りか?暴走する発達障害者支援

今日はまた最後までレビューしきれませんでした…。
これまでのレビューはこちら。


第4章 未来を奪われる子どもたち

この章もとてもディープで、他にもいっぱい反応したくなった箇所がありましたが少し厳選しています。

現実には本当のインフォームド・コンセントが児童精神科の現場で十分になされているとは到底考えられません。(p.143)

これは自分自身が気をつけないといけないと感じたところです。製薬会社さんの作った薬剤情報に書かれているすべての副作用の可能性を説明するのは現実的ではないし(ものすごい数並んでますからね…)、かといってバッサリ省略するわけにもいかないし。
お薬を試してみたいかどうかの意思はもちろん必ず確認してからお出ししますが、説明に関しては「副作用としてこんな症状が出やすいと聞きます、初めて使うので少量から試します、心配なことがあったら早めにお電話ください」くらいなのが現状です。

一般の人々は、薬に対する過度な幻想を抱きがちなのかもしれない(p.146)

これは本当に感じます。「学校に行けるようなお薬をいただきたくて」と親御さんがおっしゃられたり。いやいや、そんな効能のお薬はありませんから…。仮に薬物療法で何かの症状が楽になっても、それで学校に行けるというわけじゃないですよね。
やっぱり魔法を期待されてしまうのかな。私たち医師の側が万能感剥き出して「なんでも治してあげる」みたいな姿勢を間違っても取ってしまわないよう気をつけたいと思います。

本人が明確に拒否している場合には、医師であっても服薬を強制できない

服薬の強制は精神医療現場のみならず、教育現場にも広がっている(p.148~)

服薬の強制ができないのは当然のことと思っています。
この本の事例にも登場していますが、学校から親御さんに「お薬を飲まないのであれば登校は遠慮してほしい」と言われたり、お子さんが落ち着いて過ごせなかった日の夕方「今朝はちゃんとお薬飲ませましたか?」と親御さんに確認の電話があったり、みたいな話はよく聞きます。悲しく、残念なことです。
次の、

インクルーシブ教育の本質や目的が理解されていない場合、何が起きるのでしょうか。…発達障害診断の曖昧さや危険性を理解しないまま、薬を飲むこのは本人のためだと平気で言えるようになってしまうのです(p.153)

にも考えさせられます。乱暴な考え方だなぁと思いますし、先生方が本気でそう思っておられるのだとしたらがっくりきます。もちろん「周囲の子たちのために服薬しなさい」と強要されるのも正しいとは思いませんが、「あなたのためだから、飲みなさい」という強要は善意成分が含まれているぶん学校の先生方に限らず医療者にも起こりやすいことだと思うので、気をつけたいと思います。

支援が必要な人がいるのは事実ですが、そこに精神医学的レッテルは不要です。…精神医学的レッテルを貼らない早期発見であれば歓迎します。現時点でそのような状況ではない以上、私は「早期発見至上主義」を徹底的に批判し続けます。(p.165)

ああ、まさに!
「診断と支援はイコールではない」と発達障害の講演などでは必ずお伝えするようにしているので、とても賛成できます。
早期に発見するとしても、「発達の気がかりな子・発達に応援の必要な子」くらいのゆるーい拾い方にして、 身体に働きかけるような支援が提供されるのならアリだなと思います。

過剰診断と見過ごし診断のどちらが罪が重いか?…「自分が過剰診断や診断見逃しを犯していないかを考慮することなしに、拙速にASDを診断することが、最も罪が重い」と井上勝夫先生(p.166)

はい!と自戒を込めて。
以前の私は、どちらかといえば過剰診断傾向にあったと思います。厳密には違うかも、でも発達特性で困ってるんだな、と。それを伝えることにはものすごく慎重ですが…。

診断名が「自閉症スペクトラムアスペルガー症候群ADHD」の3つ、処方内容「コンサータリスパダールエビリファイ」の3種類の、複数の子どもたちが紹介されてきた、という榊原洋一先生のエピソード(p.167~)

診断も処方も3点セット…不思議すぎて正直ちょっとよくわかりません。どこかで流行してるのかな。
リスパダールエビリファイ、同時に出すとしたら入れ替え(一方を減らしながらあらたに他方を追加漸増)のときくらいでしょうか。
診断も、自閉症スペクトラムを加えたタイミングでアスペルガーは削除すればいい話ですよね。もしかしたら主治医の先生は入れ替えたおつもりでも、親御さんが覚えていて両方話されたのかもしれませんが…。

究極のデメリット(p.170~)

ここで紹介されている児童精神科医は、発達障害臨床云々より人として大丈夫なのか心配になるレベルでしたので、児童精神科医の大半がこんな感じだと誤解されることがなければよいなぁ…と願わずにいられません。本当に受診の必要な方に、安心して訪ねていただけたらいいなと思います。


…結局書きたいことが次々浮かんで止まらないので、ラストの第5章はまた後日!