ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

PISA2018の結果を読んで、スルーできなかった違和感

PISAの話は終わろうと思っていたけれど…

昨日記事にした、学習到達度調査PISAでの日本人の読解力低下の話。

 もう昨日で終わりにしようと思っていたのですが(それほど興味ないという方も多いでしょうし…)、今朝のyahoo!ニュースの記事を見てやはりこのままにはしたくないと思うことがあって。


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昨日はあえてスルーしましたが…

昨日はサラッと流していましたが、萩生田文科大臣のコメント

PISAでは前回からコンピューター使用型調査が導入されているが、)日常の中で、パソコンを操作しながら学習する経験値の差は要因としてあり得る

にはとても強い違和感を覚えました。

そして、大臣のコメント(http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/02_oecd.pdf)にはないのですが、yahoo!ニュースに載っている文科省の見解

文科省は、重要箇所に線を引くことができる紙の問題文との違いを指摘。また、プログラム上、一つの大問を解答し終えて次に進むと前に戻れないが、「そのルールを忘れ、戻れずにパニックになる受験者も若干見られた」(同省)

も、どうしてもスルーできなくて。

 

なぜこんなに引っかかるのか?

萩生田大臣のコメントどおり、PCの操作に慣れ、PCを使った学習の経験値が上がれば読解力の問題は解決するのかと考えてみたら、そんなわけない!

だって、PCを操作するテスト形式に変わっても、数学的リテラシーOECD加盟国中1位、科学的リテラシーは2位。
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PC操作に苦しんで解答できなかったわけではないのは明らかです。

単に、これからICT教育を普及充実させるという既定路線があって、「学校における1人1台コンピュータの実現等のICT環境の整備と効果的な活用」をするんだからそれでノープロプレム!と済ませてしまおうと思ってるんじゃないの、と勘ぐりたくなってしまいます。

…ま、コメントも「要因としてあり得る」と結んでおられるので、私の勘ぐりは杞憂なのでしょうけど。


それから、文科省の見解のほう。
ふと、先日初めて受けてみたTOEICテストのことを思い出しました。
TOEICはマーク式のペーパーテストなのですが、実は「問題用紙には何も書き込んではならない」という注意書きがあるのです。
その指示にはカンニング防止などの意味もあるのでしょうが、「重要箇所に線なんか引かずとも、しっかり内容把握しなさい。読めるでしょ?」と檄を飛ばされている気分でした。
ディスプレイだから、鉛筆で線が引けないから読めない、というのはやっぱり読解力の弱さゆえだと思うのです。なんと言っても、各国の受験生にとってそれは平等な条件ですしね…。

さらに、大問を解答し終えて次に進むと前に戻れないというルールを忘れ、戻れずにパニックになる生徒さんも若干いたというのは、そのルール(口頭指示か書面指示かはわかりませんが)自体への理解の弱さが露呈したということなのかもしれません。

要するに何がこんなに引っかかったのかといえば、日本の子どもたちの読解力低下への危機感を抱かずにICTやらテスト方式やらのせいにして片付けようとしている(ふうに見える)ことが心配でならないのです。

もっと根本的な対策を考える姿勢を見せてもらえたら少しは安心できるのに…と残念な気持ちでいっぱい。

結局は、子どもたちの読解力を伸ばすための具体的な手立てを考えて、それを学習指導要領に落とし込むしかないのではないかと思います。
国策として子どもたちにどのような教育を受けさせたいのかをきちんと示してほしいな、と願わずにいられません。

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