ナイアシンを飲むと高血糖になるってホント?!
ナイアシンの副作用って?
たしか三石厳先生の書籍だったと思いますが、「ナイアシンの唯一の副作用は若返り」と書かれていた記憶があります。
でも、先日の記事にも書いたとおり、嘔気や食欲低下が起きたり、血管拡張で低血圧になったりと体調に影響を及ぼすことも…。
そんなことをTwitterで共有したところ、「なぜかナイアシンで血糖値が上がった」というご自身の体験や「血糖値が上がるケースを複数経験した」という臨床経験を教えてくださる方々がいらして。
なんでだろう? と気になったので論文を探してみました。
またまたマウスで恐縮ですが…
見つけたのはこちらの2015年発表の論文。
マウスでの実験結果です。
Chen L et al., Niacin-induced hyperglycemia is partially mediated via niacin receptor GPR109a in pancreatic islets.
Mol Cell Endocrinol. 2015 Mar 15;404:56-66. doi: 10.1016/j.mce.2015.01.029. Epub 2015 Jan 23.
無料公開ではなかったので、とりあえず抄録を読むと、
ナイアシンの慢性投与や大量投与中に高血糖が引き起こされるという報告があるが、そのメカニズムはよくわかっていない。
最近、ナイアシン受容体(Gタンパク質共役受容体109a)が膵島細胞に存在することが特定されたが、その潜在的役割は不明なままである。
そこで、この受容体がどのように膵島β細胞機能とその下流のシグナル伝達を制御しているのか、高脂質食で肥満にさせたマウスとINS-1Eβ細胞株を用いて調べた。
8週間ナイアシンを投与すると、肥満マウスの血中グルコース濃度が上昇し、経口グルコース・腹腔内インシュリン(インシュリンは血糖値を下げるホルモン)負荷試験における曲線下の面積が増加した(≒血糖値高めで推移した)。
さらに、ナイアシン投与はグルコース誘発性インシュリン分泌を有意に減少させた一方で、単離した膵島でのペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γとGタンパク質共役受容体109aの発現を誘発した。
あわせて、INS-1Eβ細胞では活性酸素が一時的に増加し、グルコース誘発性インシュリン分泌と細胞内サイクリックAMP(アデノシン1リン酸)の蓄積とミトコンドリア膜電位が低下し、非共役タンパク2とペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γとGタンパク質共役受容体109aの発現は増加した。
まとめると、INS-1Eβ細胞ではGタンパク質共役受容体109aのノックダウンによって、グルコース誘発性インシュリン分泌とミトコンドリア膜電位、サイクリックAMP産生の低下と、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γとGタンパク質共役受容体109a発現の増加が起こらなくなった。われわれのデータより、ナイアシンが引き起こした膵島機能障害は、おそらく膵島β細胞のGタンパク質共役受容体109aが誘発する活性酸素-ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ-非共役タンパク2経路の活性化によるものであろうことを示している。
…ちょっとマニアックすぎましたね。
要するに、ナイアシンを飲むと…
ごちゃごちゃしてきましたが、要するにナイアシンをある程度継続して摂ると、ナイアシンが膵臓にあるナイアシン受容体(Gタンパク質共役受容体109a)に結合することで、血液中にグルコースが増えても膵臓のβ細胞からのインスリンを出にくくするから血糖値が下がらなくなくなる、ということのようです。
この論文はマウスを対象とした研究でしたが、ほかにもマウスと同じくヒトでも膵島のナイアシン受容体(Gタンパク質共役受容体109a)がインスリン分泌を抑制する、という論文がありました。
論文全体を読んだわけではないので、こうしたインスリン分泌の変化が誰にでも起こるのか、それとも特定の体質や条件で起こりやすくなるものなのか、など詳しいことはわからないままですが、ナイアシンの影響で血糖値が下がりにくくなることがあるのはどうやら間違いないようです。
血糖値が下がりにくくなることがよいか悪いかはその人のベースの状態によると思いますが(たとえば糖尿病の人にはよくないでしょうし、日頃から低血糖気味の人にはよいことでしょうし)、ナイアシンを飲むと血糖値が自分の普段の値よりも高くなることがあるらしい、という知識を持っておけば検査結果を見ても慌てずに済みますね。
ということで、ナイアシンを飲んで血糖値が高くなって不安になったことのある方のお役に立てればと思い、この記事を置いておこうと思います。