ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:治療(2) 栄養の処方…必須脂肪酸(前半)

火曜日恒例、ひとり読書会。
今日は必須脂肪酸の話。長いので今回は前半。

読んでいるのはこちらの本です。

必須脂肪酸

・必須脂肪酸には主にω6とより不飽和度の高いω3のふたつがある。どちらも75年前から私たちの食事から消えていき、普通の食事では必要量の20%しか満たせない。ω3脂肪酸は反応性が高く、一部はプロスタグランジンに変換されるがそのためにはω6脂肪酸とのバランスが重要になる。ω3脂肪酸は、成長にも代謝にも、細胞膜の保全にも、皮膚を乾燥から守るためにも必要である。エラスムスの「脂と油」はω3とω6の化学や生化学に関する最も簡潔な良著だ。

・ルビン博士によれば、ビタミンとミネラルと必須脂肪酸がなぜすべて治療的であるか、合理的な説明がある。必須脂肪酸はその一部がプロスタグランジンになるため、必須脂肪酸の不足はプロスタグランジン欠乏をもたらす。ルビンによればこれはペラグラの原因になる。だがビタミンB3も必須脂肪酸のプロスタグランジンへの変換に必要であるため、B3の不足がさらにプロスタグランジン欠乏を強めることになる。ペラグラはB3欠乏症候群だが、必須脂肪酸の不足はペラグラの基質欠乏なのだ。ペラグラによる子どもの多動は、プロスタグランジンの材料としての基質不足か、あるいは触媒として不可欠な栄養素の不足から来ているようだ。1930年代のペラグラ学者が臨床閾下ペラグラの子どもたちを記述した内容が、現代の学習や行動に障害のある子どもたちにあてはめられるだろう。

・ホロビン博士は、必須脂肪酸に医学的注目をもたらした主要な研究者の1人である。必須脂肪酸は体がγリノレン酸を作るのを助ける。体内でリノレン酸に二重結合をひとつ加えて作られる。γリノレン酸は、植物の種に主に含まれ、特に月見草、ルリジサ、黒スグリに多い。必須脂肪酸の中ω6には主にふたつの機能がある。細胞膜に柔軟性を与えて膜結合タンパクの働きをコントロールすることと、体内の多くの急速反応をコントロールすることだ。ホロビンは、γリノレン酸が助ける反応を次のように列挙した:アトピー性皮膚炎、糖尿病性神経病変、月経前症候群、胸痛、前立腺肥大、リウマチ性関節炎とその他の炎症、全身性硬化症、シェーグレン症候群、コンタクトレンズによるドライアイ、消化管障害、ウイルス感染、感染後疲労症候群、子宮内膜症統合失調症アルコール依存症、心血管障害、腎臓病癌、肝臓疾患。γリノレン酸は何か特定の疾患を治療するものではないが、身体全体の健康にとって非常に重要なことは明らかである。これらの病気を作り出している生化学的な問題を修復する。γリノレン酸を得る最も簡単な方法は、月見草オイルなどγリノレン酸の豊富な油を摂取することだ。投与量は一日1g未満から10gまで、重症度に合わせて変化する。

・他動の子どもたちの多くは、リノレン酸をうまく代謝できなかったり、腸管から必須脂肪酸を吸収できなかったり、必須脂肪酸の要求量が通常より多かったりするため、必須脂肪酸不足であると言われている。この仮説を支持するエビデンスは5つある。

  1. 子どもたちにトラブルを引き起こす食べ物のほとんどが必須脂肪酸からプロスタグランジンへの変換をゆるく阻害するものである
  2. 男児の方が女児よりも5倍も他動になりやすいのは男児の方がより多くの必須脂肪酸が必要であることとも一致する
  3. 調査された他動な子どもたちの多くは非常に喉が渇いているが、これは必須脂肪酸欠乏の症状としてよく見られるものだ
  4. 多くの他動児には皮膚の発赤がその他のアレルギーがみられるが、これらは必須脂肪酸で改善することがよくある
  5. 多くの子どもたちには亜鉛欠乏があり、亜鉛は必須脂肪酸をプロスタグランジンに変換するのに必要である

小麦や牛乳により腸管内のエキソルフィン(註:外因性オピオイドペプチド)が増え、プロスタグランジンの生成がブロックされることの影響を受ける子どもたちもいる。アメリカ臨床栄養学雑誌の論文でスティーブンらは、他動児では必須脂肪酸濃度が低下していることも報告している。

ひとりごと

ビタミンB3不足と同じぐらい必須脂肪酸不足も深刻な問題なのだとようやく気づけつつあります。
小麦や牛乳由来のオピオイドについてはこれまでも耳にしたことがありましたが、必須脂肪酸やプロスタグランジン生成との関連では理解できていなかったので、今回も学びの多いセクションでした♪