ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:治療(2) 栄養の処方…ミネラル(後半)・甲状腺

火曜日恒例、ひとり読書会。
今日はミネラルの話の残りと、甲状腺について。

こちらの本を読んでいます。

マグネシウム

・成人の身体には25gのマグネシウムが存在し、その半分は骨にある。通常食事から毎日300㎎摂取し、その3分の1が小腸で吸収される。血中濃度は吸収量と汗や尿での排泄で調節される。吸収のコントロールはカルシウムと同様に行われる。マグネシウムは100以上の体内の反応に不可欠だ。多量にあると催眠性や抗痙攣作用を示す。欠乏するとテタニー、痙攣発作、運動失調、イライラ、抑うつ、精神病様行動などが起こる。マグネシウムが補われると速やかに改善する。

・外科手術や外傷によるストレス、重度熱傷後、汗のかきすぎ、感染などのストレス下でマグネシウムが失われる。短期間の欠乏では深刻な症状は起こらないが、それでもストレス下にあるときはマグネシウムを余分に摂ることを勧める。マグネシウムは非経口的にも摂れる。カルシウムとマグネシウムを含む通常の錠剤は約25%が吸収される。

銅と亜鉛

・体内には、他の物質と結合する形で80-100㎎の銅が存在する。通常の食事には2-5mg含まれていて、1㎎が吸収される。銅濃度は、水の配管が銅製で、特に軟水で弱酸性の水の場合に高くなる。北米では銅欠乏は滅多になく、土壌の銅が不足しているエリアで起きる。亜鉛と銅は逆相関の関係にあり、銅が上がれば亜鉛は低下傾向になる。体内には約2gの亜鉛がある。通常の食事には15㎎の亜鉛が含まれるが、3分の1しか吸収されない。亜鉛は20以上の酵素に含まれる。たんぱく質合成やホルモン放出に関与し、傷や熱傷の治癒を促進する。亜鉛欠乏は成長を遅らせ、インシュリン感受性を高め、味覚や嗅覚を変化させる。

・ストレスは急速に亜鉛を欠乏させる。創傷組織は多くの亜鉛を必要とする。避妊薬服用やポルフィリン尿症でも低下する。亜鉛欠乏は無気力や不活発、活動性減少、学習困難をもたらす。多くの反応で亜鉛と銅は拮抗し、高亜鉛食は銅を含む酵素であるセルロプラスミン活性を低下させる。銅を補充すれば再活性化できる。亜鉛過剰は稀なことだが、貧血を起こす。亜鉛は腸管からの銅吸収を低下させるので、血液中の銅が減少する。亜鉛カドミウムの毒性からも守ってくれる。

・ピロール尿症の子どもはさらにマグネシウムを必要とする。通常子どもには15-25㎎/日、大人には50㎎/日投与する。低栄養状態の子どもでは数種のミネラルが不足するが、これは毛髪分析でわかる。毛髪の亜鉛値は栄養状態のよい指標になる。60μg/g以下は重篤な低栄養状態であり、子どもは通常100μg/g以上あるはずだ。

カドミウム

カドミウムは加齢とともに組織に集積し、特に喫煙者で著しい。副流煙に晒された子どもには問題がみられるかもしれないが、多くの子どもたちは11歳までにすでに喫煙している。カドミウムはビタミンCを血中から減少させる。ビタミンCがカドミウムを解毒するのだ。繊維質の多い食事でも解毒できる。カドミウムは車のタイヤ屑にも含まれる。

甲状腺

・100年以上前に甲状腺機能低下症という病気が発見されるとすぐ、甲状腺の欠乏と情動・行動の問題の関連に気づかれた。しかしこれらの患者は粘液水腫という非常に重症なタイプで、今日では稀である。とても深刻なヨウ素不足のため甲状腺がホルモンを作れなくなっていたのだ。「甲状腺機能低下症:疑われぬ病気」の中でブローダ・バーネス博士とがるトン博士が甲状腺機能低下症の測定値として基礎体温を用いた。甲状腺がなかったら、他のすべてが正常でも細胞は通常の体温を維持できないので、体温測定は甲状腺ホルモン活性の機能検査となる。血液検査はただ甲状腺ホルモンがどのくらい血中にあるかを示すだけで、どのように使われているかは教えてくれない。この研究で、乾燥粉末甲状腺を補充された患者たちは正常になった。彼らの報告の中で、学習障害重篤だった子どもたちは粉末甲状腺の補充でよい状態となっていた。ランガーとシアーが「病気の謎」の中で実証したバーネス博士の知見は、医師たちに真剣には受け止められなかったが、多くの代替医療実践家たちに活用された。私は非常に有用だと思っている。甲状腺に関する血液検査では正常とされた多くの患者が、低体温を甲状腺粉末で改善させたのを見てきたからだ。

・乾燥甲状腺末による治療が好まれない主な理由は、精製T3・T4ホルモンが開発されると製薬会社が乾燥甲状腺の広告をやめて自社製品を宣伝したからだと思う。医師たちは、精製ホルモンのほうが投与量がより正確に測れるからそちらだけを使うよう教わる。乾燥甲状腺はT3とT4の混合物である。血中濃度の低下がなければ乾燥甲状腺は使うべきではないとも医師は教わる。しかし、血中濃度が正常な私の患者たちの中には乾燥甲状腺ホルモンに反応した人もいるし、血液検査で低下していて精製ホルモンには反応しなかった人が乾燥甲状腺ホルモンに変更したら改善するのも経験した。

・最近、ウィルソンが「ウィルソン病」というT4からT3ホルモンへの変換がブロックされる病気を報告した。T3、T4、TSHは正常値だが、最終受容体や組織が活性型ホルモンであるT3を利用することができない。T4はT3に変換される必要があるのだ。T3(カナダのサイトメル=T3ホルモン類似の合成薬)を用いて、体内でのこの変換能力を取り戻すことにウィルソンは成功した。この治療法は、他の治療には反応しなかったさまざまなよくわからない病気を治してきた。私もこの治療の考え方を成人に試し、すでに非常に有効だと気づいている。

ひとりごと

銅と亜鉛もバランスが大事というのは、奥平智之先生の「うつぬけ食事術」にもありました。亜鉛をしっかり摂っておくのは重要なんですね。

血液栄養解析を活用!  うつぬけ食事術

血液栄養解析を活用! うつぬけ食事術

銅の過剰が甲状腺機能に影響しているのは今回初めて知りました。甲状腺ホルモンの数値だけ見ていてはわからない、と…。総合的に見る意識をいつも持っていたいなと思います。