ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:治療(3):ビタミンと薬物療法(総論)

火曜日恒例、ひとり読書会。
今日から、新しい章へ。

こちらの本を読んでいます。

メガビタミン療法の副作用

・天然・人工問わずすべての化学物質には治療上の効果とリスクがあり、バランスを取らねばならない。非常に効果が高ければ、危険な薬であっても用いられる。最も危険なもののひとつインスリンは大量使用すればすぐに非可逆的低血糖症を招き死に至る。しかしその効果の強さゆえ、何百万人もの人が正しい使用法を習得してうまく使っている。メリットが非常に大きければある程度の毒性は許容され、メリットがごくわずかならちょっとの毒性も排除される。薬について非常に細かく記述される医学書では、相対的有効性は適応や効能の単語数と、禁忌や副作用・毒性の単語数で決まる。薬については、効能よりも危険性を説明する単語数の方がずっと多い。体内に自然にある物質は効能の方が多く、危険性を説明する単語数はずっと少ない。

・薬理学で薬の研究をするとき、それぞれの薬の効果と毒性を評価するのは必須である。政府機関がその薬は効果があって比較的安全だと承認しないと一般の患者向けに発売されない。こうした研究は、まずさまざまな動物に十分長期間投与することから始まる。研究室の動物は短命なので寿命のかなりの割合を薬ありで過ごすことになる。そして臓器の病理学的変化や成長率への影響、繁殖への影響、さらに薬の致死性を測るための半数致死量も調べる。

・正の副作用とは、特定の病気への治療として期待されること以外の治療効果を発揮することだ。たとえば、心血管系疾患を持ちコレステロール中性脂肪値の高い人が脂肪を減らすためにナイアシンを投与されて、抑うつ気分の軽減や元気・健康の回復がみられたら、これが正の副作用である。こうしたことはただ血中の脂肪レベルを下げる作用だけを呈するニュースタチン系の薬などではみられない。逆に、統合失調症の患者が治療のためナイアシンを飲んだら、血中の脂肪の低下するだろうが、これも正の副作用である。これは向精神薬では起こらないことだろう。

・しかし、メガビタミンにも副作用や毒性さえ出現する恐れがある。患者も医師もそのことを知り、対処法を知っておく必要がある。しかし、1951年から自分がこれまで治療した子どもたちには副作用を意識して慎重に治療してきたため、副作用がみられたことはない。毒性の検討は動物実験で行われ、安全域が非常に広いことが分かっている。犬などの小動物では体重1kgあたり4gのナイアシンを数ヶ月服用できる。これは70kgの人にとってナイアシン280gに相当する。これまでビタミンで死んだ人はいないので、致死量がどのくらいかを語ることはできない。以前、激しい自殺衝動からナイアシン500mg錠の入ったボトルを飲み干した人に会った。200粒の錠剤で彼女は3日間腹痛を起こした。1日50gを数ヶ月間何の不調もなく飲んだ患者も知っている。このようにビタミンB3は毒性なしと考えられる。非常に多くの疾患に対して有効で治療域も広いので毒性に対する治療有効性は膨大である。同じことが、ビタミンCや全ての水溶性ビタミンに対して当てはまる。

・毒性反応は、もしも継続すれば重症あるいは死に至る。ラッキーなことに水溶性ビタミンは非常に安全だ。ビタミンCやピリドキシンで死に至ったことはない。ナイアシン徐放タイプでふたり、ナイアシンアミドではゼロである。この少なさであれば特定の栄養素を糾弾することはほぼ不可能である。標準的な成人にとって、ビタミンB3を摂ることは摂らないよりずっと安全である。言い換えれば、ビタミンを取らないことの方が死のリスクが高いのだ。だからナイアシンは質の高い延命と死の減少をもたらすのだ。

・水溶性ビタミンが安全なのは、速やかに排出されるため、毒性域まで体内に蓄積されないからだ。水溶性ビタミンは生命そのものの発展以前より存在し、生き物は数100万年かけて利用し適応してきた。ナイアシンやビタミンCはとても嵩が大きいので、これらを摂取して自殺するのは不可能だろう。体に害を及ぼすよりずっと前に嘔吐によって身体から追い出してしまうはずだ。最も起こりうる毒性としては、それも非常に稀ではあるが、黄疸である。

ひとりごと

水溶性ビタミンは安全とはいえ、毒性がないわけではないのですよね。「患者も医師も副作用のことを知り、対処法を知っておく必要がある」には大いに同意! でも、デメリットよりもメリットの方がはるかに大きいからこそ、ビタミンを使わないのはもったいないのだと改めて意識できました。