ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:治療(3):ビタミンと薬物療法(ビタミンB3・前半)

火曜日恒例、ひとり読書会。
今日はビタミン各論、B3(前半)のお話。


こちらの本を読んでいます。

ビタミンB3(前半)

・ここに挙げたのは、メリットとなる副次的作用だが、これら以外にもいろいろある。

  1. ナイアシンナイアシンアミドともに抗関節炎作用
  2. 血液中の総コレステロール中性脂肪を下げ、HDLを上げる
  3. 抗加齢作用
  4. 熱傷や創傷を含む全組織で全般的な治癒作用
  5. 抗がん作用

・最も衝撃的な副作用は、初めて摂った際にほとんどの人にみられるフラッシュだ。多くは前頭部から始まり、徐々に下降する。たいてい腹部あたりで止まるが、稀に全身に伝わる。フラッシュは熱感とチクチクがあり、3時間くらいでだんだんおさまる。ナイアシンを飲む度にその強度は弱まり、ほとんどの人は数週間でほぼ感じなくなる。飲むのが怖くなるかもしれないので、患者には前もって知らせておかねばならない。少数ではあるがこのように適応していかない患者もいるので、数週間しても強いフラッシュが続く場合は同じ量飲むのをやめないといけない。空腹時でもそうでなくても、フラッシュの強度とスピードは摂取量に依存する。フラッシュ(血管拡張)はナイアシンによる直接的な作用ではないが、プロスタグランジンが引き起こす脂肪細胞からのヒスタミン放出による。

・血中のナイアシンをすばやく上昇させるどんな要素も最大限のフラッシュを生じさせる。静脈内注射はではほぼ確実にすぐに反応が出る。ナイアシンは胃で速やかに吸収される。あたたかい飲み物にナイアシンを溶かして飲むと非常に激しいフラッシュが生じるだろう。逆に、ナイアシンの放出や胃での吸収を遅らせるものは何であれフラッシュを軽減させる。たっぷり食事を摂った後冷たい飲み物を摂るとフラッシュは軽くなるだろう。フラッシュを楽しむ患者もおり、その多くは関節が和らぐのを実感している関節炎の患者である。

・フラッシュは、徐放剤形で胃をバイパスすることで低減しうる。この剤形にしか耐えられない患者もいるが、私はこのタイプは嫌いだ。ナイアシンによる害を被った3人くらいの患者たちはすべて徐放剤を使っていた。何年も前、私は製薬会社のためにニコチン酸アルミニウムを試してみた。ひどい製品で、激しい腹部不快感を生じた。ナイアシンをゆっくり放出させるような、アルミニウムではない物質と結合させるほうがよい。ニコチン酸イノシトールのようなエステル結合が最善だ。これはひとつのイノシトール分子に6つのナイアシン分子が結合したものだ。体内でゆっくり加水分解するので、フラッシュをきたすほどの量のヒスタミン放出を起こすような急激なナイアシン放出は起こらない。ある患者は、ナイアシンを摂取する5分前に250㎎のイノシトールを摂取するとほとんどフラッシュはみられないことに気づいた。この発見を他の患者たちに伝えたところ、同様にイノシトールの効果を感じたようだ。

抗ヒスタミン剤もフラッシュを軽減する。事前に飲んでも、フラッシュ中に飲んでもよい。フラッシュは放出されたヒスタミンによって起こるからだ。しかし、いちばんの抗フラッシュ物質はナイアシンである。なぜなら定期的にナイアシンを摂ればフラッシュは防げるからだ。ナイアシンヒスタミン貯蔵部位を空っぽにし、次のナイアシン服用までにフラッシュを起こすほどヒスタミンが蓄えられないからだ。夜の間にナイアシンが抜けきる朝のみフラッシュが起こるかもしれない。つまりヒスタミンが貯蔵部位に貯まる時間が十分あるからだ。こうしたことが起こるなら、寝る直前に最後のナイアシンを飲むようアドバイスする。ナイアシンは脂肪細胞内のヘパリン貯蔵も減少させる。ヘパリン分子は強いスカベンジャー物質なので、これは好ましいことだ。ヘパリンはあらゆる種類の毒性物質と結合し、体外へ排出する手助けをする。ナイアシンを開始する前に数日間アスピリンを1-2錠飲むことでもフラッシュは軽減できる。

・フラッシュが強すぎたり怖かったりする場合は、ナイアシンを低用量から開始したほうがよい。美容的な理由も含めてフラッシュが起こっては困る場合は-たとえば予期しないときにフラッシュが起こるなど-ナイアシンアミドを使うべきだ。ナイアシンアミドを飲んでフラッシュが起こるのは1%の人のみである。2番目の副作用は嘔気で、ビタミン量が合わないと嘔吐も起こる。ナイアシンアミドナイアシンよりも嘔気が低用量で起こりやすい。ホーキング博士は嘔気で適正量を判断することを示唆している。嘔気がみられるまで漸増し、そこから投与量を1g減らす。つまり、患者が7gで嘔気を生じたら、6gが適正量となる。

ナイアシンナイアシンアミドも非常に低用量で嘔気を生じる場合であっても、ナイアシンナイアシンアミドをそれぞれの適正量で併用して十分摂るのがよい。どちらも1日3gで嘔気を生じるのであれば、ナイアシンナイアシンアミドも2gずつ摂取すれば嘔気を起こさずに済む。向精神薬で嘔気をコントロールすることもできる。あまりに重症であれば、嘔吐や脱水に至る恐れがあるのでナイアシンナイアシンアミドを中止すべきだ。

・われわれがナイアシンの大量療法を始める前、医学はナイアシンに対して長い間偽りの恐れを抱いていた。1950年代、メチル基欠乏によって引き起こされる病気への関心の波が起きた。ラットを用いた動物実験から、メチル基欠乏が脂肪肝を引き起こすと信じられていた。ナイアシンは数少ないメチル基受容物質であり、ナイアシンを大量投与するとメチル基が大量に除去され、肝臓の脂肪変性が引き起こされるのではないかと考えることは論理的である。初期の動物実験では、動物の肝臓における脂肪の割合は3%から11%に増えていた。ナイアシンの肝毒性という考えは、このラットを対象としたたったひとつの実験から起こったものである。しかし数年前、アルチュール博士は同じ動物を用いた追実験を行い、肝臓で脂肪貯蔵の増加はみられず、顕微鏡で調べても肝臓に組織学的・病理学的変化は認められなかったと報告した。アルチュール博士は、最初の研究結果について、研究施設が感染症の動物を用いて実験を行ったため誤解を招くような結果が出たのだと結論付けた。実験動物を病気にせずに飼い続けるのはとても難しいのだ。

ひとりごと

以前記事にした、ナイアシン徐放剤のメカニズムがこの本でも説明されていました。

徐放剤形ではなくても、ナイアシンを飲む5分前にイノシトールを飲んでもフラッシュが予防できるというのは面白い情報だなと思いました。

そして、ナイアシンで肝障害が起こるという恐れの原因になった動物実験についても解説も興味深かったです。まるで、卵の食べ過ぎで高コレステロール血症になるという不安を拡散させることになったウサギの実験のようですね。