ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:治療(3):ビタミンと薬物療法(薬による治療・後半)

火曜日恒例、ひとり読書会。
今日は薬による治療の話、後半です。


読んでいるのは、引き続きこちらの本。

薬による治療(後半)

・つまりメガビタミンは、リムランドが試した他のどの薬よりも優れていた理想的な薬の「Millichap」(誰だろうと思いましたが、Attention Deficit Hyperactivity Disorder Handbook : A Physician's Guide to ADHD (2ND)という本の著者、Millichap, J. Gordonのことかな?)の定義に合致する。ミリチャップ博士は理想的な薬を次のように定義している。「微小脳障害を持つ子どもたちを治療するのに理想的な薬は、多動をコントロールし、注意の持続時間を伸ばし、衝動性や攻撃性を低下させ、視覚・聴覚や読み能力、協調に測定可能な有益な効果があり、一方で不眠や拒食、意識低下やその他の深刻な毒性作用を生じさせない」と。ミリチャップが求めるものはどの一般的な化学的治療でも得られないが、もしも他に利用できるもっとよい治療法がないのであれば薬に対してこれは議論にならないだろう。彼自身の判断基準を満たしはしないが、彼が選択した治療法はリタリン、つまりメチルフェニデートだ。しかし彼はメガビタミン治療の治療効果に気づいていなかった。367人の子どもたちを治療して、84%が改善し、14%は副作用に苦しんだと報告している。我々には、彼の「改善」の定義がわからない。確かにリタリンは多動を減らすが、必要なのがリタリンだけなのだとしたら、私が会ってきたリタリン治療の「失敗例」たちはうまく助けられていない。

リタリンの通常投与量は1日10-30mg。親が朝か昼に与える。子どもたちが学校から戻ってくるまでに、また非常に落ち着きない状態になっている。主な副作用は神経質、拒食、通常の成長への妨害(身長・体重)、腹痛、顔面紅潮。リタリンについて書かれた通常のどんな概説を見ても、治療効果に比べて数多くの潜在的副作用が書かれている。

・RE0.81のリタリンメレリルと比べてずっとよく知られていることに驚いた。このふたつの薬を販売している2社は称賛されるべきで、リタリンを作る会社はとてもうまく宣伝していることを、メレリルを作る会社はこの目的で(ADHD治療薬として)まったく宣伝していなことを賞賛しなくてはならない。これはおそらく、登録のためにFDAが大規模研究を求めるためだ。このように、子どもたちにとって優れているからではなく非常に効果的に宣伝されている~という理由で、ビタミンよりもはるかに劣っている最も有名な薬が現在使われている。私はメレリルのほうがリタリンより優れていると気づいたが、使用することはごく稀である。

・にもかかわらず、注意深くコントロールされた投与量で、薬は子どもたちの学習の困難や行動障害の治療に役割を果たしている。上記のような処方で速やかに反応する子どもたちは稀であり、家族子どもも、その家族内のみんなからの病気に対する絶え間ないプレッシャーからの救済を得る必要がある。私は抗うつ薬であるイミプラミン25-50mgを就寝前に投与するが、大抵は数日で安心が得られる。子どもはよく眠り、リフレッシュして目覚め、夜尿も止まるだろう。最終的に投薬はやめるが、試してみて決める。副作用はほぼない。現代的な抗うつ薬はどれも試してみたことがない。ごく稀にチオリダジンという、効果が最も高くて副作用が最も少ないタイプのフェノチアジン系薬剤(なぜか筆者は書いていませんが、このチオリダジンってメレリルのことですよね…?)でさえ使う。1日10-75mgの範囲で用いる。しかし、もっと有名なリタリンメチルフェニデート)は重篤な副作用があるため、私の元へ紹介されてきた患者さんがすでに服用していない場合は使用を避けている。ここに書いた分子栄養医学的プログラムが効果を発揮するまでは維持する。私の患者のほぼ全員がリタリンを切ることができた。子どもが新たな投与量に毎回慣れてから次の量へ移るようにとゆっくり減量する。多くの患者たちは中枢神経刺激薬にうまく反応せず、子どもたちも関係者も副作用のことをとても心配している。なので、ビタミンによる治療プログラムが効果を発揮するまで家族がいくらか安心をもたらすようなとても急速な反応を得るために使うということでないのなら使用には反対する。リタリンが唯一の治療法だと思っていない場合、リタリンの治療成績はそれほどよくはないのだ。

リタリンの効果に喜んでいる親たちは子どもたちを私のところへ連れてこないので、リタリンがどんな効果を及ぼしてきたのかはひとりひとりを観察しても判断できない。私のところへ来る子どもたちは、リタリンによく反応しなかったか、深刻な副作用がみられたか、症状は覆い隠すものの問題の根源には達しないような賦活剤を使うという考えに親が耐えられないかのいずれかである。ニュースウィーク誌(1996年3月18日号)によると、アメリカでは1000万人以上の子どもたちがリタリンを飲んでいて、1990年から250%増加しているとのことだ。専門家の意見は、コロンビア大学医学部のローレンス・グリーンヒル博士の「精神医学の素晴らしい成功」という見方から処方され過ぎだし危険だという見方まで幅広い。アメリカのMIMHの児童思春期研究部門の部長ピーター・S・ジェミングスは「私はADHDが“月の病気”症候群に苦しんでいることを恐れている。リタリン使用は週によって著しく異なる。つまり、1994年に南東のジョージア州とグレート湖近くのミシガン州では100人あたり2gのリタリンを消費していたのに対し、カリフォルニア州では0.58g、ハワイ州ではたった0.25gしか消費していなかった。このことはリタリンがコカインやメサゾン、メタンフェタミンのようなスケジュール2管理物質(アメリカの規制物質法ではスケジュール1-5に薬物が分類されていて、スケジュール2とは濫用の恐れがあって処方箋がないと利用できない物質のこと)で、その処方量は多動の発症率よりも医師の処方習慣によって決まるということを示唆している」とコメントしている。

※規制物質法についてはこちら

・私はリタリンよりもイミプラミンのほうが効果が高く副作用が少ないと気づいた。夜1回飲めば終日効果がある。リタリンは1日に数回飲まなくてはならず、数時間で効果が減弱する。学校で過ごす時間をリタリンでコントロールされている子どもたちの多くはリタリンの鎮静用作用が殆どなくなった状態で帰宅し、多動行動を親の前で全開にする。親たちが自分のこどもを私の元へ連れてきて栄養療法・メガビタミン・その他分子栄養学的治療を受けさせようとする理由のひとつがこれなのだ。

ひとりごと

この本が出されたとき、またコンサータメチルフェニデート徐放剤)は発売されていなかったのだと思います。
確かにADHD治療にリタリン(通常のメチルフェニデート剤)を用いていた頃は、「帰宅したら前より余計落ち着きがない」と親御さんに言われることがとても多かった記憶があります。今は逆に、コンサータの効果が残りすぎて夜いつまでも寝ないという話もよく聞きます。どちらにしても、栄養でコントロール可能ならそのほうがいいですよね。
でも、即効性があるのは処方薬。そしてリタリンコンサータの代わりにイミプラミン(商品名トフラニール)を使う選択を考慮して、栄養療法の効果が出るまで処方薬を併用することをこれからどんどん試していきたいと思います。