中枢神経刺激薬の長期使用について、もっと知りたい!
処方の機会はそこそこ多いけれど…
ふと気になって、調べてみたくなったこと。
それは、注意欠如多動症(ADHD)の治療薬として使われる中枢神経刺激薬を長期使用した場合の予後が最近の研究ではどう評価されているのか? という疑問。
ずいぶん前ですが、ブロムベリ先生の書籍を読んでいて、
「中枢神経刺激薬の投与を開始して3年経つと、何も治療しなかった場合と比べて優れている点はなかったとする多面的研究がある」
と書かれていたのを読んだことがあって。
ちなみに、そのブロムベリ先生の本というのはこちら。
確かに、中枢神経刺激薬を使うと集中しやすくなったり衝動性がおさまったり、行動面ではすぐに変化が現れるという実感があります。
だから、お薬の力を借りたほうがうまくいくぞ!と感じるケースではこれまでも処方してきましたし、これからも処方することはあるだろうと思っています。
でも。
そもそも私が長くお薬を処方するのが好きじゃない(お薬なしでがんばれるに越したことはない、という単純な発想・笑)ので、中枢神経刺激薬を長く処方し続けることはあまりないのですが、それでも止めどきを悩むケースがときどきあって。
たとえば、「今のクラスでは落ち着かなさそうだから続けたほうがいいな、高校受験が終わるまでやめないほうがいいかもな、高校生活が安定するまで続けたほうがよさそうだな、…」など。
そんなとき、ブロムベリ先生の書籍の内容が頭をよぎるのです。
中枢神経刺激薬の長期連用について、最新の研究ではどう評価されているんだろう?
今日読んだ論文では…
今日はこちらの新しい総説をザザッと眺めてみました。
“Neurological and psychiatric adverse effects of long-term methylphenidate treatment in ADHD: A map of the current evidence”
(Neuroscience & Biobehavioral Reviews, Volume 107, Dec 2019, pp.945-968)
全体的に、中枢神経刺激薬に対してはポジティブな評価。
- 処方することで抑うつや自殺を減らすという報告がある
- 精神病やチックのリスクが高まるという報告もあるが、断薬すれば回復する
- 未就学児やチック症状のある人、物質依存のリスクがある青年には気をつけて使うべし
この論文からは「長期連用は避けるべし」というメッセージは伝わってきませんね…。
結局、薬は使い方次第、なのかな…
この論文を読んでみて思ったのは、長期使用VS短期使用、長期使用VS未使用という比較研究はあまり行われていないようだということ。
そして、精神症状については検討されていても、身体的発育や社会的な予後に関しても深く研究はされていないのかもしれないということ。
中枢神経刺激薬の切れ味のよさは私自身も感じているところなので、これからもここぞ!というときにはきっと使用すると思います。
でも、惰性で長期使用することは避けられるなら避けたいし、もっと安全で効果的な方法があるならその可能性も大事にしたいな、とも思っています。
まだまだ情報収集していきたいです。