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こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:確証のための情報(1):分子栄養小児科学的研究・中編

火曜日恒例、ひとり読書会。
前回の続きで、今日は分子栄養小児科学的研究・中編です。

読んでいるのは、こちらの本。

確証のための情報(1)分子栄養小児科学的研究・中編

・彼が特に興味をそそられたのは、メガビタミンアプローチに激しく反対していた精神科医の大半が精神療法や精神分析を行っていたという事実だ。会話による治療形態(古典的な分析では精神科医は話さないが)は、子どもにも大人にも全く効果がないことが示されている。リムランドはその後、アメリカ・カナダ全土から約200人の精神病の子どもたちが参加する研究をデザインした。彼はビタミンB3(ナイアシンアミド)、ピリドキシンパントテン酸、ビタミンCを使用した。1カ月の無治療期間の後これらのビタミンを3カ月間投与された、その間に子どもたちを再評価した。ビタミン投与前にコンピューターを用いて子どもたちを病歴や症状の類似性に基づいてグループ分けした。何人かの子は顕著に改善したが、それはの分布は無作為ではなかった。これまで最も効果があったのはメレリルで、277人中36%の子どもたちが改善し、20%の子どもたちが悪化した。これは、ビタミン治療プログラムでは66.5%が改善して3.7%が悪化したことと対比される。自閉症児のグループは、主にピリドキシンに最高の応答を示した。

・リムランドは、結論として「それは静かに私たちのデータの統計分析と子どもたちの観察による臨床反応の両方から、実際高用量ビタミン治療による恩恵を期待することができる精神病の子どもたちがかなりの割合でいることが明らかになったと考えられる。他のビタミンやミネラルももっと多くのこうした子どもたちに効果がある可能性があるし、優先的に調査すべきだと思われる」と語った。1975年の全国自閉症児協会の年次総会の報告書は「研究はここからどこに導かれるのか?」と題されている。リムランドは「それは分子栄養精神医学の方向へ非常に強くリードし続けている」と答えた。ビタミンは、絶対的な意味での利益であると判明しただけでなく、これまで使われていた薬よりも、ずっと多くの子どもたちに利益であった。さらに薬とは対照的に、ビタミンはほとんど副作用を起こさないとわかった。

・ニューヨークの精神分析医であるアラン・コット博士は、分子栄養医学で子どもたちを治療した最初の精神科医のひとり。精神医学を長年実践してきた彼は、自分の診療にうんざりしており、もう諦めて他の活動に転向する準備ができていた。私たちは、彼のニュージャージー州の親友ジャック・ウォード博士を通じて何年も前に出会った。統合失調症へのビタミン剤使用を知って彼は非常に興味を持ち、数年のうちに分子用医学を大規模に実践して成功を収めた。彼はこれまで見たことのないような回復を見て彼は新しい治療法にとても興奮した。精神科を辞める考えを捨てた。彼は分子栄養医学分野の大物になり、教師、講師、著者として活躍し、ニューヨーク地域やその他の地域の多くの子どもたちを治療した。彼の仕事を称え、アラバマ州バーミンガムの病気の子どもたちのための学校はアラン・コット・スクールと名付けられた。1973年までに彼は500人の子どもたちを治療した。

・幅広い経験に基づき、彼は分子栄養学的治療法を持続した子どもたちの大半は、多くの機能面で有意な改善を達成するという結論にたどり着いた。「最も重要なのは、多動が減少し集中力と注意力のスパンが改善し、学習のキャパシティがよくなったことだ。今まで全く学習できなかった子どもたちに、学習意欲が明らかに見られるようになった。ビタミン治療の結果は速やかに現れドラマチックなことはしばしばあるが、多くの例で有意な変化がみられるのは6カ月後だ。子どもたちは両親や教師に協力する意欲を示し、指示を理解して従い始める。視線の嫌悪も止まる。子どもの精神病の基本症状のひとつである多動性は徐々に治まっていく」と結論付けた。

・コットがこれほど優れた精神科医だったのは、分析者として忍耐を学んだからだ。分析者は迅速な反応を期待しない。彼らのトレーニングでは、必要に応じて何年にもわたってわずかな変化を辛抱強く観察することが求められる。ビタミン剤にはリタリンのような即効性のある治療効果はない。現代の精神科医の多くは、薬物への迅速な反応に慣れているため、ゆっくりとした治療には我慢できない。彼らは長期的メリットがないにもかかわらず、短期的メリットを受け入れようとする。ビタミン療法は短期的メリットを約束するものではない。親、患者、治療者が忍耐強く治療に耐えれば、回復を約束する。

・分子栄養精神医学雑誌の特別号では、コット博士は彼の広範な研究と治療の経験を要約した。「子どもの学習能力は、特定のビタミンまたはミネラルのサプリメント大量投与と、彼の毎日の食事からジャンクフードを除去して全般的な栄養状態の改善によってよくしていくことができるというエビデンスが急速に蓄積されてきている。.... 分子栄養学的治療では、結果は速やかに現れることが多く、多動性の減少はしばしば劇的だが、ほとんどの場合、重要な変化が見られる前に数カ月の経過を要する。子どもは彼の両親や教師に協力する意欲を示す。このような変化は、中枢神経刺激薬や精神安定剤を使用しても改善しなかった子どもたちの大半に現れる。私が診てきた子どもの大多数は、あらゆる治療法や既知のすべての精神安定剤や鎮静剤にさらされ、多動性のコントロールすらほとんど全く成功していなかった。子どもたちの集中力と注意力のスパンが増加し、より長い期間生産的に活動することができるようになる。また、先生やクラスメートにイライラすることもなくなる。早期の介入は、子どものためだけでなく、家族全体のために最も重要だ。彼は、家庭のすべてのメンバーを巻き込んで、彼と家族そして家族同士の関係をどちらも崩壊させる感情的な嵐の発生源である...。子どもの食事のコントロールは、治療全体に不可欠な部分であり、子どもの栄養状態改善に失敗すると、最小の結果しか得られないことになる。最適なパフォーマンスを達成のを助けるために彼を助けるためには、子どもの細胞や組織が機能する内部環境の質に対して最大の関与を示されなければならない。障害のある子どもの食事から有害な食品を除去することで、行動・注意力持続・集中力の劇的な改善をもたらすことができる。障害があり、学習障害を呈する多くの子どもたちが低血糖症、高インスリン症またはインシュリン分泌障害のいずれかを持っていることがわかっているので、サトウキビ糖と急速に吸収される炭水化物食品は彼らの食事から除去されるべきだ。子どもたちが砂糖の豊富な食事、キャンディー、お菓子、砂糖で作られた食品を食べているということは子どもの栄養状態を評価している研究者たちの普遍的な観察であり、これらの食品の除去は、多動性の劇的な減少をもたらす。これらのジャンクフードの継続的な消費についての恐ろしい事実は、これらの食品が子どもたちにとってよいものだとする親の信念だ。

・「栄養の改善、ビタミンとミネラルの補給、充実した教育機会や視覚・知覚に関連した運動訓練だけでは、学習障害のある子どもを完全に支援することはできない。それぞれの子どもの潜在能力を発展させるために、これらすべてを協調させたプログラムの中で使用しなければならない。現時点では、栄養不良が知的発達にどのような影響を及ぼすのかという問いに対して、研究結果が明確で完全な答えを示すことができないが、それは母親や乳児の栄養状態や食事習慣を改善するためのプログラムを遅らせる正当な理由にはならない。よい栄養が、健康状態の改善、身体的成長、学習の改善に対して及ぼすの恩恵を実証する情報は、すでにこうした努力を正当化している。まだ開発されていない技術により、要因が何の疑いもなく確立されるまで待つ余裕は私たちにはない。私たちは、今必死に助けを求めている500万人以上の子どもたちを可能な限り効果的で正当なやりかたで管理するのを先延ばしにすることはできない。」

・コットは続けて、「私が治療してきた子どもたちを観察してきた親や教師やその他の人たちの臨床報告からは、分子栄養学的治療の恩恵を期待することができる、障害のある子どもや学習障害をもつ子どもたちが実際多数いることは明らかだと思われる...我々は2000万人の子供たちを相手にしているのだから、対照研究によるこの治療法の研究は最優先されるべきだ。」と記した。これは非常に優れた臨床家・研究者からの控えめな提案であり、彼がこう書いたとき、私は彼に同意した。しかし、20年たった今、私は彼の提案に同意していない。二重盲検試験は必要ない。多くの臨床家がこの治療法を使用してその有効性を確信し、懐疑的な同僚を納得させていく必要があるのだ。私たちが実証研究を必要としているのは、データが不十分で決定的ではないからではなく、単にこうした動きに抵抗する懐疑論者たちを満足させるためなのだ。

ひとりごと

いよいよ食事や栄養のコントロールが発達の偏りや発達障害特性を持つ子どもたちに広く有効だという道筋が見えてきて、ワクワクが止まりません。
アラン・コット博士が精神分析医から分子栄養精神医学に傾倒していく流れが個人的にはとても興味深かったです。精神分析医ならではの忍耐強さが、栄養が効果を発揮するまで辛抱強く待つことに役立っている…って本当に?!