ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

強度の高い運動は深い睡眠を増やしてくれるのか調べてみた

激しい運動と睡眠の関係が気になる!

昨日記事にした「激しい運動をしたときだけ、深い睡眠が増えるんじゃないの?」という私の仮説。

これ、誰かもう調べた人がいるんじゃないのかな? とGoogle Scholar先生にお尋ねしてみたら、それらしい論文がいくつか見つかりました。
少しご紹介しようと思います。

見つけた文献(1)

まずはコレ。

Increased slow wave sleep and reduced stage 2 sleep in children depending on exercise intensity(Sleep Medicine, 9(3),pp.266-272, 2008)
(小児では運動強度によって徐波睡眠が増え、ステージ2睡眠が減る)

抄録のみ無料公開なので、サラッと。
11人の健康な子ども(12歳前後)に、就寝前3-4時間前に30分間の自転車エルゴメーターでの運動をしてもらい、睡眠ポリグラフ(一晩中脳波計測する装置)をつけて記録してもらう実験。
それぞれの子どもは1週間間隔で

  1. 高強度の自転車漕ぎ(最大心拍数の85-90%)
  2. 低強度の自転車こぎ(最大心拍数の65-70%)
  3. 運動しない

の3パターンをランダムな順で行って記録を取ったところ、高強度の運動のみで徐波睡眠(睡眠ステージ3・4…深い睡眠)が有意に増え、ステージ2が減ったそうです。睡眠効率が高くなり、睡眠潜時も短縮(=寝つきがよくなった)。REM睡眠への影響は特にみられなかったそうです。

…子どもが対象ですが、やっぱり運動強度と深い眠りには関連があるよう。
考察が読めないので、筆者たちがこのメカニズムをどう考えているのかは残念ながら不明なまま。

見つけた文献(2)

今日はもうひとつ。

Daily Morning Running for 3 Weeks Improved Sleep and Psychological Functioning in Healthy Adolescents Compared With Controls(Journal of Adolescent Health,51(6),pp.615-622, 2012)
(健康な思春期青年は3週間にわたり毎朝ジョギングすると対照群と比較して睡眠と心理学的機能が改善する)

こちらも抄録のみなので、あまり詳しくないのですが…。

およそ18歳の男性24人・女性27人が対象。その半分は対照群、半分はジョギング群に無作為割り付けされました。ジョギング群は3週間、毎朝30分間中等度のジョギングを行います。脳波と心理学的アセスメントは3週間の介入期間の前後で実施され、被験者は毎日睡眠記録もつけていました。
結果、ジョギング群は脳波上では徐波睡眠が増え、睡眠潜時が短縮。主観的には睡眠の質が向上し、気分や日中の集中力も改善したとのこと。日中の眠気は減少していたそうです。

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「中等度」の説明は抄録中にはなかったのですが、ジョギング30分ですからおおよそ想像できますね。
朝ジョギングしても、日中の眠気は減り、夜の睡眠の質はよくなったというのが興味深い…運動するタイミングは睡眠の質とあまり関係ないのかもしれません。
運動の結果生じた変化は前の論文とよく似ているので、やはりそれなりの強度の運動は寝つきをよくして深い睡眠を増やす傾向があると言えそう。

どちらの論文も、自分の経験と結びつけて考えても納得の行く話でしたが、メカニズムに踏み込めなかったのがちょっと残念。
引き続き、情報にあたっていきたいと思います。