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こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:確証のための情報(1):分子栄養小児科学的研究・後編

連休ボケしてて「げげっ、今日は火曜日!」と気付いたのが夕方のこと。
恒例のひとり読書会の日です。

大慌てで読み始め、内容に惹き込まれたし、幸い文章も難解な箇所じゃなかったので、なんとか予定の段落まで読み終えましたー♪
前回の続きで、今日は分子栄養小児科学的研究・後編です。

読んでいるのは、こちらの本。

確証のための情報(1)分子栄養小児科学的研究・後編

・何年も前、サスカチュワン大学農学部が新しい品種の小麦を導入しようとしたとき、農家からの懐疑的な反応を向けられた。サスカチュワン大学はその後、多くの地域の農家にアプローチし、いくつかの農場で試験的に穀物を植えてもらうように依頼した。作物が成長するにつれ、車で通りかかった農民たちは、自分たちが植えたものと新しい品種の違いを自分たちの目で確かめることが可能になった。こうして新しい品種はすぐに人気が出て、導入されるようになった。医学にもこのようなものが必要だ。ビタミンによる治療法を使うことを恐れない進取の気鋭の気性のある医師が必要だ。そうすれば40年も待たなくても、数年でこの治療法が導入できる。私は二分脊椎を防ぐために葉酸の導入を遅らせたことの莫大なコストに言及している。社会へのコストは莫大だ。何千人もの命が、単に専門家の懐疑論のために台無しにされていくだろう。

・分子栄養学的治療のパイオニアであるエリザベス・リース博士は、アレルギー専門の小児科医だった。彼女はこれにメガビタミンアプローチを加えた。彼女は研究の結果、「多動性や統合失調症の子どもの多くは、日常診療で診断・治療が可能である。診察で最も重要なのは、家族歴、出生時の発育状況、授乳状況、現在の問題点などを含めた詳細な病歴だ。メガビタミンは非常に重要だが、親が子どもの問題をサプリの錠剤だけに頼って解決しないよう、子どもの普段の栄養とアレルギーを治療した後にサプリメントを処方した方がよい場合もある。子どもは、問題に対する特定の治療法に加えて、教育、習慣や性格のトレーニング、心理的なケアだけでなく、身体的な欠陥の修正にも取り組む必要がある」と結論付けた。

・ニューヨーク児童発達研究所では、クリプナー博士とフィッシャー博士が学生を4つのグループに分けた。グループ1(男子28人、女子8人の女)は、ただ神経学的構成のみを受けた(Neruological Organization: NO群)。グループ2(男子6人と女子8人)は無作為に割り当てられ、やはり神経学的構成のみを受けた。第3群(男子10人、女子4人)はグループ2と同様だが、同時にメガビタミン療法も受けた。第4群(男子18人、女子6人)は、初診・診断の4ヵ月後からメガビタミン療法を受けた。すべての子どもたちはDoman-Delacato発達プロファイルを用いて評価された。第1群と第2群では神経学的評価に有意な改善はみられなかったが、第3群と第4群では6ヵ月後に有意な改善がみられた。全サンプルについて分散の要因分析を行った。93人の生徒のうち、6つの評価項目(移動能力、言語能力、手技能力、視覚能力、聴覚能力、触覚能力)のそれぞれの改善は有意が高く、これらの改善が偶然によるものである確率は1000分の1以下であった。

・その他一連の研究は 分子栄養学的介入の有効性を裏付ける。ポール・カトラー博士は、学習障害のある62人の子どものうち40%がクリプトピロール陽性で、さらに20%が微量ミネラルの不均衡に悩まされていることを発見した。彼らはピリドキシン亜鉛およびマンガン溶液による治療に非常によく反応した。フォン・ヒルシェイマー氏と同僚らは、メガビタミン治療プログラムが重度の行動障害・アルコール依存症・依存症および統合失調症の子どもたちに対してプラセボより有用であったと結論づけた。彼らはプラセボの効果を除外して判断した。ブレナー博士は、多動は多因子性であり、かなり多くの子どもたちがビタミン欠乏やビタミン依存症によって引き起こされていると結論づけた。彼は100人の子どもたちを治療した。彼らはまずチアミン400mg 1日4回を予備的に投与され、それからプラセボパントテン酸カルシウム218mg、最後にピリドキシン1日3回100mgの順でそれぞれ3-4日間与えられた。38人は反応せず、26人はチアミンで改善したが22人は悪化し、23人はパントテン酸で改善し9人は悪化し、18人はピリドキシンで改善し16人は悪化した。残りの子どもたちは、この短期間でどの治療法にも反応しなかった。

・改善を示した子どもたちは、その後7日間のビタミン投与と7日間のプラセボ投与の2回目の試験を開始した。チアミンを投与された21人のうち、11人は劇的な反応を示した。そのうち4人はチアミンを数ヶ月間しか必要としなかった。4人はその後3年以上必要とした。パントテン酸を投与された15人のうち、リタリンよりもよい反応を示したのは2人だけだった。ピリドキシンで治療された18人のうち、9人が反応を示し、その後長期の治療を要した。6人は亜鉛が追加されるまで難治だった。5人は1日500~2000mgを要した。これらのビタミンB群を様々に加えたり引いたりすることで、それぞれの子どもに最適なビタミンの単体または組み合わせを決定することができた。

・一般開業医はまた、彼らの実践の中で実用的で貴重な分子栄養学的治療アプローチを発見した。たとえば過去30年以上にわたって多くの大人と子どもを治療してきたアルバータ州カルガリーのマックス・フォーゲル博士や、サスカチュワン州プリンス・アルバートのグレン・グリーン博士などだ。これまで見たように、グリーン博士は、行動障害を説明するために1938年に初めて使用された不顕性ペラグラという用語を提案した。この用語はビタミンB3に反応する子どもと大人の症候群を正確に説明している。彼の初期の報告のひとつの中でグリーン博士は「1968年11月以来、7ヶ月間で私は100例以上の不顕性ペラグラを診断した。65%が16歳未満であった」と述べている。すべての症例は数日から数週間以内にビタミンB3、つまりナイアシンナイアシンアミドに反応した。この病気の主な診断基準は、知覚変化の有無である。すべての感覚は、多かれ少なかれこれらの知覚障害に関与している。その他の症状としては、疲労抑うつ、食欲不振、頭痛、めまい、様々な痛みなどがある。仕事への意欲低下はよくみられる。これらの患者の中には1種類または複数種の慢性皮膚炎を持っている者も少数いたが、露出部位を含む対称的な皮膚の発疹はみられなかった。口内炎、食道炎、下痢などはなかった。貧困とペラグラは従者であり、無知はその仲間だ。この例外は、適切に食べることのないティーンエイジャーだ。」

ヴォーゲル博士とグリーン博士の経験を総合すると、すべての一般開業医が見始めて近くテストを使い始めれば不顕性ペラグラの多くの症例を見つけることができるという結論に達した。私は、最も治療困難な患者の中には、不顕性ペラグラを持っていて、必要なビタミンB3が満たされるまで薬に反応しないことに気づいてもらえることを期待している―――そして、彼らはもう薬をを必要としないかもしれない。グリーン博士とフォーゲル博士は、研究助成金、制度的支援、製薬会社からの助成金がなく、すべてのケースを分析するのに十分な時間もなかったが、彼らの臨床経験は偉大であり、私が思うに私が何年も前から見てきて今も見続けているものを確認してくれる健全なものだった。

・分子栄養医学的治療に関する文献は、今や非常に広範になっている。予防としてのビタミンパラダイムが唯一のものであったとき、ほとんどの医師や親は、この新しい方法に興味を持っていなかった。新しい治療としてのビタミンパラダイムは、現在非常に迅速に医学に浸透していっているが、精神医学にそれほど急速には浸透しておらず、これらの裏付け評価研究は、医療従事者、両親、学習障害や行動障害を持つ子どもたちのために新たな妥当性を呈している。

ひとりごと

ビタミンへの信頼は今ひとつなわりに胎児の二分脊椎予防のために妊婦さんが葉酸を摂るのは定番化してるよなぁ…とずっと思っていましたが、これもやはり定着するまで時間が掛かったのですね。
「何千人もの命が、単に専門家の懐疑論のために台無しにされていくだろう」ということばに胸が痛みます。身体医学のほうがビタミン治療パラダイムが先行して受け入れられつつあるようなので、精神科領域にもぜひこの波を行き渡らせたい!! と思いました。