ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

運動の強度と睡眠の深さについて再び調べてみた

しぶとく、運動と睡眠の話

3日前、一昨日と、運動と睡眠の関連について記事にしましたが、もう少しこの問題を掘り下げたい!


というわけで、早速今日の論文へ行きましょう♪

運動が強くなれば、徐波睡眠が増える!

では、本日の1本目。

Sleep patterns afted graded exercise(Journal of applied physiology 39(2), pp.187-190,1975)
https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/jappl.1975.39.2.187

このタイトルのafted、afterの誤植なのかなぁ…。
そう考えると「段階的な運動後の睡眠パターン」というタイトルになりますね。かなり古い論文、今回も抄録のみです。

健康な若年男性2人に、6段階の測定された運動が睡眠パターンに及ぼす影響を調査したそう。ええと、「計測された」とは回数なのか時間なのか…。
終夜睡眠脳波を記録したところ、運動による身体的疲労が増えれば増えるほど徐波睡眠(第3・4段階の睡眠)が増加していました。急速眼球運動(REM)睡眠は減少し、また運動レベルが高くなると第2段階の睡眠も低下しました。筆者らはこの結果を、徐波睡眠は疲労からの回復過程に関与しているからではないかと結論づけています。

激しい運動をすると深い睡眠が増えるのは疲労回復のため、という仮説、なるほどと思います。そのとき脳内では何が起きているんだろう?

まだまだわからないことがいっぱい!

本日のもう1本はこちら。
Exercise and sleep(Sleep medicine reviews 4(4), pp.387-402,200)
「運動と睡眠」、そのまんまのタイトルですね…。
https://www.sportsmed.theclinics.com/article/S0278-5919(04)00139-5/abstract

こちらも抄録のみですが、運動と睡眠の関連性に関する文献をレビューした論文です。ひとつひとつの研究結果は抄録には紹介されていませんが、全体のまとめは以下のような感じ。

運動が睡眠に有益であるという期待は、睡眠がエネルギー保存、身体の回復、体温調節機能に役立つという従来の仮説にも起因していて、この仮説が多くの研究を導いてきました。
研究されている運動プロトコル(例:有酸素性か無酸素性か、強度、持続時間)の違いや、個人の特性(例:健康状態、年齢、性別)間の相互作用の違いがあるため、運動の睡眠促進効果を支持する現在の実験的証拠はぼやけてしてしまっています。
さらに、もともとよく眠れる人を対象とした少人数研究が多く、運動による睡眠促進効果が過小評価されてしまう可能性もあります。
中程度の効果しか認められていませんが、メタ解析の結果からは、運動は総睡眠時間とレム睡眠の開始時間を遅らせ(10分)、徐波睡眠を増加させ、レム睡眠を減少させる(2-5分)ことがわかります。健常者でも患者でも、運動による睡眠促進効果はまだ実証的に確立されていないのです。

うーん、「まだ実証されていない」というのが2000年時点でのまとめなのですね。
全体的には、運動することで深い眠り=徐波睡眠が増えるというのはわりと共通して観察されていることのようですね。

どういう仕組みで深い睡眠が増えるのか…ますます気になってきました。

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