ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:確証のための情報(2)臨床試験:初めての臨床試験

ひとり読書会、今回は臨床試験の話。
実際にビタミンを投与された子どもたちがどのくらいの確率でどんな風に変化したのか、楽しみです!

読んでいるのは、こちらの本です。

確証のための情報(2)臨床試験:初めての臨床試験

・1967年、私はサスカチュワン大学の精神医学准教授とサスカチュワン州の精神医学研究部長としての仕事を辞めた。それまでに私はかなりの数の子どもたちをビタミンB3とビタミンCで治療していた。臨床的エビデンスから、この治療が子どもたちに有用であることが示されていたが、どのようなタイプの問題に最も効果があるかを判断するのに十分なデータがなかった。
・1954年、私は知的障害者のための学校から来た精神発達遅滞と考えられる少数の子どもたちの治療を行った。それは、体重50ポンドあたり1gのナイアシンまたはプラセボ1gを3カ月間投与する二重盲検実験であった。私は、大人がこの用量を必要とするのだから子どもたちも同量必要だろうと仮定していた。後に子どもたちは大人よりも多量に必要だとわかり、私は2倍量使うようになった。ナイアシンによるフラッシュには対処しなかったので、対照プラセボ実験ではあったものの二重盲検ではなかった。フラッシュがあるため、どんな実験であれナイアシンを二重盲検にすることは不可能だ。しかし、我々がサスカチュワンで行った研究を攻撃するために使われたレーマン教授とバン博士のモントリオール研究やウィッターボーンボーン博士のニュージャージー研究とも同じように盲検であった。子どもたちは大人みたいにプラセボには反応しないからこれは大きな欠陥にはならない。彼らのほとんどは錠剤が好きではなかったし、何も飲まなないほうがずっと幸せだっただろう。

・3カ月間の臨床試験終了時、両親は自分たちが見たことを報告するように求められた。プラセボを投与された11人の子どものうち3人が、ナイアシンを投与された8人のうち7人が改善したことがわかった。この差はp<0.01で統計的に有意である。私がこの研究を報告しなかったのは、この研究が二重盲検ではなく、精神医学研究の中で純粋な研究者には無視されると思ったからである。この研究には、精神遅滞統合失調症ダウン症、器質的な症例など、さまざまな異なる状況のケースが含まれていた。

・その後、私は地元の養護学校の協力を得て、24人の精神遅滞の子どもたちを対象とした別の対照研究をやり遂げた。彼らは全員モーヴ因子(クリプトピロール=KP)の検査を受け、体重50ポンドあたりナイアシンアミド1gを投与された。このビタミンは親が子どもをプログラムに参加させたいと思う期間中ずっと無料で提供された。私は、改善してきている精神遅滞の子どもたちの親は治療を続けたいと思うだろうし、改善がみられない親は続けたくないだろうと考えていた。治療の1年後に子どもたちの状態を評価した。KP陰性だった16人の子どもたちのうち、1年後にビタミン摂取を継続していたのは5人だけだった。KP陽性の子ども8人全員がビタミンを継続していた。両親は前向きで、自分たちの子どもがよくなったと思っていた――つまり、より速く、より静かになり、攻撃的でなくなり、より楽に学習できるようになった、と。このような違いは500回に一度の確率でしか発生しないことである。それはKP陽性の子どもがナイアシンアミドによる治療にずっと敏感であったことを示唆していた。

・私の最後の実験は、1967年にナイアシンアミドプラセボを用いた二重盲検前向き対照試験であった。私に紹介された13歳以下の重度障害を持つ子どもたちは、両親の同意があれば全員この研究に参加してもらった。研究期間中の3年間、全員に無料のビタミン錠剤が投与された。診断的には、学習障害と行動障害に当てはまる子どもたちであった。私は、どのような状態の子どもたちがビタミンB3に最もよく反応するのかを調べたかった。私は、ビタミンB3への反応性について均質な子どもたちのグループを見つけたいと考えていた。これを用いて、ビタミンB3に反応する子どもたちの典型例を説明することにした。

・彼らは全員、砂糖を使わない食事を始め、ナイアシンアミドアスコルビン酸を1日各1.5-3g摂取した。彼らには薬物はほとんど使用されたことがなく、心理療法も一切行われていなかった。私は研究の条件として、彼らが回復した後にはナイアシンアミドと置換してプラセボを投与することを両親に伝えた。プラセボは、子どもが順調である限り継続することにした。しかし再発していると確信したら、再発の時期と理由を記録しながら、ナイアシンアミドに戻すことができた。子どもたちは3ヵ月ごとに評価された。この臨床試験の結果を表に示す。
[4-13歳の37人のイニシャル・年齢・性別・診断・ビタミン反応性・プラセボ変更後の反応・状態の表あり]

・この臨床試験を開始した37人の子どものうち、21人が正常化し、14人が改善~かなり改善となった。2人は反応がなかった。このうちひとり(イニシャルAB)はダウン症で、もうひとり(イニシャルEJ)は重度知的障害を伴う自閉症児で、私が8歳の時に初めて会ったときには言語が発達していなかった。

・19人の患者だけがプラセボを投与された。正常化する前に研究から離脱してしまったり、初期の回復が非常に遅く困難であったために親がプラセボへ替えるのは子どもに悪い影響があると考えたケースも稀にあったりしたので、全員がプラセボへ変更したわけではなかった。私は以前、ビタミンをやめた子どもたちが元の正常な状態まで回復するのに戻すのに多くの集中的な介入を要したのを見ていたので、親の意見に同意した。プラセボに置換した子どもたち全員が4週間以内に再発し、そのほとんどが2週間以内であった。ある子どもは回復後に学校で年齢同等の学年への昇級が決まった。学校はこの研究のことに気づいていなかった。この子どもはその後ナイアシンアミドからプラセボへ置換された。その2週間後、教師は子どもを昇級させたことは間違いだったと両親に伝え、彼はまた元の学年へ下りることになった。ビタミン治療に戻ってまもなくこの子どもは回復し、以後よい状態を保っている。アスコルビン酸では再発を防ぐことはできなかった。

・1974年の最終対面時には、37人中19人が正常化していて、6人がかなり改善していた。9人は結果が不明で、未改善は3人だった。したがって、37人中25人、つまり68%が大幅改善~正常であった。改善しなかった3人の中にはダウン症のイニシャルABの子がいた。これらの子たちが反応するまでにはさらに精巧で洗練されたアプローチが必要である。イニシャルDG、REG、DaGの3人(註:おそらく兄弟)は全員改善していたが、慢性統合失調症の母親は協力できず、父親はアルコール依存症を併発した統合失調症患者で自殺した。イニシャルJBは改善していたが、後に協力を拒否して家を出た。イニシャルWWはかなり改善していたが、最終的には薬を飲むことを拒否し、最終評価時には慢性統合失調症社会福祉病棟にいた。イニシャルBFは改善していたが、ビタミン剤の服用をやめて研究の対象から外れた。イニシャルRLは改善していたが、予約を守ることができないため研究から外された。イニシャルEJは反応がなく、8歳までに発語がなかった。イニシャルWTは改善していたが、最終的にはビタミン剤の継続を拒否した。イニシャルMDはビタミン剤の服用を拒否した。イニシャルHWは錠剤を飲み込めなかった。

・治療失敗の主な原因は、処方されたビタミン剤を飲み込めなかったことだ。彼らが錠剤を飲み込みたがらず、あるいは飲み込めず、親がこの問題にどう対処したらよいかわからなかったのだ。こうした子どもたちは、ビタミンを摂取させることができれば助けられただろう。たとえばイニシャルBSは毎日6gのナイアシンアミドを服用することができなかった。彼女はその後数人の精神科医の診察を受けたが、全員が治療不可能と判断した。絶望の中で彼女は再び私の元へ戻ってきて、ナイアシン12gで1年後にはるかによい状態になり、その後も着実に改善した。

ひとりごと

私も「どんな子どもたちにビタミン治療が有効なんだろう」ってとても興味があったので、今回の37人の研究はワクワクしながらあっという間に読み終えました。
8歳までに発語がない自閉症児とダウン症の子どもを除けば、ナイアシンアミドとビタミンCだけで改善がみられるというのは大きな希望! そしてビタミンCだけでは再発が防げなかったことから考えて、ナイアシンアミドのほうが重要性が高いのですね。藤川徳美先生がFacebookで言っておられたこととリンクしてとても納得。
37人の研究では1.5-3g服用していましたが、養護学校の24人を対象とした研究では体重50ポンドあたり1g。50ポンドは約22.7㎏だそうなので、およそ45㎏の子で2g…だいたい同じくらいの量になりそうですね。