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子どもの注意や行動の障害を治す:確証のための情報(2) 臨床試験:「100人」研究(中編)

ひとり読書会、今回は「100人」研究の続き。
ビタミン治療に反応しなかった子どもたちの特徴、発症年齢と治療効果の関連性などなど、実際治療するとき知っておきたい情報がたくさん学べそう♪

読んでいるのは、こちらの本です。

確証のための情報(2)臨床試験:「100人」研究

【反応がなかった子どもたち】
・反応は明らかに治療期間に関係している。これは下の表に示すとおり。


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・治療が続くにつれて回復する子どもが増えた。かなり改善・改善と評価された子どもの割合は、1973年8月の61%から、最後に評価されたときには74%にまで増加した。子どもたちの何人かが改善しなかったのには、いくつかの理由があった。最も多い失敗は、ナイアシンアミドナイアシンの投与量が低すぎたことであった。

・私は何人かの子どもにプラセボを与えた。これらは、母親がその手順に同意していたという点で二重盲検ではなかった。彼らのほとんどは数日以内、数週間以内、時には数ヶ月後に再発した。ビタミンを再開すると彼らは回復したが、何人かの子どもたちは、以前の正常な状態を取り戻すのに2倍の時間がかかり、より多くのビタミンを必要とした。プラセボによって誘発される再発はときに非常に深刻なものになる可能性がある。私は、子どもたちと家族をこの方法にさらすことが倫理的ではないと考えているので、この20年間はこのやりかたは用いていない。

・治療を受け、長期間元気に過ごしている子どもたちは、再発の危険性がないので、ビタミン剤を中止することができ、何年も元気に過ごしていれば、再び服用する必要がないかもしれないし、必要に応じて服用することができる。親は多くの場合、試しに夏の間に子どもたちのビタミンを止めてみていた。週末だけ与えないという方法を試した親もいた。しかし、親たちは子どもを観察して、再発の兆候にすぐ気づいて再びビタミン投与プログラムに戻っていた。私は親に、年に一度、なぜビタミン剤を飲んでいるのかを子どもに伝えるようアドバイスした。早くから服用を始めている子どもたちは、ビタミン剤を始めた医師に会ったことを忘れてしまうかもしれない。私はこれまでに何人かのティーンエイジャーがなぜビタミン剤を飲んでいるのかと突然親に尋ねたり、飲み続けるのを拒否したりするケースを経験した。親から説明してもらうようにして以降、こうした子どもたちの消極性は聞かなくなった。

・非反応者の中には他の疾患を持っている者もいた。今回の被験者のうち3人は水頭症、重度のてんかん、二分脊椎という重篤な他の疾患を持っていた。私の経験が不十分で、ビタミンが少なすぎたり食物アレルギーに十分な注意を払わなかったりしたために失敗したケースもあった。ナイアシンアミドだけでなくピリドキシンを必要とする子もいた。KPが尿中に出ている子どもにピリドキシンを投与する必要性は当時はまだ確立されていなかった。イニシャルRJはB3、B6を両方を投与されたが、母親がB6を切らしたときは再発した。B6だけでは回復せず、両方を投与しなければならなかった。これは二重依存のケースだ。

・少数の子どもたちは、はるかに大きな用量を必要とするだろう。子どもは大人よりもビタミンB3の高用量の耐性がある。今回の被験者たちには記載されていないが、私の患者のひとりは、ナイアシンアミド6gに反応しなかったため、治療が中止された。彼女はダウン症児のような外見だったので、私は驚かなかった。それからの2年間、彼女は次々と連れて行かれあらゆる治療を受けたが成功しなかった。家族は非常に動揺していて、再び私の治療を試みるために彼女を連れてきた。彼女の兄は幼少期の統合失調症から回復し、父親もうつ病から回復していた。二度目の治療のために彼女に会った時も彼女は視覚刺激や声による嫌がらせを受け続けており、母親を攻撃するように命令されていた。彼女は非常に落ち着きがなく、動揺していて、事実上コントロールできない状態だった。最後の手段として、ナイアシン4gを1日3回、フェニトイン(注:抗てんかん薬)150mgを投与した。彼女は痙攣を起こしたことはなかったが、この薬がさらなるサポートになるかもしれないと期待した。1カ月後、彼女は前よりリラックスしていた。彼女は独りになるのを怖がったので、両親は12時間交代で彼女の看護と抱っこをしていた。彼女はリラックスして安らかになり、彼女が幻覚について話している間、静かに座ることができた。一年後、彼女は正常になり、私が最後に彼女を見たときには3年間よい状態が続いていた。このケースと同量処方していれば、私の失敗ケースのいくつかは助けることができたかもしれない。多くの子どもたちは、あまり多くの薬を服用することを望んでいないか、吐き気を発症する可能性がある。幸いこの患者は障害が強く、自分の症状を恐れていたため、私が勧めたものを何でも飲んでくれたし、一握りもあるような量の錠剤を飲み込むことができた。

・もうひとりの患者、イニシャルRSは、回復はしているもののまだ改善されていないと評価されたが、アレルギーのある食品が食事から除去されるまで大きな改善はみられなかった。過去20年以上にわたり、私は日常的にアレルギーの有無を調査し、特定の食物アレルギーがなくても砂糖やジャンクフードを排除した食事をすべての患者に与えてきた。

・したがって、子どもがすぐに反応しない場合は、すぐに以下の要因を確認する必要がある。
(1)投与量は適切か
(2)てんかん水頭症甲状腺機能低下症、その他のビタミン欠乏などの器質的な理由がないか
(3)その他のビタミンやミネラルへの依存がないか
(4)鉛や銅などのミネラルの毒性がないか
(5)食物アレルギーがないか
などである。これらをすべて考慮に入れて治療しなければならない。

【年齢別の対応】
・治療開始時に5歳以上の子どもは、5歳未満に比べて反応が良い傾向があったた。5歳未満では50%、5-9歳では66%、9歳以上では73%が反応を示した(かなり改善されてよくなった)。このことは、病気の出現が遅い方が予後が良いことを示唆する。おそらく、発症の早さは遺伝的なビタミンB3依存性の度合いを測る指標になるのではないか。早期に出現すればするほど、遺伝的な要素が大きいことになる。これにより長い間私を悩ませてきた奇妙な発見も説明できるかもしれない。通常、成人にとって有効なビタミンB3開始用量は体重50ポンド(約22.7kg)あたり1gである。これはもともと子どもに使用されていた用量だが、多くの研究からほとんどの子どもにはこれが適切ではないことがすぐに明らかになった。彼らは2-3倍の量を必要としするので、ほどなく私はすべての子どもたちに体重50ポンド未満であっても1日3回、1回1g飲ませ始めた。高用量必要であることもまた、遺伝的必要性を測る尺度かもしれない。病気の発現が早ければ早いほど、遺伝的な要素が強く、体重あたりの必要なビタミン量が多くなる。これは、病気が早く現れれば現れるほど、より集中的な治療が必要であることを示唆する。

ひとりごと

今回も実践的な内容でした!
長く続けたほうが効果があること、発症の早い子は遺伝的不利も大きくて大量のビタミンが必要であること、中断による再発は回復に時間がかかること、B3とB6が両方必要な子どももいること、食物アレルギーが治療の阻害因子になりうること、など。
先人の経験や知恵は本当にありがたいな、と読みながらしみじみ思います。