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子どもの発達と感覚統合:第3章 神経系の構造

自分のために感覚統合を学び中!

感覚統合を語れるようになるためのひとり読書会。
今日で総論はおしまいです。

子どもの発達と感覚統合

子どもの発達と感覚統合

  • 作者:A.Jean Ayres
  • 発売日: 1982/07/01
  • メディア: 単行本

今日も雑なメモにアウトプットしながら読んでいきます。

第3章 神経系の構造

第I部 感覚統合と脳、今日は第3章です。

・神経系は左右の大脳半球、小脳、脳幹、脊髄と末梢神経。ニューロンの80%は感覚入力に関与。運動ニューロンは筋収縮を起こす。感覚統合とは、脳が有効な身体反応や有効な知覚・感情・思考を生み出すように感覚入力を組織化する過程。

ニューロンはヒトでは平均120億個。神経路と呼ばれる束になっている。核は細胞体の集まり。

・感覚統合のほとんどは脳で生じ、脊髄では起こらない。

・脳幹には重要な核がある。中央部には脳幹網様体ニューロンの網と核の集まりがあり、脳のほとんどの部位に拙図臆する繊維を含んでいる。感覚-運動の処理、統合=組織化に非常に需要な役割。網様体には自律神経核もある。覚醒中枢としても働く。感覚は網様体に力を与え、それによって脳全体を刺激する

・前庭核も脳幹にあり、関節や筋の感覚に対する情報を多く処理。

・本来小脳は前庭核からのひとつの生成物!! 小脳はすべてのタイプの感覚を処理するが、重力・運動・筋-関節感覚を組織化する上で有効な働きをする。

・大脳半球は、内部に感情中枢の辺縁系がある。
・ヒトの大脳皮質は高度に特殊化。聴覚、言語、身体感覚、身体と目の随意運動コントロール。すべての感覚を統合し、あらゆる感覚間の連合を形成。上位にある皮質の組織化は下位レベルの感覚の組織化次第。
・大脳半球には左右のラテラリティ。脳幹で交差。右利きなら多くは左脳は巧緻性、言語。複雑な機能は左右両脳がともに関与。脳幹がよく働くときだけ両脳は互いに協調して働くことができる。

・感覚は脳にとっての「食物」あるいは栄養物。いろんな感覚がどんどん入ってこないと神経系は適切に発達できない。
・視覚も聴覚も触覚情報も脳幹の中枢へインパルス送られる。触覚は子宮内で最初に発達する感覚。視覚や聴覚発達より前。
・固有受容覚は筋収縮、関節屈曲。運動を助ける。固有受容覚が乏しいと目で見ることができない作業が非常に困難。
・前庭覚は重力と加速度。前庭核と小脳で処理され、脊髄と脳幹へ送られる。空間知覚と空間内での定位。
・内臓感覚は生命と健康のために重要。
・全身とすべての感覚が全体としてまとまって働くとき、適応と学習は脳にとって容易になる。

・大脳皮質は大脳半球の外側に進化してできたもの。皮質の処理過程は皮質より下位の大脳半球の処理過程と脳幹の処理過程にも依存している。もしものうかんでより基本的な触覚・視覚・聴覚の処理過程が発達しなければ、皮質でもまた正確な触覚・視覚・聴覚が発達することができない。

・学校は子どもの視覚系と聴覚系を他の感覚と独立して発達させようとする過ちを犯している。親は子どもが欲し、必要とする触覚・前庭覚・固有受容覚の経験を子どもに得させることによりその過ちを部分的に改める。

・アメーバも触覚に反応する。原始的な動物の3層の最外層が脊椎動物では神経系と皮膚に変化=外胚葉。触刺激は神経系全体に広がる。触覚系が人の脳の障害のほとんどすべてに何らかのかかわりをもつ理由の説明。
・ハーロウの実験:子どもは後の独立に必要な情緒的安心感を発達させるために多くの接触感覚を必要としている。赤ん坊を抱きあげ、触れることが脳の感情過程を発達させ、組織化を助け、将来独立した大人として十分機能できるようになると考えるほうが自然。

・すべての生きものは重力と関係をもつ。前庭系の進化は魚の泳ぎから。聴覚は前庭核で処理される振動感覚に由来。
・魚類と両生類では、視覚は運動に対して反応→だから釣りの餌を動かさないと食いつかない。前庭系は動くものに視線を保つよう効果的に機能しなくてはならない。小さな静止したものを見る能力は大脳半球が進化した後。子どもが読むとき文字列に沿って指を動かすのは指の動きを追うほうが読みやすいから!!

・進化の過程で、リスは左右の手を同時に使えるが、一肢を対側で使えるようになったのはサルから。サルは簡単な道具の使用を学習し、道具の重さによる平衡を保つため視覚情報が前庭・固有受容覚と統合され、道具の使用が広い大脳皮質の朗育を進化させる原因になった。

・感覚と運動の過程は、すべて興奮性・抑制性ニューロンの組み合わせで調整されている。感覚を調節する能力はその後の人生で感覚刺激をうまく処理できるために必要なひとつの過程。

幼年時代の感覚刺激と運動活動は、その後の人生のなかでそのまま比較的安定して残る感覚と運動の過程を形成するニューロンや相互関係を形作る。幼児期にはかなり可塑性が残るが、10歳までにほぼ完成。→辺かしにくくなる。

シナプスは使えば使うほど強く役立つようになる。繰り返すほど強化され、ついに自動化される。

・感覚系と運動系の相互作用はかえぞ切れないほどの結びつきを通して感覚に意味を与え、運動に目的を与える。前庭系と触覚系は最も基本的な情報を供給。その次に固有受容覚。この3つは、運動や接触の中で経験されたものと視覚情報を聯合させることによって見えるものに意味を与える。見えるものは聞こえるものに意味を与えるのを助け、聞こえるものは見えるものに意味を与える助けをする。最終的に、感覚に与えられた意味は抽象的・認知的思考を形成することを助ける。
・物理的な環境との相互作用がないと学習が非常に困難になる。学習のほとんどはまず感覚系の統合によって起きる必要がある。感覚系がたがいによく働くほど学習が進み、学習が容易になる。

・感覚統合療法に置いて、われわれは子どもにできるだけ多くのシナプスを気持ちよく用いさせようとする。とくに脳幹でのシナプスを使用させる必要がある。たんに遊んでいるように見えて、脳内部で仕事が進んでいるのだ。脳がよく働けるように組織化することを学習している。これは読み書きなど多くのことを学習していく能力を高める。

ひとりごと

神経系の仕組みはおおよそわかっていたことだけど、なぜ脳幹がそんなにも大事なのか、リスとサルの進化の過程での大きな違いなど、いろいろな気づきがありました。
やっぱり上位の脳の働きは下位の脳の働きの上に成り立っている、と改めて確認できたのもよかったです♪