ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:確証のための情報(2)臨床試験:「100人」研究(後編)

ひとり読書会、今回は「100人」研究総論の最終回。
次回から110ケース個別のエピソードに入りますが、その前に最後のまとめです。

読んでいるのは、こちらの本。

確証のための情報(2)臨床試験:「100人」研究(後編)

【行動スコアと臨床評価との関係】
・多動性スコアと改善評価との間には、この表に示すようなわずかな曲線的関係がある。


f:id:nao-chun:20200602165228j:plain


・正常な多動性スコアの値は45以下である。臨床評価スコア0と1を比較すると、多動性スコアの減少が18ポイントと最も大きく、3と4の比較では変化7ポイントと最少あった。「大幅に改善された」(3)または「良好」(4)の評価の親たちはおおむね満足しており、「改善なし」(1)の評価でも少数の親は満足していた。というのも彼らは他の治療法ではこうした最小限の効果さえこれまで見ることがなかったからだ。もちろん、子どもがこれ以上改善しなかった場合、彼らの満足は長く続かなかった。

・多動性スコアは臨床的改善を推定するために使うことができる。40未満なら患者の状態は良好、40-46ならかなり改善、47-55のスコアは改善。それ以上のスコアの場合、改善されていないことがわかる。39点以下の33人のうち、8人(54%)が良好、12人(36%)が大幅に改善だった。40-46点の12人のうち、2人は良好、7人は大幅に改善、2人は改善、1人は改善なしという結果だった。このように、多動性尺度は臨床的評価と非常に密接に相関していた。多動性スケールは、子どもに精通した大人なら誰でも使用できるので、親はこのように治療の進展や再発のチェックにこのスケールを使うことができる。

【分子栄養学的治療への反応】
・110人の子どものうち、74人が最終評価時には大幅に改善または良好であった。この数は、治療を継続することで増加すると思われる。それ以外に16人が改善し、全体では84%が改善を示しました。このデータは、Bernard Rimland博士の研究で報告された結果と類似している。精神医学的な診断は転帰と密接に関連していなかった。記述的診断よりも重要なのは病因診断、すなわちアレルギーが関与しているかどうか、どの栄養素が通常よりも多く必要かどうかである。この研究の被験者の子どもたちは、臨床的に統合失調症でも多動性でも失読症でも、同じように良好な反応を示した。今、彼らは50の異なる診断のいずれかを受けているかもしれない。記述的診断よりも重要なのは病因診断、すなわちアレルギーが関与しているかどうか、どの栄養素が通常よりも多く必要かどうかである。今回の被験者の子どもたちは、臨床的に統合失調症でも、多動性でも、失読症でも、同じように良好な反応を示した。今日では50種類のさまざまな診断がついているかもしれない。最も反応が悪かったのは、統合失調症の母親を持つ子ども、器質的合併症を持つ子ども、長い間病気をしていた子ども、5歳までに話し始めなかった子ども、幻覚などの目立った症状のない行動障害を持つ子どもであった。

・この反応が分子栄養医学的治療によるものではないとは考えにくい理由がいくつかある。1952年から1960年にかけてサスカチュワン州で行われた4つの二重盲検前方視実験は、精神医学では初めて、また北米医学でも初めて、ビタミンB3が統合失調症の治療に有効であることを証明した。ビタミンB3治療を単独で(砂糖なし・アレルギーなしの食事を併用せずに)行ったところ、プラセボと比較して2年間の回復率が35%から75%に倍増したのだ。それ以来、この治療法を用いたすべての臨床研究で同じ結果が確認されている。慢性患者ははるかに長い治療期間を必要とするが、彼らはあまりにもビタミンB3とB6のふたつを主とする複合的な栄養サプリメントによる治療に反応する。

・子どもたちは、ビタミンB3をプラセボに置換すると全例再発した。アスコルビン酸を中止しただけでも再発がみられた。錠剤はすべて同じように見えるので子どもたちは変化に気づかなかった。両親は知っていたが、彼らの態度が影響を与えた可能性は非常に低い。両親はビタミン投与以前からビタミン信仰のために治療効果を高めるような態度をとっていたわけではないからだ。仮にビタミンに対する子どもたちの信仰が大きな役割を果たしていたとしても、プラセボで再発した後でビタミン剤を再開すれば間髪入れずに反応があったはずである。しかし、たいていのケースで再発後に同じ治療効果が再び現れるまでにはもっと長い時間がかかった。その上、錠剤を飲み込むのが好きな子どもはほとんどおらず、ほとんどの人が否定的な見通しを持ち、飲まざるを得ない錠剤には何の信頼も寄せていなかった。錠剤は大きくゴツゴツして、ひどい味がした。信仰心が芽生えていたのは、ナイアシンアミドを飲むと幸せな気分になるのでナイアシンアミドを「幸せの薬」と呼んでいた子どもたちのように、有益な効果に気付いた子たちであった。そしてこの子どもたちは、過去に服用していた色付きで飲みやすい小さな錠剤では何の改善も示さなかった。プラセボ反応がビタミンのみに特異的に強かったと結論する人もいるに違いない。プラセボ反応がそこまで特異的であることはまだ誰も示していないが。

プラセボ反応は用量とは無関係だが、ビタミンへの反応は用量と関係している。多くの子どもたちは、投与量を2倍、3倍とするまで改善しなかった。

・年長の子どもは年少の子よりも早く反応した。女児は男児よりも反応がよかった。プラセボ反応が年齢と性別に関連しているという証拠はない。面接の頻度と反応のよさには負の関係があった。プラセボ反応はセラピストと患者の関係に依存している。これらの子どもたちの多くは、治療担当の精神保健スタッフと何年にもわたって緊密かつ頻繁に面接を繰り返していたが、ほんのわずかな改善しか見られなかった。しかし、ビタミン服用と最小限私のオフィスへ訪れたことで、彼らは治療に反応した。治療の説明とその後うまくやっているかフォローアップする面談を除いて、私がこの子どもたちにどんな形であれ精神療法的な形で会うことはほとんどなかった。

・次の章で述べるこの110人の子どもたちの個々のケーススタディは、この臨床試験を補完するエピソードを提供してくれている。

ひとりごと

プラセボ効果じゃなくビタミンそのものが有効だと丁寧に説明するくだりが面白かった! 治療者との面接よりもビタミンが有効なら、面接に費やす時間さえ少なく留めることができる可能性もあるってことですよね。
次回から、110ケースの具体的なエピソードを少しずつ読んでいきたいと思います♪