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子どもの発達と感覚統合:第5章 前庭覚の障害(1)

自分のために感覚統合を学ぶ

継続は力なり!
今日もじわっと進みます。

子どもの発達と感覚統合

子どもの発達と感覚統合

  • 作者:A.Jean Ayres
  • 発売日: 1982/07/01
  • メディア: 単行本


第5章 前庭覚の障害(1)

第II部 感覚統合障害、今日から前庭覚。
たぶん3回シリーズだな…。

・前庭系の障害っていうものが存在し、多くの子供に問題を引き起こしているということを認識している人々は非常に少ない。
・前庭系の障害がバランスを失わせたり、めまいを覚えさせたりすることは明白。前庭系が一旦成熟した後で起こる問題。これが子宮内や出生時、幼児期に始まるとすれば、臨床像が違ってくる。

・頭の位置が変化するたび、前提受容器のどこかが刺激される。前提受容器はもっとも鋭敏な受容器。
・前庭核は前庭入力と同時に筋肉、関節、皮膚、視覚および聴覚受容器からの情報を処理する事務センターである。更にその他の脳幹部や小脳や大脳皮質の大部分を含む多くの部分からのインパルスを組織する。受胎後9週間で作動し始める。

・脳の中で起こる最も大切な事のひとつが前庭活動の調整。調整とはすべての機能や調和を保つために神経活動を増加・減少させるプロセス。

・目と首の筋肉は、前庭系を組織する上で特に重要な役割を果たす目または首からのインパルスが残る体全部の筋収縮における全体的順序の変化の引き金になり得る。前庭感覚の処理が悪いため、学習上の問題を示す子供は目の前を動いている物体を追う事に困難を示すことが多くある点から別の店へ正確に目を動かすことにも困難を示す。ニューヨークの2人の医師が目・首・頭の安定性の欠如が測定異常性失読症、即ち読みの障害の主要な原因であると結論付けた。眼振が長く続きすぎる場合は、前庭入力に対して前庭系が過剰反応している。

・前庭による筋のコントロールは完全に潜在意識的。前庭覚からのたえまないインパルスの流れは体をまっすぐ伸ばして保つ筋緊張が生じるのを助ける。筋肉と関節は固有受容姿勢の伝令を前庭核および小脳へ送っている。前庭核と小脳は感覚運動プロセスに関する情報を常に交換している。

・頭をしっかり保ったり効果的に動かしたりするためには、首の周りの全ての筋肉を同時に収縮できなければならない。これが同時収縮。前庭障害のある子どもでは同時収縮が不足していることが多い。

・転びそうになった時、腕を伸ばして自分の体を支えようとするのは前提および固有受容性インパルス。保護進展という。

網様体は神経系の覚醒に責任を持っている脳の部分だが、前庭系はこの網様体賦活系の中に膨大な量の感覚インパルスを送り込んでいる。活動性の低い前庭系はその調整的影響力の欠如のため多動性や注意散漫をもたらす。感覚統合療法において、前庭刺激は、鎮めるか、刺激するか、活動レベルを組織するかのいずれかのために使われる。

・あらゆる種類の感覚入力は、前庭核と脳幹の網様体へ集まってくる。その一部はさらなる統合のため、脳幹最上位にある視床まで流れていく。感覚統合は大脳半球で完結する。

・前庭情報は大脳皮質の中で固有覚および視覚とともに処理され、私達が空間の中のどこにいるかを教えてくれる。前庭障害は社交的関係の妨げになることもある。この障害があると他の人の横に立つ時、どの程度接近して良いかもわからず、近寄りすぎて他人の感情を害してしまうことがしばしばある。また群集の中でどこに人々がいるかの判断が困難だ。

・情緒神経系の機能であると考える人は、ほとんどいないが、恐れ、怒り、悲しみ、喜び合いなど全ての感情に神経学的基盤がある。大脳辺縁系は大脳半球で情緒に基づく行動を調節している部分。

・前庭系と消化管に密接な繋がりがあるのは、車酔いや船酔いから明らか。前庭入力が過剰なとき、能幹の消化中枢が混乱するから。

・学習の問題の基礎に感覚運動能力がある。見たことも聞いたことを結び付けられず、椅子に座っていることに集中を必要とする場合、どうやって自分の名前を書けるというのか。

ひとりごと

前庭覚は思っていたより重要な役割を果たしていると思い知らされる章。
車酔いすると吐きそうになるのは、脳幹が混乱しているからだ! と知って、原始反射統合の話とも繋がってとても納得。