ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

自閉スペクトラム症に1年間かけていろいろ介入…効果が高かったのはどれ?

久しぶりに、論文抄読

ぼんやり考えをしていたら、先日Twitterで教えていただいた論文のことを思い出したので勢いでザクッと読んでみることにしました。

Comprehensive Nutritional and Dietary Intervention for Autism Spectrum Disorder—A Randomized, Controlled 12-Month Trial (Nutrients. 2018 Mar; 10(3): 369.)

自閉スペクトラム症に対する栄養と食事の包括的介入:12カ月にわたる検証」

わたし的にはめちゃくちゃ気になる研究です。

ざっくり内容紹介

論文の中身はこんな感じ。

アリゾナ州に住む年齢3~58歳の自閉症スペクトラム障害ASD)の子どもと成人計67人を対象に、無作為対照単盲検による包括的な栄養・食事治療介入の12ヵ月間におよぶ研究を行った。

ASD群を治療群と非治療群に分け、12カ月間にわたる介入期間に、

と順次追加していき、365日後に再アセスメントを行った。

結果、治療群では非治療群と比較して非言語性IQに有意な改善がみられた(+6.7±11ポイント vs -0.6±11、p=0.009)。
また、治療群は非治療群と比較してさまざまな自閉症症状や発達年齢が有意に大きく改善していた。
治療群では、血液中(一部は赤血球)のEPADHAカルニチン、ビタミンA、B2、B5、B6、B12、葉酸コエンザイムQ10が有意に増加していた。

保護者からは、
(1) ビタミン・ミネラルサプリメント 
(2) 必須脂肪酸 
(3) HGCSF食
の順に効果が感じられたと報告があったが、さまざまな介入の中で最も遵守率が低かったのはHGCSF食であった。

いろいろ、面白い研究ですね…

そもそもの研究期間が1年間と長いのもすごいのですが、初日からのビタミン/ミネラルはマルチもマルチ、合わせて32種類使用してるし、180日目からの消化酵素も11種類だし、実験デザインが大胆!
自閉症関連の評価尺度の数もビックリするほど多くて、The 力技!っていう印象を受けました。

親御さんの感想から、結局マルチビタミンとミネラルがいちばん効果が感じられたとのこと…。
希望の持てる結果ではあるけれど、どれがどう有効だったのかは判断できませんね。
そのうちナイアシンは35mg、ビタミンCは500mg…メガとは呼べない量なのも興味深いです。

HGCSF食のコンプライアンスが悪かった、というのもとても面白い結果でした。
いくら効果は感じていても、小麦と乳製品と大豆を避けた食事を半年間続けるのはものすごく大変、ってこと。
これも頭に置いておかなくてはいけませんね。