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子どもの発達と感覚統合:第9章 自閉症児

自閉症児と感覚統合療法


感覚統合本のひとり読書。

おしりに火がついたので、このままがんばって読みたい!!


子どもの発達と感覚統合

子どもの発達と感覚統合

  • 作者:A.Jean Ayres
  • 発売日: 1982/07/01
  • メディア: 単行本


今日もはりきってGO!


第9章 自閉症


・感覚統合療法士は、一般的には他の脳障害児と比較すると自閉症児に対する経験はそれほど多くない。年少児で、改善はあっても緩徐か、全く改善しない子もいた。それでも感覚統合は自閉症児の脳の奇行に少なからず意味のある変化をもたらすことはできる。


自閉症児は通常、行為障害児同様、触覚の弁別や運動企画に非常な問題を持っている。姿勢反応の発達は不十分だが、学習障害児よりはよい。


自閉症児の感覚処理過程の問題には三つの側面がある。

一つは感覚入力が子どもの脳に正確に登録されていないためほとんど注意が払われない、または過剰に反応してしまう。

二つ目は特に前庭覚と触覚の感覚入力を十分調節できず、重力不安や感覚防衛を見せること。

三つ目は子どもが特に新しいことや違ったことをしたがるように仕向ける脳部位が正常に働いておらず、目的にあることや建設的なことにほとんど興味を示さないこと。


・どの感覚入力を登録し私たちに注意を喚起するか、その情報に対してどんな行動をとるかを決定する大脳辺縁系という部位が自閉症児では十分に機能していないため、誰も気付くような多くのことが登録されない。この部位の機能が重度に侵されているほど感覚統合療法の効果が下がる。聴覚入力と視覚入力は他の感覚刺激より無視されやすい脳は重要な資格情報とそうでないものを容易に区別できないほとんどの自閉症児は動く縞模様に強く注意をひかれる。視動性眼振を活性化し、前庭覚を刺激する。

自閉症児は他の感覚の登録にも問題を持っている。非常に鈍感なこともあるが、触覚などに過敏な反応する子もいる。


自閉症児は目や耳を通してより筋肉や関節からの感覚入力を多く感じる。皮膚への強い圧迫も自閉症児に好まれる触覚刺激だ。


自閉症児は動きや前庭刺激を求めるか、全く拒否するかで、どちらの反応も正常ではない。ほとんどの子は昼間開眼で検査すると回転後眼振の持続が短い。前庭感覚のための一つの重要な連絡路が十分使用されていないことが示唆されるおそらく前庭核を抑制しすぎている。眼振が短いと重力不安を示す。自閉症児たちは一つのことから次のことで首尾一貫してできるような効率的な脳を持たない。


・適切な動機付けがあれば自閉症児は感覚入力を登録しやすくなる例えば前庭刺激を伴う身体運動を行っている途中やその終了後は治療者の目を長く見る傾向がある。


・新しいものや環境は、見慣れた安全なものとして認識できるようになるまで怯えたり抵抗したりする対象になりやすい。


・聴覚入力の登録も非効率的、言語知覚の確率にも制限がある。同様に、触覚・固有受容覚・前庭覚からの感覚統合の正常な登録なしでは適切で明確な身体知覚を発達させることはできない。自身の感覚も外界との相互作用も難しくなり、運動企画を学ぶことも自我発達に必要は身体的基礎も剥奪される。


・「それをしたい」と思うシステムが自閉症児ではよく働いていない。合目的的、建設的ではなく、単純な繰り返し活動で終わる。靴下を履くなどもさせるのは難しい。また、三輪車を見てもサドルに座ってペダルを回すと動くという抽象的推測が難しく、楽しみに感じられないため三輪車に乗せようとすると抵抗する。スクーターボードなども見るだけでなく自分の触覚や固有受容覚、動きなどを通して自己の身体の位置や動きを感じることが必要。数回経験すると笑顔が出ることすらある。治療者も両親も、子どもが活動を受け入れる準備ができるまで耐える必要がある。学習障害児のように内的欲求に依存するわけにはいかない。治療を通して前提刺激を心地よく楽しいものにするまでには、さまざまな動きや体位変化を与える活動に抵抗されることが予想できる。


自閉症児に対する感覚統合療法の目的は、中枢における感覚勝利過程を改善して、より多くの感覚が効率的に登録され調整され、自己の行動の組織化を助ける手段として簡単な適応反応の形成を促進していくこと。まだ大きな効果は期待できないが、感覚経験を通して脳に到達する方法を発展させていく必要がある。


ひとりごと

文章の難解さや読み進めにくさは少なかったけれど、自閉症特性に対する感覚統合療法の効果はあくまで控えめに記述されていました。この邦訳が出てから約38年経つので、このあとずいぶん現場での経験は蓄積されてきているのだろうとは思いますが。

ベースを押さえた上で、最近の知見にも触れてみたいものだと思いました。