ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの発達と感覚統合:第10章 感覚統合療法(前編)

久しぶりに戻ってきました

また間が空いてしまいましたが、『子どもの発達と感覚統合』の戻ってきました。
今日から第III部「障害の対処方法」。

子どもの発達と感覚統合

子どもの発達と感覚統合

  • 作者:A.Jean Ayres
  • 発売日: 1982/07/01
  • メディア: 単行本

第10章 感覚統合療法(前編)

・カリフォルニア大バークレー校のRosenzweig博士らが、ネズミに豊かな刺激(=前庭覚・固有受容覚・触覚刺激)を得られるような環境を与えて一定期間生活させると刺激の少ない環境で育ったネズミと比較して大脳皮質重量が大きく、脳内伝達物質を含めた化学物質が多く、ニューロン間の相互作用も多いことを発見した。1日2時間このような環境で過ごさせることを1カ月継続するだけで変化がみられ、あらゆる年齢のネズミに変化は起きたが若いほど変化が大きかったことも示された。

・科学者は、環境の相互作用が脳機能を改善するという説を受け入れ始めている。ただ、豊かな環境を見るだけではなく自分の感覚と動きでその環境を探索する必要がある。ヒトでネズミと同様の実験を行うことはできないが、感覚統合療法も同じこと。

・ヒト胎児にとって、子宮はよく動く環境。母親の動きは胎児を揺すっている。早産で産まれた未熟児は胎内での準備が整っていないが、1日3回30分間保育器内のハンモックで揺らす刺激を与えると、揺らさない赤ちゃんより発達が早くなることを発見した。ウォーター別途での刺激も有効であった。母親に未熟児の生後1カ月間、1日4回15分ずつ撫でたりマッサージしたり抱きしめたりさせたら、体重増加や神経系発達の促進がみられたなどの報告もある。

・損傷を受けたニューロンは活用させることで回復する。視覚系に障害があれば視覚刺激が必要、など。しかし前庭覚や触覚の経験は全神経系に有益な効果を及ぼす。

・他動的に感覚刺激を受け取るだけでは脳の回復はなく、自分が自分自身に刺激を与える必要がある。環境と相互作用する機会を与えられたら、脳は自らを統合していく。微細脳障害や感覚統合障害を持つ子どもは、通常の遊びや生活から得られる感覚刺激では脳を組織化することができない。家庭や学校、テレビや教科学習や言語的やりとりからは通常得られない環境を提供する必要がある。

・前庭覚・固有受容覚・触覚をコントロールしながら子どもに与えるには、熟練した治療者と簡単かつ特殊な多くの器具を準備した大きな部屋が必要。治療者が目立たないよう環境を設定していく一方、子どもが自らの行為を自発的に行っていくとき、治療は最も効果的となる。感覚統合療法は運動技能を教えるのではない。

ひとりごと

これまで読んできた内容を踏まえて、どう支援していくかという話になりました。
マウスやラットが養育環境の豊かさによって認知機能が変化するというのは先輩から聞いたことがありましたが、まさにそれと同じことが人間の子どもたちにも有効だということですよね。

  • 損傷を受けたニューロンは活用させることで回復する、でも前庭覚や触覚の経験は全神経系に有益。
  • 感覚統合療法では環境設定はしても実行するのは子どもたち。

このふたつがとても心に残りました。