ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

研修医時代医に見た、ベテラン指導医の分子栄養学的診療

案外悪くないぞ、Zoom飲み会

昨日、このご時世らしく「Zoom飲み会」というのを初めて経験しました。
今まで20年以上続けてきた、精神科入局同期の年1回の会合。
毎年幹事を持ち回りで担当して居酒屋やレストランで集まっていたのですが、コロナ自粛で去年も叶わなかったのでZoomでやってみようと今年の幹事さんが提案してくれたのでした。

飲み会と言っても、飲食OKなだけで何の縛りもなく話し続けるだけなのですが、積もる話をたっぷり3時間してもまだ名残惜しいくらいで、とても楽しかった!
卒業して、今はそれぞれの環境でそれぞれの専門性を発揮して診療しているわけですが、右も左もわからないときから2年間精神科研修医として一緒に過ごした仲間とのつながりはいつになっても変わらずありがたいな、としみじみ。
話しながらあっという間に当時にタイムスリップできるような感覚は不思議です。

ありありと思い出す、研修医時代のこと

昨日みんなと話したこともあり、研修医時代に指導医の先生方の外来に陪席させていただいたときのことを思い出しました。
たしか当時の精神科外来は6診あって、3カ月ごとに違う指導医の先生の診察につかせてもらい、端末で処方箋や予約表の入力補助をしながら(当時カルテ本体は紙ベースでした)実際の診察を見させていただいていたのです。

先生方はそれぞれ得意分野も違えば個々のキャラクターも違うので、そのバラエティの豊かさも感じつつ、共通する大事な部分も学ばせていただける、貴重な機会だったわけです。

ふと、その中に分子栄養学的診療を実践していらした先生がいらっしゃったのを思い出しました。

睡眠のトラブルにビタミンやミネラル

睡眠障害にお詳しかったH先生。
あるとき、「夜布団に入ると脚が熱くなったりむずがゆくなったりチリチリしたりして眠れないです」と50代の男性患者さんがH先生に話されました。
いわゆる、むずむず脚(レストレスレッグズ)症候群。
この患者さんに対してH先生が処方したのはフェロ・グラデュメットという鉄剤でした。

なになに、どうして足がむずむずして眠れない人に睡眠薬じゃなくて鉄剤が出るの? 貧血なの?
不思議でたまらなかったのを覚えています。
H先生は「こういう症状には鉄が効くことがあるんだよねぇ」って穏やかに教えてくださいました。

またあるとき、朝起きられず学校へ行けないという男子中学生がお母さんと一緒に受診されました。
深夜を過ぎても眠れず、朝起こされてもまったく目が覚めないというその患者さんをH先生は睡眠相後退症候群(就寝時間と起床時間が後ろにずれている、ということですね)と診断し、処方されたのはメチコバールというお薬。
これはメチルコバラミン、つまりビタミンB12製剤です。

このときも、ビタミンなんかで睡眠リズムが整うの?ってとても驚いたのが今も忘れられません。
当時の私にはそのメカニズムはまったくピンと来ていませんでしたが、今少し調べてみたらビタミンB12は光への感受性を高めたり睡眠ホルモンのメラトニンの分泌にも関与したりしているようです。

このふたつのケースについては20年以上たった今も心に残り続けていましたが、考えてみるとH先生以外にこういう処方をなさる先生はいらっしゃらなかったなぁ…。

処方薬としてお出しできるビタミンやミネラルには種類も量も限りはありますが、ビタミンでもミネラルでも患者さんに役立つものは柔軟に積極的に使っていく臨床姿勢をH先生から研修医時代に見せていただいたことは私にとって大きな体験だったのかもしれない、と今になって感じています。