ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

公立高校入試改革先送りについて思うこと

広島県の公立高校入試改革、その後…

先週「発達障害バブルの真相」に熱くなっているあいだに、広島県教育委員会の平川教育長が会見を開いておられました。

記事を読んで驚いたり、なるほどと思ったり。
結論から言うと、来年度からの段階的導入が検討されていた入試改革(以前の記事のリンクは↓)は先送りされることになったようです。

先送りという判断に至った理由は?

新聞記事には「在籍中の制度変更への不安を訴える中学生たちの声を重く受け止め、異例の方針転換をした。」とあります。

中学生たち、きっと内申書を気にして少々窮屈な学校生活を送っていたでしょうし、さぞかし入試改革は歓迎されるのでは? と想像していたのですが、実態はちょっと違っていたようで…。

中学2年生から「内申点にびくびくしながら学校に通い、いろいろなものを犠牲にしてきたのに悲しい」「遊ぶことも我慢して頑張ってきた。改革されることが分かっていれば違った意味で充実した中学1年生を過ごせたはずなのに、本当にひどい」などの声があったという。

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うーむ、そう考えるのかぁ…。
一日でも早く窮屈な縛りが解けたほうがよいのかなと思いきや、自分たちががんばって中学校に求められる姿を実行してきたことはしっかり評価に残してほしいという気持ちのほうが勝るのですね。

むしろ窮屈なままで居続けるほうを望む子どもたちの姿にちょっぴり悲しい気持ちもあるのですが、彼らをそんな状態に追い込んでしまったのは大人が作ったこれまでのシステムであって、子どもたちに責任はないはず。

それに現実、来年度から突然内申書が重視されない方針で学校が動き出すとしたら、現中2が新中3として新中1の後輩たちの部活指導をするとき、お互いの心づもりが違うことによるやりづらさなども生じるのかもしれません。

それでも嬉しかったことは…

悲しい気持ちになりつつも、個人的には

パブコメに755人が意見を寄せ、うち小中高生は175人だった。

という記述があること、そして教育長のコメントとして

「いいことは早くやりたいと考えていたが、実施時期については反対の意見が多く、早々に公表することにした」と説明した。その上で「行政にとっては変えないことが一番だが、私は抵抗はない。自分の意見で行政が動くと、子どもたちに体験、経験してもらいたい」

と発表されていることに嬉しい思いがしました。

入試制度を「お役所が勝手に決めること」として諦めるんじゃなく、子どもたちが自分たちの問題として積極的にパブコメを送っていたということにちょっと驚いたのと、それを教育長がしっかり拾い上げて延期を決断された上に「自分の意見で行政が動くと、子どもたちに体験、経験してもらいたい」とコメントしてくださったことになんとも言えないあたたかいものを感じたんです。

センター入試改革の先送りと時期的に重なるので同じようにみられがちかもしれませんが、大人の政治的都合ではなく子どもたちの声が反映されてのことという点でまったく違うなぁ、と。

先送りにはなっても、最終的な入試改革の内容は年内に決定して公表する予定のようなので、引き続き興味を持ってこの問題を見守りたいと思っています。