ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

円環的因果律の鎖を断ち切る話(後編):負の連鎖を断ち切ったのは、栄養のチカラ?!

タンパク質多めの食事と鉄剤投与開始

息子の不登校を主訴に受診してくださっているお母さんの、ご自分の困りごとは疲労感…という話は昨日書きました。

今日はその続きです。

もともと栄養不足・鉄不足を自覚しておられたお母さん、この日からご飯やパンを控えめにして、意識的に食事のお肉や卵料理を増やし、プロテインも習慣的に飲まれるようになりました。
鉄剤もしばらく使ってみることにしたところ、これといった副作用もなく毎日飲めているとのことでした。

それからどうなった?

お母さんがまず感じられたのは、家事疲れの軽減。
これまでは何かひとつ家事をすると、座ってお茶を飲むとかソファに寝そべるとか一旦休憩が必要だったそう。
それが、休みなしに一気に片付けられるようになったとのこと。

するとある日、不登校の息子が「休んでる間にわからなくなった勉強をするのに付き合ってほしい」と頼んできたのだそうです。
息子の意欲も嬉しいし、お母さんの体力にも余裕が出てきたし、で喜んで協力してあげることになりました。

ここで、息子が県外で泊まりがけの学校行事への参加を検討し始めました。「行きたいし、行った方がいいと思う。でも、お母さんについてきてほしい」と。
またしても息子の意欲もに応えたい。でも、そのためにはお父さんへ家を空ける事情を話して、お母さんの交通費や宿泊費もお願いしなくてはなりません。

怒られてもいい、背に腹はかえられない! とお父さんに不登校の部分からすべてを打ち明けてみたら、お父さんからはなんのお咎めもなく、旅行同行もあっさりOKしてもらえたそうです。
「これには息子も驚いたみたいで」とお母さん。これまで何ヶ月も口も聞かなかった父子がときどき会話するのも見掛けるようになったとのことでした。

エンドレスループの鎖はどこからでも断ち切れる!

さて、まだ途中経過ではあるのですが、このご家族に起きていた負のループに切れ目が入ったことは何となく感じていただけたのではないでしょうか。

これぞ、まさに栄養のチカラ?!
…なんて言うと炎上しちゃうでしょうね(笑)。私もそれは違うと思っています。
ご家族の中でいちばん困っていたお母さんがご自分の疲労感に積極的に向き合ったことこそが、エンドレスループを断ち切るきっかけになったのは間違いありません。

お母さん自身の身体に起きていた負のエンドレスループ(身体がしんどくて思うように動けない→お腹が空かない→食事をしっかり摂らない→タンパク質や鉄分が足りない→体内で十分なエネルギーが産生されない→…)を断ち切ったのも、お母さんの行動に起きていた負のエンドレスループ(息子が心配で身動きが取れない→親として十分関われていないと落ち込む→自分を責め、人を頼らない→息子は不登校のまま→…)を断ち切って受診してくださったのも、まさにお母さんご自身。

お母さんおひとりの変化がご家族みんなの変化へと繋がり、変化の輪が広がっていったんですね。
お母さんのファインプレーに心から拍手を送りたい!

そしてお母さんのフェリチン值をモニターしつつ、もうしばらくみなさんの様子を見守らせていただこうと思っています。

2日に渡る記事に長々とお付き合いくださり、ありがとうございました。

それから、円環的因果律の考え方って面白そう…と思った方は、ぜひこちらの新刊を読んでみてくださいね。
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