ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:診断(4) 行動面、知覚面、生物医科学的な、そして知能の検査…ホッファー-オズモンド診断テスト

火曜日恒例、ひとり読書会。

今回の診断法は、ホッファー博士自らが開発に携わったものなので、説明が詳しいです(そしてもちろん要約も長文になりました。すみません)。

統合失調症診断のための質問カード:HODテスト

・オズモンド医師と私で1960年に統合失調症診断のためホッファー-オズモンド診断テスト(HOD)を作成したが,10歳以上の子どもたちのメンタルヘルス診断にも有益とわかった。

・的確な診断と治療方針を決めるため,患者のあらゆる知覚変容の可能性を考えて尋ねるのに膨大な時間が掛かったが,質問セットを用いて「はい/いいえ」で答えてもらうことで早く正確に聞きだせるようになった。

・1枚に1問書かれたカードは145枚あり,通し番号がついている。シャッフルされた状態で患者はそれぞれの質問を「はい」と「いいえ」で答えて分ける。患者が「はい」と答えたカードを特製の採点シートに記録する。カードの内容は五感すべてと時間感覚,思考,気分を網羅している。あらゆる統合失調症患者(急性期・慢性期・回復後…)や他の精神疾患患者(うつ病など)や幻覚剤使用後,ストレス下の人,健常者などに実施し,統合失調症が高得点になるよう1枚を1点とカウントするカードと5点に数えるカードを設定した。

・145枚のカードの質問の例を挙げると,

47. おかしな味がしたことのなかった食べものが,今はおかしな味がする。
66. 私の心が私から離れていく。
81. 人々が私を見ている。
35. 私の頭の中で他の人の声がしているのをしばしば感じている。
127. 私にとって,この世界は永遠である。
17. ときどき,鏡で見る自分の顔が違って見えることがある。
90. オレンジとバナナが似ているのは,果物だからというよりどちらも皮があるからだ。
124. 私はしょっちゅう,自分の骨が柔らかくなったと感じる。
136. 人々は私をいじめようと心に干渉してくる。
129. 他の人たちは奇妙なにおいがする。
26. 私はしばしば,目の前に火花やぽっかり漂う光を見ることがある。
142. 以前よりも多くの人たちが私を賞賛している。
87. ドレスと手袋が似ているのは,女性の持ち物だからというより衣料品だからだ。
145. 私は自分が何者かさだかではない。

・ある青年が統合失調症を発症し、ナイアシン3gで治療した。その青年は医学部へ進学したが、ナイアシンの服用を中断してしまった。ある日、具合が良くないと訴えて久しぶりに訪れたのでHOD検査を実施した。検査を通じてたくさんの知覚変容があることが分かり、ナイアシン6gを再開して速やかな改善を得ることができた。幻覚が現れるまで待っていたら医学部を何年も休学しないといけなかっただろう。

・低年齢だと成人と比べて点数が高く、歳を重ねると直線的に点数は下がる。13歳ぐらいで成人と同じくらい点数が下がる子もいれば、18-19歳にようやく成人と同程度になる子もいる。高得点だった子どもの一部は後から私のもとに紹介されて来たが、既に明らかに統合失調症を発症していた。ビタミンB3による治療で、速やかに点数は下がり、症状も回復した。

・高得点が全員統合失調症なわけではない。得点はビタミンB3を投与するかどうかの判断材料に使える。通常は30点程度、統合失調症はおよそ65点になる。点数が高いほど、統合失調症の可能性は高くなる。

・同年齢の中で比較すると点数が高いものは成績が悪く、低得点の子と比べて2学年ほど学力が低い。特別な支援を必要とする子どもたちが最も点数が高い。メガビタミン療法を行うとスコアは低下する。

・年齢が若いことが知覚の不安定さの原因だと思っていたが、知覚の不安定さは治療しなければ子どもたちにとって障害となる脳の機能障害である。これが栄養障害のアレルギー、その他の生化学的要因やビタミン依存症によるものか調べる必要がある。

・1970年にエドモントンで高校生875 人でHODテストを行った調査の結果、1962年のサスカトゥーンの結果と比べてHOD得点の平均値がずっと高く、これは10年間の食事の質の低下が原因として考えられた。HODテストは診断治療による改善再発の可能性を判断するのに有用で、実施に数分しか関わらないので患者を飽きさせないものである。

ひとりごと

詳しくひとつひとつ尋ねていられない症状を、カードを本人にパッパと仕分けてもらうだけで炙り出せるのは面白いなと思った。医学部の青年の事例のように、発症前に早期介入できることは患者さん側にも大きなメリットになるし、実際使ってみたいなぁ…♪