ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

女の子の進路について相談されたときに考えること。

女の子の進路についての話題になるとき

診察室で女の子のお母さんとお話ししていると、よく聞くのがこの言葉。

「息子のときは本人の好きにすればいいと思っていたけど、娘には将来どんな職業に就かせてやったらいいのか悩む!」

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…分かります。
残念だけど、すごくよく分かります。

もちろん、将来自分が就く仕事を選ぶのはその女の子本人。お母さんが「就かせてやる」わけではないはず。

でも将来の自立を考えたとき、職業やキャリアの選択に慎重になった方がいいとお母さん方が心配するのはとても理解できるし、先のことをよく考えて進路を決めた方がいいよとアドバイスしたくなる年長者の気持ちはお母さん方も他人の私も同じだったりします。

仮に全く同じ能力の男性とまったく同じポストをめぐって争うことになったら、自然と女性が不利な見方をされるというのは、ありりさんがこちらの記事で書いていらっしゃるとおり、悲しい現実。

一部の大学の医学部で男女の合格率がコントロールされていた件も、まだまだ記憶に新しいところです。


私が口を出すことじゃないけれど…

高校生の女の子と進路の話になったときに「保育士になりたい」と言われたら、やっぱり黙っていられなくなります。

誤解のないように言っておくと、私は保育士というお仕事はすごく大切だと思っているんです。
特にベテランの保育士さんが、信念を持って子ども の育ちを日々サポートし、子どもの過ごす家庭という場の環境にも目を配り、園で過ごしているあいだ会えなかった親子を上手に繋いでくださる技を見ていると惚れ惚れします。

でも。
人間のごくごく初期の大事な一時期に多大な影響を与えるお仕事であるにもかかわらず、あまりにもお給料が低い。
本当に、どこにこの不満をぶつけるのが適切なのかわからないけれど、あまりにも仕事として軽く扱われているのが納得できなくて。

だから、せっかく高い志を持って保育の道を目指してくれた若者たちが希望に満ち溢れて仕事を始めた途端にガッカリするんじゃないだろうかと心配になってしまうのです。

稀に男子高校生からも「保育士になりたい」と言われることもありますが、もちろんそのときも「すっごくいい仕事だと思うけど、ひとつだけ言わせて」とお節介な情報提供をしています。

このあたりは、男子だから・女子だから、という違いはないのですけどね…。


基本的には、やりたいことを目指してほしいのです

もちろん「お給料がいいから」と言うだけの理由で将来の仕事を選択するというのもアリと言えばアリですが、やっぱり自分の好きなことや興味のあることで進路が選べたらいちばんモチベーションも保てていいんじゃないのかな、と基本的には思っています。

以前、高校の進路指導で担任から「キミの目指す学部はつぶしがきかないぞ」と言われて進路変更した結果、大学で早々に不適応を起こしてしまったお子さんにお会いしたこともあります。
しばらく休養したあと、結局もともと目指していた学部へ移る決意をしたそのお子さん。
希望の学部へ移ってからは、見違えるほどイキイキと大学生活を楽しんでいました。

思い込みやイメージで軽々しく子どもたちの進路に口出ししてはいけないな…とおとなの責任を痛感したケースでした。

それでも、特に女の子の進路選択については、ちょっとだけ意識的に多めに口を挟ませてもらっている自覚があります。

安心してやりたいことを目指せるように、将来想定されるメリットとデメリットは自分の知る範囲で伝えてあげられたらと思うし、それがその子の目指していることの否定でも妨害でもないニュートラルな情報として受け取ってもらえて、進路選択のヒントのひとつとして使ってもらえたら嬉しいな、と思っています。

今年度第1号の大学AO入試合格報告を診察室で聞いた今日、ふとこんなことを文字にしてみたくなりました。