大事にしているルールと、絶対破ってしまう瞬間の話。
患者さんと偶然ばったり出会ったとき
私の住んでいる街は大都会ではないので、ちょっと出掛けると知り合いに出会うことは度々あります。
もちろん、患者さんやそのご家族にも。
そんなときどうするか? という話です。
これはたぶん、医師それぞれが自分の中でルールを持って行動していることだと思います。
研修医の頃、尊敬している先輩医師にお尋ねしたら、
「こちらからは声は掛けない。声を掛けてこられたら挨拶する」
とわかりやすい基準を示してくださったので、なるほど! と思って今も遵守しています。
ぼーっとした私のことなので、たぶん本当に全然気づかないまますれ違っている患者さんもいっぱいいらっしゃるのではと思うのですが…。
挨拶してくださっているのに気づかずスルーしてたらごめんなさい。
実際ときどき言われますから、「先生、このまえ駅の近くを歩いてなかった?」みたいに。
「元」患者さんの「ご家族」と出会ったら…
原則は「こちらからは声を掛けない」のですが、どうしても抑えられないこともあります。
それは、「元」患者さんの「ご家族」をお見掛けしてしまったとき。
数年前に小中高校生として会わせていただいていた患者さんも、数年経てば全然違う環境で全然違う過ごしかたをされているわけで、今いったいどうしておられるんだろう、元気にしていてくれたらいいけれど…と、とても気になるんです。
「ご家族」にお声を掛けるのは、ご本人と遭遇することが滅多にないからなのですが、その理由はふたつ。
ひとつは、本人はすでに進学や就職で地元を離れているから会うことがない。
もうひとつは、地元に残っているとしても以前と見た目が違うから私が発見できていない(笑)。
その点、おとな同士なら数年あいだが空いていてもお互い気づきやすいですよね。
近況を聞けるのはとても幸せなこと
もちろん、親御さんが私から声を掛けられて嬉しいかどうかちょっと不安だし、万が一ひと違いだったら恥ずかしいし、ためらう気持ちもあるのですが、近況を知りたい気持ちは止められず。
ちょっと抑えたトーンでおそるおそる話し掛けて、「あっ、先生! お久しぶりです!!」と明るい声で反応してくださるとホッとします。
最近商店街でお会いしたお母さんもからは、高校生の頃お会いしていた元患者さんが県外の大学を出たあと就職し、なんとちょっと前に結婚もされたというお話が聞けました。
スマホの写真まで見せてくださり、元気そうで幸せそうな姿を画面を通して見ることもできて、とても嬉しかった!
これに近い親御さんとの再会体験を過去に何度もしたことがあります。
誰かの人生に短い期間だけど関わらせてもらうのは責任重大なこと。人生まるごとの責任をお引き受けするなんて到底できるはずもありませんが、袖振り合った仲のご家族とこうして一緒に昔を振り返って今を喜ばせてもらえるというのは本当に幸せなことです。
そしてこの体験が私にたくさんの元気を与えてくれるし、今会っている子どもたちやこれから出会う子どもたちの将来像を描くヒントにもなってくれる。
たぶんこれからも、「元」患者さんの「ご家族」にはお声を掛けてしまうと思います。
驚かせてしまうかもしれませんが、お時間があればちょっぴりお話させてもらえたら嬉しいな、と思っています。