ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

【第2弾】「発達障害バブルの真相」に衝撃を受けています

発達障害バブル」、もっと知りたい!

ショックを受けつつ読んでいるこの本。

発達障害バブルの真相: 救済か?魔女狩りか?暴走する発達障害者支援

発達障害バブルの真相: 救済か?魔女狩りか?暴走する発達障害者支援

昨日は第1章だけで言葉が溢れ出まくってしまったので、

今日は第2・3章について思ったことをメモしておきます。

第2章 知られざる「専門家」の実態と歴史

親や教師が専門家に丸投げしたり、依存したりするような構図がしばしば見られます(p.68)

これは日頃からとても悲しく感じることです。
「親には言えないことでも、専門家の先生にならこの子が話すんじゃないかと思って」とおっしゃる親御さんは結構な確率でいらっしゃいます。
学校の先生にお電話をしてみると「落ち着いて授業を受けられるように病院のほうでしっかり治療していただけたら…」と言われたことも数え切れないほどあります。
親御さんにも学校の先生方にもそれぞれの専門性を自信を持って発揮していただきたいと思うと同時に、私たち医師の側も日頃から権威や万能感を振りかざすようなコミュニケーションは厳に慎まねばならぬと反省もさせられます。
「『お医者さま』がナンボのもんじゃい! 魔法使いでもあるまいに」と個人的には思っております。

日本では歯科医師、獣医師と医師のみが薬を処方する権限を持ち、その処方権が強すぎるという弊害がある(p.83)

前の項目とも重なりますが、医者が「お医者さま」扱いされてしまう理由のひとつがこの処方権、もうひとつが診断権(そんな言葉ないだろうけど)だと思います。
ナンボのもんじゃい! ともう一度言っておきます(笑)。
いただいた免許のもとでこの二つの権利・役割を謹んで行使させていただいているだけで、それが別段偉いわけでもなんでもない、と改めて自戒の念を込めて。

現在行政機関を中心に行われているメンタルヘルス対策(発達障害支援も含む)というものは、そのほとんどがとにかく専門家に繋げるというものです。そこには、でたらめな専門家が存在し、被害にあう可能性があるという視点は微塵もありません(p.96)

行政の中に身を置いている立場としては、この指摘は痛いほどよく分かりますし、図星すぎて恥ずかしくなるほどです。
専門医養成研修とか、専門医へつなぐかかりつけ医向けの研修とか、毎年当然のように企画運営されています。
全く役に立たないとは思いませんが、メンタルヘルス対策の肝が本当に医療一辺倒でいいの? と言いたくてたまらなくて(たまに言ってみるけど、謙遜や自虐ジョークと受け取られます)。地域で支える本当に有効なネットワーク作りなどはなかなか事業化されません。
たぶん、そういう事業をしようにも評価が難しくて成果を報告しにくい、という性質も関係しているのだろうと思いますが、それにしても「医療の切り札化」には少し怖さを感じてしまいます。

第3章 製薬産業と発達障害支援

さて、この章は児童精神科医個人や特定の製薬会社に関する取材結果が中心です。
私自身はここに登場する医師とも企業とも個人的に特別な関係にはありませんし、ここに書かれている情報をただただニュートラルな目で眺めるよりほかないのですが…、

日本ADHD学会の運営はADHD薬を製造販売する製薬会社からの資金提供で賄われ、学会の幹部にそのような製薬会社からの金銭供与があった(p.98)

私はこの学会の会員ではないので、このことが学会内でどのように取り上げられたのか(取り上げられていないのか)もわからないのですが、事実だとしたら残念、としか言いようがありません。むむむ…。

自治体と製薬会社が連携・協力して、発達障害児・者支援を進める協定を結んでいる(p.108)

そういえば地元のニュースで見かけた記憶が微かにあります。「どうしたんだろう?」と不思議に思っていました。
企業が子どもの育ちや発達障害児・者の支援をサポートしてくれることは大変ありがたいことだと思いますが、そこに「市場」を見い出しての動きだとしたらやっぱり悲しくなりますね。
私自身はこの流れに関するお声掛けをいただいたわけではないので詳細はわかりませんが、この本で読んだことは心に留めておこうと思います。


…暗澹たる思いが立ちこめてきますが、目を逸らしていてもいけないと思うので、さらに読み進めてまた続きを書きますね。