ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:治療(2) 栄養サプリメント

火曜日恒例、ひとり読書会。
今日からビタミン等サプリメントの話。
まずは総論から…。

引き続き、こちらの本を読んでいきます。

薬としての栄養

・マクリーンによると食べものやビタミンが薬として用いられてきた歴史は5つの時代に分けられるという。

  • 第1期:紀元前1500年から1880年まで。ある病気を治すために経験的に食べものが使われていた。
  • 第2期:1880年から1900年まで。動物で欠乏病モデルが作られ,ビタミン仮説が発展した。
  • 第3期:1900年から1930年,複数のビタミンが発見・分離され,化学構造がわかり,合成もできるようになった。
  • 第4期:1930年頃に人体の生化学的機能が研究が進んだころからで,食べものの必要要件が広まり始め,ビタミンの商用生産が盛んになった。
  • 第5期:1955年から現在まで。欠乏症の予防を超え,治療的な健康作用が認識されたことが特徴。

・第2~4期(1880-1955)は,ビタミン投与は脚気やペラグラの予防に限定されていた。ビタミンは触媒であり,何度でも使われるので少量投与で十分と考えられた。根拠なく大量投与すると患者に害を与えると医師免許を剥奪された。今もアスコルビン酸(ビタミンC)静注を禁止する病院もある。こうしたルールがビタミンを予防的使用に押しとどめていて,今も多くの食事療法家や栄養士,医師は必死に固執している。

・古いパラダイムからRDA(一日推奨量)が定められたが,これは栄養欠乏状態からは程遠い健康な若い男性を基準に決められたものである。この設定は機能していない,現代の医学に即していないなどの声が複数の著名な学者からもあがっている。

・1930年代半ば、少量のビタミンB3はペラグラを予防はするが慢性ペラグラは治せないことがわかった。予防には1日20mg、慢性ペラグラの治療には600mg必要。食事があまりにもひどくビタミンB3欠乏状態になっていると、さらにたくさんの投与が必要になる。ビタミンの予防的パラダイムでは、この治療的ビタミンの法則は認められていないのだ。そのためにビタミンの治療的研究は30年ほど遅れてしまった。

・われわれは1955年に大量のビタミンの治療的使用について発表した。ビタミンの治療的パラダイムは以下の4つの観察所見に基づいている。

  1. ひとりひとり必要とする栄養は異なる
  2. 適正なビタミン量は、欠乏症予防の少量から欠乏状態の治療の大量まで幅広い
  3. 適正な必要量を左右する因子は、年齢・性別・身体的ストレス・授乳期・急性/慢性疾患・生体外物質摂取などであり、万人にとって最適な「適正1日使用量」があるわけではない
  4. ビタミンは生涯にわたって安心して摂取できる


・ビタミンの治療的パラダイムにより、誰もが適正な健康を目指すためにビタミンを使える時代が幕を開けた。薬物療法と違って医師等の管理も必要とせず、誰もが市販薬以上に安全に試し、自己治療が行える。薬の投与量は少なすぎても多すぎより安全だが、ビタミンは適正な健康のためには少なすぎるよりちょっと多めのほうがよい。必要量より多ければ排泄されるだけである。1日3gのナイアシンでは効果のなかった統合失調症患者が6gにしたら速やかに改善したのを見たことがある。ミネラルやアミノ酸にはこの「足りないより多いほうがいい」法則は当てはまらないが、それでも許容量のレンジは広い。

ひとりごと

RDAは健康な若い男性を基準に定められたもの、と言ってもらえてほっとした気持ちなのは、やっぱりいわゆるお薬の「用量・用法を守って正しく服用」みたいな固定観念があたまのどこかにこびりついていたからだなと感じました。実践ではとっくにメガビタミン摂ってるのに。
ビタミンが使われてきた歴史を5期に分けて振り返ることができたのも、なるほどと思えました。過去からの流れを知っておくことは大事ですね…。