ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

子どもの注意や行動の障害を治す:治療(2) 栄養の処方…アミノ酸

火曜日恒例、ひとり読書会。
今日はアミノ酸の話。

ひとり読書会で読んでいるのはこちらの本です。

アミノ酸

・体内で作れない8種類のアミノ酸必須アミノ酸と呼ばれ、食事から適切な量を摂る必要がある。l-トリプトファンフェニルアラニン、リジン、アルギニン、オルニチン、チロシンが含まれる。その他14種のアミノ酸は体内で相互に変換されるので「必須」とは呼ばれない。グルタミン酸、アルパラギン酸、システインメチオニングリシンヒスチジン、アラニン、メチオニンプロリン、セリン、スレオニンなどがある。これらすべて必要不可欠であり、もしも22個のどれかが代謝上の問題で不足したら身体にとっては壊滅的だ。非必須アミノ酸に関する系統的な研究はほとんどないが、8つの必須アミノ酸については慎重に研究され、分子栄養医学的治療上の役割も指摘されている。ここではl-トリプトファンチロシンフェニルアラニンがよく似ていて精神面に治療的作用を持つのでこの3つを取り上げる。

l-トリプトファン

トリプトファンは脳内でセロトニン産生を増やすので治療的に使われる。セロトニンは気分と睡眠に関与しており、不足するとうつや不眠を生じる。またビタミンB3の前駆体でもある。うつの治療と躁うつの波のコントロールに用いられる。単体でも、アミン酸化阻害剤やチロシンやリチウムとの併用でも用いられる。私は30年以上、主に不眠に対して使っている。半数の人に有効で、翌朝への持ち越し効果もない。睡眠薬より人気がある。1日量は500㎎から12g。不眠なら就寝前の空腹時に1-3g摂る。食事と一緒に摂ると他のアミノ酸と競合して脳へ入りにくく、脳内セロトニン濃度が上がらない。うつや躁うつ病には1日3-6g投与する。

フェニルアラニンチロシン

フェニルアラニンの一部はチロシンに転換される。そうでないとフェニルケトン尿症になる。放置すると重篤な知的障害に至る。フェニルアラニン除去食が必要だ。フェニルアラニンはうつや痛みの治療に使われる。チロシンはカテコールアミン(ノルアドレナリンなど)や甲状腺ホルモンの前駆体である。体内の主な色素 メラニンの前駆体でもある。抗うつ効果をもつが、おそらく体内でフェニルアラニンと同じように機能するためである。

精神科医のスレーグル博士は、自分自身が数年間うつ状態になったときトリプトファンフェニルアラニンチロシンを組み合わせて回復した。「落ち込みから浮上する方法」という彼女の著書によると、チロシン500-3500mgを朝と午後に服用するとよいようだ。高たんぱく食と同時ではないほうがいい。最初の週は毎日500-1000mgで、反応に応じて漸増する。数週・数カ月経っても反応が悪ければフェニルアラニンも追加する。トリプトファンもおすすめで、就寝前に500-6000mgを空腹の状態あるいは炭水化物と一緒に(高たんぱく食は避けて)摂り、B50を朝夕食後、ビタミンCを1日4g、カルシウム250-1000㎎・マグネシウム125-599mg・マンガン10-30㎎、亜鉛15-30㎎、セレン50-200mcg、クロム50-200mcgを含むマルチミネラル剤を併せて摂る。食事の改善も処方する。抑うつの人は全員彼女の本を読むべきだ。抗うつ薬による治療と同等の効果あるいはそれ以上だ。単に数錠の薬を飲むより複雑なプログラムだが、多くの人にとってより好ましい。

ひとりごと

セロトニン(の材料のトリプトファン)不足が不眠を招くのは、EAAを飲んで実感したのでとてもよくわかる話。
必須アミノ酸の考え方が今とはちょっと違うようだけど(オルニチンが含まれているなど)、その理由は突き詰めることはまだできていません。
アミノ酸やビタミンによる治療が「単に数錠の薬を飲むより複雑」と表現されていたけれど、特許のある人工合成神経作動薬よりも自然で安全で効果があるなら悪くないかも…と思いながら読みました。