ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

秘策?! 抜毛症の悩みを解決してくれそうな物質とは?

抜毛症への苦手意識

これまでいろいろな患者さんとお会いする中で、この症状にうまく対処できないんだようなぁ…と苦手意識が強かったのは、抜毛症。
自分の体毛を自分で抜いてしまう症状です。
髪の毛を抜きすぎて一部の頭皮が禿げてしまったり、眉毛や睫毛がすっかりなくなってしまったり。

お話を聞いていると、そのお子さんがとてもストレスが掛かる状況に置かれていることが多かったので、抜毛行為に注目しすぎないよう親御さんに伝えることとストレス因に対する心理的・物理的配慮を意識して関わることで介入してきたのですが、先日Twitterで「抜毛症にNAC(N-アセチルシステイン)が有効らしい」という情報を目にしました。
おおお、それはめっちゃ気になる♪
さっそく検索!

ありましたありました、学術論文!

最初に見つけた論文はこれ。
N-acetylcysteine, a glutamate modulator, in the treatment of trichotillomania: a double-blind, placebo-controlled study.(Arch Gen Psychiatry. 2009 Jul;66(7):756-63)

抜毛症の大人を対象とした、12週間の二重盲検試験
治療群は1日200-2400mgのNACを飲んだ(対照群はプラセボ)。治療群の56%、プラセボ群の16%が「よく改善した」または「非常によく改善した」と自己評価。治療群では症状評価尺度も有意に変化していた。早くて9週目から効果がみられた。
NACは脳の側坐核(報酬に関連する脳部位)の細胞外グルタミン酸濃度を回復させる作用があるようだ。

続いて、こちら。
N-acetylcysteine in the Treatment of Trichotillomania(Int J Trichology. 2012 Jul-Sep; 4(3): 176–178.)

抜毛症2例のケースレポート。
(1) 23歳女性に1日1200mgのNACを投与。2カ月で前髪は生えてきたが6カ月フォローしても眉毛や睫毛は生えなかった。
(2) 9歳から抜毛癖のある19歳女性。頭皮全域に抜毛があり、眉毛と睫毛は保たれていた。3カ月で頭皮全体に発毛があった。
2例とも副作用はなかった。

NAC、期待大ですね!

個人的には、NACはコロナウイルス対策のサプリメントのひとつとして注目していたのですが、抜毛症治療にも有効な可能性があるなんて、なんと頼もしいことでしょう♪

その名のとおり、システインと構造式が近くて硫黄(S)を含んだアミノ酸なのでちょっと癖のあるニオイがするのですが、副作用もなく抜毛症が改善するなら試してみる価値はあるかもしれませんね!

今日ご紹介した論文はふたつとも、Pubmedという医学論文データベースに収録されていました。
ビタミンと違って、医学界はアミノ酸には寛容なのでしょうか? ちょっぴり不思議です。

f:id:nao-chun:20200513183150j:plain