ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

「ADHDの正体」を読む…第一章

冒頭から、目が離せません


ADHDの正体』を早速読み始めましたが、もう第1章から目が話せない記述がいっぱい!!

気になる部分を要約しながADHDの正体ら、とにかく今日は第一章だけご紹介します。


第一章 緩められる診断基準

アメリカで定期的に行われている全国健康面接調査の結果報告で見ると3-17歳の子どもにおける ADHD の有病率は1997年に5.5%→2012年には9.5%、つまり子どもの1割が ADHD と診断されたことがある。12歳から17歳までに限るとさらに高い増加率で、15年間でほぼ2倍。他方、学習障害の有病率はほぼ変わらない。(p.22)

アメリカの子どもの10人にひとりがADHD…それはさすがに多すぎるだろう、と思いますよね。

多動や不注意を示す子どもに対してドーパミンなどのの働きを強める中枢刺激剤が有効なことは戦前から知られており、1960年代から作用が緩やかで副作用や依存性が小さいとされるメチルフェニデートリタリン)が主に使われるようになった。12歳までの児童に使われることが多く、成人するまでに中止すべきだとされていた。(p.24)

児童に投与を限定していたのは、薬剤の有効性が脳が未発達の段階にある時に高いと考えられていたこと、思春期以降に中枢刺激剤を投与すると依存や乱用につながる恐れがあるとされたことの二つの理由による。(p.24)

メチルフェニデートは効き目も副作用も緩やかなほうではあるのですよね。成人までに中止すべきとされていたことはなんとなく知っていましたが、未発達の脳のほうが効果が高いと思われていたことは初めて知りました…。

世界で最も早くから ADHD薬物療法が行われていたアメリカでは1990年代に入ってからメチルフェニデートの処方が急増。1994年の1年間だけで全世界の消費量の8割以上にわたる2億錠を超える処方が行われ、処方を受ける児童の数は200万人を超え、成人になっても薬を止められないケースが膨大な数にのぼった。…臨床家の間からは大人にも ADHD の診断を広げるべきだという意見が増えてくるようになり、その要請を受け診断基準が変更された(DSM-IV)。(p.24-25)

処方されている薬の量や投与されている人数にも驚きますが、成人になってもやめられない人がいるから診断を成人にも広げようという要請が臨床家から出ていたことにもびっくり。

診断基準は変わることがある、と私の本にも書いたけれど、こんな流れで変更になっているのかと知ると、診断基準の信憑性って…と考えてしまいますね。

診断基準の緩和と薬物療法の拡大は二人三脚。対象年齢が大きく広げられメチルフェニデートの処方は1990年代だけで6倍以上に増加。(p.25)

そりゃ、診断基準が変わって診断のつく人が増えたら、薬物療法を受ける人も処方される薬も増えますよね…。

依存や乱用が社会問題化し、徐放製剤コンサータが2000年にアメリカで認可。2007年末から日本でも発売され、使用が爆発的に増えた。18歳未満のみ処方可能という制限が徐々に緩められることになった。(p.25)

徐放剤のほうが安全ではあるかもしれませんが、爆発的に処方が増えることや、年齢制限があっても結局緩和されていくことはやはり心配にはなりますね。

大人の ADHD の診断に関して、7歳未満の発症が12歳までの発症へと基準が緩み、本人の申し立てのみで診断が可能となった。(p.25)

これもDSM-5からだったように記憶していますが、さらに

2013年のDSM-5からASDであってもADHDと診断できるように診断基準が変更されたが、これはASDの3割に合併するADHD薬物療法が行えるようにするためだ。(p.33)

本人の記憶の範囲で手軽に診断がつくようになったのも、診断併記(これも私の本の中で触れました…)が可能になったのも、正しく2つとも診断名をつけるためじゃなく薬物療法しやすくするためだったとしたら、かなりショックです…。

国際的な学会が診断基準を緩めてまで診断を後押しするという状況は、医療機関にも関連業界にもまたとないビジネスチャンスを提供することにもなったが…(p.33)

なんとも思わせぶりな文章で第一章は締めくくられています。

岡田先生、本当に思いきって書いてくださったなと思っています。

目次を見ているだけで続きが気になって仕方ありませんが、それはまた後日。