親の緊急事態に遭遇した子どもたち
子どものピンチに親は駆けつけるもの
先日、息子が出先で怪我をしたことで一緒にいてくださった方から呼び出しの連絡をいただきました。
「病院で手当を受けた方が…」と心配していただきましたが、とりあえず傷を確認して持っていったもので簡単な手当てをして(簡易的な湿潤療法です…湿潤療法と言えば、とても気になっている夏井先生の本がまだ読めてないなぁ…)、私だけ先に帰りました。
その後も病院受診しないまま経過をみていますが、おかげさまで順調そうです。
まぁ、子どもの身に何かあったら親としては当然駆けつけるわけですが、落ち着いてからちょっと考えたことがありました。
親のピンチにテキパキ動く子どもたち
これまでに、診察室の中で「親のピンチにばっちり対応することができた子どもたち」の話を聞いたことが何度も何度もあって。
別に私の患者さんだけに親の急変が起こるわけでもないだろうし、他の先生方も経験されることかもしれませんが、子どもたちの普段の生活からは想像もつかないぐらい積極的に動いてくれるのです。
長年ひきこもっていて訪問看護の人とのやり取りさえ親まかせだったお子さんが、初めて訪問看護ステーションや担当看護師に自分から連絡を入れてSOSを求めたり(似たようなケースが数例ありました)。
必要最低限しか外出したくない青年が、親の急変に気付いて救急車を呼んで同乗したり、普段乗りたがらない自分の車を運転して病院へ連れて行ったり、といったこともありました。
どのケースも、当たり前ですが、子どもたちの活躍がなければ親御さんの命に危険があるような大変なことばかり。
親御さんが完全回復されてから「息子(娘)は命の恩人です」としみじみと、愛おしそうに、恥ずかしそうにおっしゃる親御さんと、それを少しだけ嬉しそうに聞くお子さんの姿がまたとても素敵で。
「いやホントに命の恩人ですよねー。よく咄嗟に必要な行動を判断して動けたよね!!」と私もまた驚きを新たにさせてもらっています。
思春期心性のもやもやの出口への一歩に
こうしたできごとがあると、親御さんの方はこれまでよりもお子さんに対して少し過保護でなくなり、お子さんの方も少し親にしっかりした顔を見せるようになるのがまた私から見るとちょっと嬉しくて。
もちろん親御さんがケガも病気もされないのがいちばんいいに決まっていますが、緊急事態があって、でも命に別状なくクリアすることができたとき、そのお子さんは思っている以上に判断力も行動力もあって必要なときには適切に動けるんだ、という感覚を親と子の双方が得られたという経験が残るのです。
そしてそのことが、その先に親子の関係性を少し変えるきっかけになっている…。
「転んでもただでは起きない」と軽々しく言っていい話ではありませんが、健康第一、安全第一、その上でピンチはチャンスでもあるのかもしれないな…とどうしても思ってしまうのでした。