ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

医学部で習ったホルモンの知識、ガラガラと崩壊…

ホルモンについてわかった、驚愕の事実

思春期子育て世代のお母さんたちにも、自分自身にも役立つこととして、更年期と向き合う準備を始めようと決めたのは、先日書いたとおり。

こちらの本を読み始めて、驚くような事実を次々と知ることになりました。

最新改訂増補版 医者も知らないホルモン・バランス

最新改訂増補版 医者も知らないホルモン・バランス

  • 作者:ジョン・R・リー
  • 出版社/メーカー: 中央アート出版社
  • 発売日: 2010/11/10
  • メディア: 単行本

自分の頭の整理も兼ねて、ここへ記録しておこうと思います。

第1部:ホルモンバランスの基礎知識(前半)

閉経の10年前からスパッタリング(無排卵性周期)が始まる。卵巣でプロゲステロンが作られないので、更年期症状が始まっている

エストロゲン補充療法は1950年代後半に登場

製薬メーカーとカリスマ婦人科医のタッグで、エストロゲンに関するいいニュースを広め、1964年にエストロゲン補充療法が広く知られることになったが、実は大した根拠はなかった

更年期へのカウントダウンは閉経より10年も前から始まっているなんて!!
そして今まで、更年期といえば女性ホルモン=エストロゲンを補充するものと思い込んでいましたが(たぶん医学部でもそう習ったはず)、発達障害バブルならぬエストロゲン補充療法バブルが起きていたなんて初耳でした!

エストロゲン剤を使う女性は子宮体がん発生率が4-8倍という結果が出た後、エストロゲン補充療法に代わってホルモン補充療法が台頭。しかしこれはエストロゲンに人工合成ホルモンであるプロゲスチンを併用するもの。「更年期はエストロゲンの欠乏が問題」という主張の路線は変わらない。

プロゲスチン併用によるメリットはあるものの、表面的なすり替えが起きているよう…ううむ。

体内で作られる3つのエストロゲンは、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)。エストラジオール過剰は乳がんのリスクを高め、エストリオールは乳癌を防ぐ

エストロゲン補充療法や避妊薬に広く使われる人工合成ホルモンのエチニルエストラジオールは乳がんのリスクを高める

エストロゲンは単一のホルモン名ではなく、複数のホルモンの総称。体内で産生される主な3タイプでもがんのリスクには差があるみたいです。さらに、人工合成ホルモンも分子構造が微妙に異なるさまざまな種類があって、発がんリスクはそれぞれ違うということのよう…。

先進国の食事は動物性脂肪、砂糖、デンプン、加工食品が多く、先進国では途上国の女性と比べてエストロゲン値が2倍も高い

環境ホルモン:ある種の石油化学物質は強力なエストロゲン作用を発揮する

食べものや化学物質の影響でホルモンレベルが変化したりホルモン作用が変わったりするのは、発達障害界隈で聞く話ともちょっと共通しているなぁ…と感じます。食べるものや環境、大事なんですね。

正常な月経周期と比べて無排卵性月経や閉経後の女性で大きく低下しているのはプロゲステロンエストロゲンも低下するが、せいぜい4割程度

更年期に低下を気にするべきなのは、じつはエストロゲンではなくプロゲステロンだったのか!! と驚かずにはいられません。

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プロゲステロンの話:人工合成ホルモンは特許が取れ、製薬会社の儲けが大きい。しかし効果の及ぶ範囲が狭く、安全上の問題も多い。

天然ホルモンであるプロゲステロンに対して人工合成ホルモンはプロゲストゲン、プロゲストゲン、ゲスタゲンなどがある。人工合成ホルモンについては熱心に研究が行われているが、悲しいことに天然プロゲステロンに関する研究は過去20年間実質ゼロ

製薬会社さんからすれば、ホルモンと同等の作用を持つ新しい分子構造を作り出して特許を取り、その有効性を世に知らせることはすごく大切なことなのは理解できます。が、体内で天然ホルモンのプロゲステロンが急激に減るのなら、プロゲステロンそのものを補っちゃダメなの?というシンプルな疑問も浮かびますよね…。

プロゲステロンは全てのステロイドホルモンの材料になるほど重要で、かつプロゲステロン自体にも大事な役割があるのに、男性よりもプロゲステロンが低くなる女性も

男性ホルモンのテストステロンに対して女性ホルモンエストロゲン、という対比でよく語られるけれど、ホルモンの代謝の図でわかるように、プロゲステロンはテストステロンにもエストロゲンの仲間にもなりうる代謝経路上流のホルモン。

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プロゲステロンを補えば下流エストロゲンも必要なら作られるわけで、エストロゲンを補うより万能なのでは…というのは直感的に理解できそう。

プロゲステロンは性ホルモンではなく、女性らしさを与えるものではないが、脳神経系にとって重要で脳細胞のプロゲステロンは血液中の量より20倍多い

プロゲステロンにはGABA受容体を介して鎮静効果や気持ちを静める方法がある。大量に使うと麻酔にもなり、少量だと正常な眠りを回復させる。障害から回復にプラスに働くという報告もある

更年期だからといって女性らしさを補うわけではないのが面白く思えます。
そして、脳への鎮静作用がこんなにも強いとは! 歳をとると睡眠時間が短くなってくるのは、女性の場合プロゲステロンが少なくなることと関係しているのかも…?

性への関心低下はエストロゲン不足ではなくプロゲステロン不足による。医大で習ったことと相反する

やはり医学教育では女性性とエストロゲンを関連づけて学ぶみたい。でも、プロゲステロンは全ての性ホルモンの上流にあるのだから、プロゲステロンが減ったら性的関心が低下しても何の不思議もないですね。

子宮に異常がない女性にエストロゲンだけを使うと重度の異形成が起こる。プロゲステロンを併用すると防げる。

更年期症状のほとんどはプロゲステロンだけ補えば改善する。

異形成=前がん病変。プロゲステロンの併用でエストロゲンによる子宮体癌発生を予防できるというのは既出でした。
更年期にはプロゲステロンだけを補えばよいという説、閉経後に劇的に低下するのはエストロゲンではなくプロゲステロンなのだから、まず補いたいのはプロゲステロンですよね!

ぐずぐずしている暇はない!

基礎知識の章を半分読んだだけでも衝撃的な話題が続々飛び出し、今までの自分の思い込みは何だったんだろう…と強く揺さぶられています。

補うべきはエストロゲンではなくプロゲステロンらしいぞ、というのはなんとなく見えてきましたが、基礎知識を最後まで読み終えてから自分の身体で何をどんな風に実践していくか具体的に考えたいと思います。