ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

大ピンチを迎えたときに,忘れずにいたい心構えとは?

1年くらい前のこと,使い慣れていたPCソフトが突然起動しなくなりました。

PaintshopPro」という,画像編集ソフトです。

www.paintshoppro.com

画像に関して私が「こんなふうに加工したいなぁ!」と思いつくようなことは何でも実現させてくれる大好きなソフトだったんですが,ある日を境に起動しようとするとオープニング画面が延々表示されるのみで,うんともすんとも言わなくなってしまって。

正直,大パニックです!!
年賀状のデザインづくりにも,証明写真用のサイズ加工にも,ちょっとPowerPointに載せたい画像を作るにも,なくてはならない存在だったから。

でも高いお金を出して別のソフトに乗り換えるのも悔しくて,勇気を出してGIMPという超有名高機能画像編集フリーソフトに乗り換えることを決意。そのとき必要な機能を調べては,おっかなびっくり使ってみることに…。

www.gimp.org

使い勝手がいろいろ違ってまだ十分思うようには活用できていないところもありますが,マニュアル本やサイトを参考にしながら,ずいぶん使いこなせるようになってきました。

今日も朝から自由な時間があったので,それでブログタイトル画像を編集してみたりして。

私が頼りにしている本はこちらですが,ほかにもたくさん出版されていると思います。

できるクリエイター GIMP 2.8独習ナビ Windows&Mac OS X対応 (できるクリエイターシリーズ)

できるクリエイター GIMP 2.8独習ナビ Windows&Mac OS X対応 (できるクリエイターシリーズ)

 

 

画像ソフトといえば3カ月くらい前からもうひとつ,InkScapeという新しいソフトに挑戦しています。

inkscape.org

これも無料なんですが,写真の加工というよりゼロからイラストを描くのに向いているソフトです。なおちゅんのすずめのイラストはInkScapeで作成しました。
ずっと苦手意識を持っていた「パス曲線」なるものを初めて自分でも扱えるような気分になれたのはこのソフトのおかげ。
こんなすごいソフトウェアをフリーで公開してくれるなんて,ありがたすぎます。

困ったときにすがらせてもらうのは,こちらの本。

できるクリエイター Inkscape 独習ナビ Windows&Mac対応

できるクリエイター Inkscape 独習ナビ Windows&Mac対応

 

 InkScapeを使おうと思ったのは,自分で描いた絵でグッズを作ってみたかったから。
フリーハンドの絵はへたくそすぎて,ペンタブで本格的に絵を書くような腕前じゃないし。テキトウな絵をそこそこ整えられるようなソフトはないのかと探していて,辿りつきました。マウスでヘロヘロな線を引いても,クリックひとつで滑らかな曲線に変換してくれたりする機能は感動ものです。

で,作ってみたグッズはこちら。f:id:nao-chun:20190916120156p:plain

「うつ消しごはん」にインスパイヤされ,毎日たまご3つとお肉200gを食べて,1日50gくらいのタンパク質が取りたいですねーというメッセージを込めてイラストを描きました。

万が一購入したいと思ってくださる奇特な方がいらっしゃったら,こちらのサイトからお買い求めいただけます。

suzuri.jp

話があちこちに飛んでしまいましたが,この1年の画像ソフト遍歴を振り返ってみて思うのは,もしもPaintShopProが今までどおりスムーズに使えていたら,今の私はこんなふうになっていなかったと思うのです。

なんとかして新しいソフトに慣れねばとがむしゃらになることもなく,パス曲線をいじってイラストを描いてみようというステップに踏み出すこともなく,漫然とPaintShopProがすべてと思う世界の中で過ごしてしまっていたのではないか,と。

トラブルはトラブルでも,何がどう転ぶかわからないものです。
ピンチに見舞われても,ひすいこたろうさんのように「これは何のチャンスなんだ?」って(内心大あわての中)見方を切り替えるのもいいなぁ,とふと思う祝日でした。
…私の場合は結果論ですが,最初から「これは何のチャンス?」って思えるようになりたいなぁ。

前祝いの法則

前祝いの法則

 

 

 

要注意!! 突然の急激な眠気を引き起こした犯人とは?

昨日の夕方ぷらっと買い物に出かけたら、偶然父と出会いました。
本を読むのが好きな父、図書館から帰るところだったようです。

別に会うのが久しぶりなわけでもないのですが妙に何かを語りたそうです。

「あのさ、ちょっと聞いてくれる? 図書館に行くのに意外と今日は暑いなーと思って、フレッシュジュースを飲んだんだよね。そしたらさっきからすごく眠くてだるいの。どうしたんだろう?」

ああ、父よ。
それは血糖値スパイクっていうヤツだと思うよ!

ちょっと水分補給したいだけだったはずの父。
コーラだのソーダだのをコンビニや自販機で買って飲むような年齢ではないので、生のフルーツをその場でミキサーで回してくれる、一見身体によさそうなフレッシュジュースを飲んだそうです。

f:id:nao-chun:20190915172454p:plain

でもジュースだと一口ずつフルーツを噛むようには時間をかけずに一気に飲むし、果物の糖分にガムシロップ加えてたりもするし、血糖値は当然急上昇する。

急激な血糖上昇に慌てた身体がインスリンを一気に放出して、血糖値を速やかに下げる…。

せっかくの水分補給のつもりがにわかに低血糖状態を作り出して、眠けやだるけを招いてしまったんですね。

そんなことをざっくり立ち話で説明したら、とても納得がいったようでした。

ついでに、今度はその二次的低血糖に対してアドレナリンやコルチゾルステロイドホルモン)がたくさん分泌されて血糖値を保とうとするから、その合成にビタミンやミネラルがたくさん無駄遣い?されてしまうことは「うつ消しごはん」にも書かれているとおり。

「今度から、暑い日は水かお茶を飲むようにするよ」と父。
うんうん、そのほうがいいね。気をつけて帰ってねー!

どうぞみなさんも、素材や添加物のことだけで安心せず、血糖値変化の観点から飲みものを選ぶようにお気をつけくださいませ。

ひいいいぃぃぃっ!! 恐怖の猛毒生物とまさかの遭遇…

今週半ばの某日、お昼で一旦仕事を終え、午後からの用事へ向けて移動することになっていて。

バスの時間を間違えて10分早くバス停に着いてしまい、こんな暑いのに我ながらアホだわーと思いつつ誰もいないベンチに腰かけてスマホを手にしたそのとき。

目の前の街路樹にガサガサッと乾いた音を立てて何かがぶつかって、私の足元に転がり落ちました。

あっ、セミだ。

もう寿命が近いのかな。
仰向けに落ちたのか、アスファルトの上でいつまでもくるくる回っているので、私のパンプスにつかまらせてあげたら起き上がれるかな…と足を動かした瞬間、なんとなくただのセミのサイズ感じゃないことに気づきました。

…ん?

f:id:nao-chun:20190914163357j:plain

くるくる回っているのは、セミじゃない。
なんと、セミを捕まえたスズメバチが私の靴から5cmのところでセミをくるくる回しながら押さえ込もうと奮闘しているではないですか!!

f:id:nao-chun:20190914161015j:plain

ひいいいいいぃぃぃぃぃぃっ!!

パンプスを差しのべる前に気づいてよかったわぁ…。
とりあえずスズメバチは目の前の獲物に夢中で、私のことなどまったく眼中にない様子。

そおっと立ってベンチの反対側に少し距離をとって座り直し、改めてじっくり観察(笑)。

これからどうなるのかめちゃくちゃ気になるのでしばらく動画撮影していたら、通りすがりのお兄さんに二度見されたけど、愛想笑いでスルー(笑)。

しばらく争った末、スズメバチは胸部の足が生えているあたりからトドメを刺したようでした。

セミをこのまま運ぶのか、ちぎって運ぶのか、…最後までずっと見届けたかったのですが、バスが来てしまって時間切れ。

まさかこんな猛毒生物の戦闘シーンを目の前で見ることができるとは…。
自分のアホな勘違いのおかげで、自然界の厳しい瞬間をちょっとだけ見守らせてもらえて、可哀想だけどちょっぴり得した気分でした。

落ち着いて調べてみたら、私が出会ったのはオオスズメバチのよう。頭楯下の突起の数で見分けるのだそうです。へぇ~!!

f:id:nao-chun:20190914162823j:plain

オオスズメバチは8-10月が繁殖期で危険度が増すようなので、みなさまもどうぞお気をつけくださいね。

どっちがいいの? 子どもの躾を脳のはたらきから眺めてみる。

昨日の記事にも書いた書籍「幼児期と脳の発達」,やっぱり鋭い考察がいっぱいです。

息子が小さい頃からずっと私の中で気になっていたテーマ「食べること」についても,またドキッとするような指摘がありました。

子どもがお箸どころかスプーンを使うのもおぼつかない時期の「食べこぼし」問題。幼いうちからきっちり意識させる方が早く上手になるのかいいのか、それとものびのび食べさせるのがいいのか…?

 

f:id:nao-chun:20190913135053p:plain

子どもの食べこぼしについて考えるのに、この本ではまずラット(ネズミ)の実験が紹介されています。

ラットの視床下部にある空腹中枢を麻酔で麻痺させると,当然ラットはお腹が空くのを感じなくなるので食べる行動をとらなくなります。
麻酔が切れると元どおり食欲が回復するのですが,この麻酔の効果を長く続けたとき,麻酔から覚めたラット(きっとお腹ペコペコですね)はエサを食べこぼしやすくなるのだそうです。

食べる上で必要な「手で食事やエサを口に運び,こぼさないように口や頬の筋肉を動かして嚥下する」という動作そのものは前頭葉の運動皮質が中心となって担当すること。

でも,空腹中枢を一時的に麻痺させたことによって,麻酔から覚めた後でも食べるための運動がうまくいかなくなるということは,視床下部前頭葉が遠く離れた場所ながら一緒になって食べるための運動をコントロールしているということでは…?

つまり,お腹が適度に空くように(空きすぎたらガツガツだし,空かなければ食べる行動がみられないので)食事の時間や間食の摂り方をうまくコントロールすると同時に,空腹中枢のはたらきを邪魔するような焦りやストレスを招く要素(箸の持ち方について口やかましく言うとか,短時間に残さず急いで食べさせるとか)を与えないような食事の時間を確保することがとても大事だということ。

「ネズミの実験の結果も,このような形どおりのしつけを厳しくすることの無意味さを暗示してくれるのですが…(中略)…昔から言われ続けてきた“食事は,落ち着いた楽しい気分で”ということの正しさを裏付けているわけです」と荒井先生。

…うんうん,ごはんはしっかりお腹を空かせて,楽しく,穏やかな気持ちで食べたいよね!

まだ幼いうちから,ご両親の躾がとっても厳しそうなお子さんにお会いするときには,このエピソードを話してあげたいな,と思います。

そして,我が子はもう食べこぼしに悩むような年齢ではなくなったけれど,心地よい食事ができているかどうか改めて見直してみようと思ったのでした。

みなさんのご家庭では,いかがですか?

 

グサリと突き刺さる! 子どもが何かに上達するときに重要な、たったひとつのポイントとは?

今,読み進めているのは「幼児期と脳の発達」という本。

f:id:nao-chun:20190912174220j:plain

たしか,からだ指導室「あんじん」の栗本啓司先生が読んでいらっしゃったことがきっかけで知りました。

既に絶版になってしまっているようですが,それでも図書館のおかげで読むことができるのはありがたいです。

一般向けの書籍のようだし,1983年刊行の本だからそう新しい内容もないだろうし,サラッと読めるかなと思いきや,平易な文章ながら中身はがっつり本格的。
脳や神経に関する専門用語や図解もどんどん登場します。

第1章「遊びこそ幼児の脳の発達の基本」は,幼児期の運動発達についての説明が中心。

赤ちゃんの大雑把な動きが力加減や方向などを精密にコントロールした「まとまった運動」になるためには,足腰の成長そのものというよりも大脳皮質が手足を協同して働かせるための指令をうまく出せるようになることが重要。

そのためには,幼児期の遊びは精巧につくられた見た目の魅力的なおもちゃよりも,生の素材を使って上手に遊べるようになるまで訓練が必要になるようなもの(石けり,お手玉,なわとび,こま回し)に熱中して粗雑な運動からだんだん上達して精密になっていくようなもののほうがよい,と説明されています。

…きっとけん玉も、ですね(笑)。

そして,大脳皮質が手足の動きをコントロールする経路は2種類あるということも丁寧に解説されていました。
大脳皮質から手足に直行して,とにかく運動をさせ続けようとする錐体路皮質脊髄路)と,外からの刺激や自分の体調の変化をモニターする「核」などを経由して運動にブレーキを掛けようとする錐体外路(皮質核路)があるおかげで,運動を頭と身体で覚えて,危険な失敗を回避しつつ快適な運動をすることが可能になる,というのです。
ある運動をするときに自信が持てるというのは、反復練習によって不安を伴うチャレンジをクリアできるくらいに皮質脊髄路が習得すれば、皮質核路が恐怖によるストップをかける必要がなくなる、というこのふたつの経路のほどよいはたらきがあればこそだ、と…とても腑に落ちました。

じゃあ、子どもには少し無理してでも早めにいろんな運動をさせて皮質脊髄路・皮質核路を発達させたほうがよいのか? という疑問にハッキリ「NO」と答えてくれているところがいちばん心に刺さりました。

「自分の興味と意志で自分から進んでやろうとしたことは、ある程度の個人差はあっても、うまくいきます。ところが、他人に強制されたものは、けっしてうまくいかないものです。」

…むむむ、耳が痛い!

幼児期の運動発達の問題に限らず、子育てする親のひとりとして常に胸に刻んでおきたい文章でした。

とにかく興味深い本なので、このまま読み進めたいと思います。

「重すぎるランドセル問題」も即解決?! デジタル教科書導入が進まない理由は?

先日見かけたこの記事に関連して、モヤモヤしています。

デジタル教科書、なぜ学校で使えない? 読み書き障害に有効も「特別扱い」と導入に難色

記事に不満があるわけではなくて、ホントになんでデジタル教科書導入は進まないんだろう、と。

実際に診察室でお会いするお子さんたちの中にも、学校でICT機器を使わせてほしいと動いていらっしゃるケースはあるし、実際に無事導入してもらえたケースも経験しています。

でも、大抵すんなり進まなくて。

そして不思議なことに、いつも導入が検討されるデバイスAppleiPad

…そりゃ抵抗あるのは当たり前だな、と思うのです。

だって、公立の小中高で携帯やスマホを学校に持ち込んでもいいところがまず圧倒的に少ないはず。
少なくとも私の住む地域で公式に携帯・スマホOKという公立校の話は聞いたことがありません。
せいぜい、放課後必要なら持ってきてもいいけど校内では電源を切るように、という高校があるくらい。

そんな状況で、いくら特別支援の必要な児童生徒だからといって授業中iPadを持たせるなんて…と心配になるのは当然じゃないのかな。

その子自身がiPadを適切に使うかどうか、クラスの誰かがいじくり回さないか、「ずるい」「えこひいき」って声が上がったら、もし壊れたら、もし盗まれたら、そもそもあんな高価なもの(すみません、私は持ってないんですけどお高いですよね…)学校が用意するのか、各家庭に用意させるのか、…。

デジタル教科書があれば学習が楽になる子が一定数いるのは間違いないのですが、こんなに懸念事項があったら「まぁ、ナシでいいんじゃない?」と無難に済ませたくなるのもわからなくはないのです。

とっくに議論になっているのかもしれないのですが、どうして「デジタル教科書単体」のデバイスを作らないんだろう? と不思議でなりません。

各学校が選択した教科書のデータしか入れられない、インターネットには繋がらない、通話機能もなし。
でも文字サイズが変えられたりコントラストや文字色・背景色が変えられたり、読みあげデータやルビ表示機能がついていたりするようなタブレット端末の規格を作って、各メーカーに製品化してもらったらいいんじゃないのかな、と。

そうすれば、必要な人は便利に使えるし、必要ない人には別段羨ましくもない(笑)はず。

どこか一社の専売にしたら揉めるかもしれないけど、キッズ携帯みたいに各社が出して、家庭や学校ごとに好きな端末を購入するようにすれば、いい感じで自由競争が起こるのでは…?

ハードはもちろん、教科書データ側にも共通の規格が必要なはず。
とすれば、国主導で規格を作らないと話は進みませんよね。

(公立機関での)合理的配慮が義務化されてもう数年。そろそろこんな話がまとまっていってもいいんじゃないのかな、と新内閣・新文科相決定の報道をみながら思う今日この頃です。

もしかしたら、もう具体的な動きが始まっているのかも?
詳しい方がいらっしゃったらぜひ教えていただきたいです。

f:id:nao-chun:20190911173041j:plain

【9/12 追記】

この記事を昨日アップしたら、知人が「自分は3000ページある専門書をKindleで持ち歩いている」と教えてくれました。

デジタル教科書には、超重量級のランドセルや学校かばんを毎日運んでいる児童生徒さんたちみんなの荷物を軽くすることだってできるはず。

f:id:nao-chun:20190912073945j:plain

教科書を読むことに関して配慮の必要な一部の子どもたちのためだけでなく、重い荷物に悩む通学中の子どもたちみんなのためにも、早く実現してほしいと思います。

子どもの注意や行動の障害を治す:診断(3) 有害な金属 / 害のない食品添加物やサプリメント

 火曜日恒例(?),ひとり読書会。

 長かった診断(3)も今回で最終回。
有害な金属と,害にならない添加物の話です。

 

【毒性のある金属】

・鉛,砒素,銅,ニッケル,水銀,カドミウム,そしてとりわけアルミニウムが食品添加物として使われる有毒金属である。

・これらの金属は呼気からも体内に入るが,特に鉛はガソリンに添加物として入っており,大気中の鉛濃度は3000年前の200倍。海の鉛量は10倍,北米の人は体内に100倍多く鉛を蓄積している。鉛は子どもたちの学習や行動の障害も引き起こしている。鉛は重く、大気中から地表に溜まるので、頭の位置が低い子どもの方が吸引して影響を受けやすい。

・鉛を取り除くには、キレーション(ペニシラミンによる)、亜鉛の補給が有効。

・診断は比較的簡単だが、鉛の影響を疑えるかどうかが鍵。血液検査より毛髪検査が有効。鉛の影響を除去するのに鉄も亜鉛も有効で、亜鉛は鉛の体内吸収を抑え、鉄は脳障害を低減する。

・鉛に安全域はなく,ゼロが最善。有害な金属の量そのものより栄養的に欠かせないミネラルとの比率が問題になるので,カルシウム・鉄・亜鉛・リンなどを欠乏させないことが大事。遅れのある子どもたちの毛髪検査では有害金属が多く栄養となるミネラルが少なかったという報告,暴力的犯罪者はそうでない人と比べて毛髪中のマンガンが多く,マンガン量は飲酒や栄養の足りない食事,心理社会的要因と相関があったという報告もある。

・少量のマンガンは身体に必要だが,多量だと知能の遅れや行動障害を主要因となる。マンガン濃度0.7ppmを超える割合は,囚人では62%,一般人では10.3%という報告もある。環境中にマンガンが多いかどうかも重要で,200の国のうち大気中マンガン濃度の高い13か国では凶悪犯罪が6倍も多いという。

・ヒトの母乳にはマンガンは少ないが,牛乳は3倍,豆乳ベースの人工乳は100倍のマンガンを含む。マンガンはモノアミンオキシダーゼの構成要素であり,脳内の抑制系神経伝達物質であるセロトニンの分解に関与する。牛乳や豆乳ベースのミルクを飲むことになった新生児は神経系が変化する恐れが大きい。

精油業者がオクタン(ガソリンの燃料の成分)ブースターである低コストのメチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニルをガソリンに添加できるよう政府の認可を求めているが,もし認められたら子供たちの健康がマンガンで害されることになるだろう。「子どもの脳は大人と違うし,子どもたちの日常の過ごし方も大人と違う。テトラエチル鉛がガソリンに添加されたとき半世紀にわたって影響が取り除けなかった。マンガンがなくてもエンジンは耐えられるが,われわれの子どもたちの脳はマンガンに耐えることはできない。」

・フッ素は身体だけでなく脳にも悪影響を及ぼす。ラットの研究では容量依存性に,胎児期のフッ素曝露で多動が,離乳期と成熟(3カ月)ラットは認知障害がみられた。ヒトでは骨粗鬆症のフッ素療法や虫歯予防のリン酸酸性フッ化ナトリウム溶液局所投与などで血漿中フッ素濃度が上昇する。

・重金属による害は目に見えないぶん,感染症よりも致命的である。親たちや子どものケアに関わる人は,有害な金属の外について,疑い,検査し,診断を受け,治療することで若い人たちを守るべきだ。


【害のない食品添加物サプリメント

・一部の添加物は有益で不可欠ですらある。甲状腺腫予防のため食卓塩に加えられたヨウ素,ペラグラ予防のため小麦粉に添加されたビタミンB群,解決用予防のためジュースに入っているビタミンCなどである。食品でなく,栄養素を錠剤などの形で摂る分子栄養療法を私は1951年から実践しており,知覚の安定化や知能の改善から気分の向上,行動の改善まで幅広くヒトの機能的側面をよい状態にしてくれることが明らかになっている。

----------

ひとりごと:ペニシラミンはキレート作用のある抗リウマチ剤。ビタミンB6への拮抗作用があるので,むやみに摂らず,慎重に容量を設定したりB6と併用したりする必要がありそう。
鉛はともかく,マンガンには肯定的イメージを持っていたし,フッ素についてはよくない話も聞きつつ歯科治療で口に入れるのも何となく受け入れてしまっていた。正しい知識を持つのは大切だと改めて感じる。
やっと分子栄養療法の話に辿りついた印象だが,治療の章までまだまだ道のりは遠い…地道に進んでいきたい。