ここのすラボ2.1

こどもの こころを のびのび すくすく 育てることをめざして試行錯誤中の児童精神科医なおちゅんのブログです。

もともと役に立っていたものが,学習を邪魔する要因になるなんて…?!

前回に続いて,学習の困難さをもたらす身体の特徴の話です。

nao-chun.hatenablog.jp

「ブレインジム-発達が気になる人の12の体操」では,安心できる環境でも学習の困難を抱えるこどもたちにみられる特徴として,原始反射のことが書かれています。

原始反射とは,赤ちゃんに生まれつき備わっていて,自分が意識的に動かそうと思わなくても自然に表れる身体の特徴的な動きのこと。大脳で「こうやって動かそう」と考える動きとは違って,原始反射は本能的・動物的な脳といえる中脳や延髄・脊髄といった部位が担当しています。

この原始反射は,赤ちゃんがお母さんのお腹からスムーズに生まれやすいよう,そしてその後もうまく成長できるようサポートしてくれたりしています。

ちょっと具体的にイメージしにくいかもしれませんね。

たとえばガラント反射という反射は,赤ちゃんの腰のあたりの背骨の左右どちらかをなでると、同じ側に腰をくねらせてそちらのお尻が持ち上がるような反射です。赤ちゃんが産道を通るときにうまく身体をくねらせて進むことに役立っていたり,生まれてからは排尿刺激にも関わっていたりします。

もうひとつ例をあげると,非対称性緊張性頚反射という反射は、赤ちゃんが頭を左右どちらかに向けると、同じ側の腕と脚がピンと伸び、逆に反対側は曲がるという反射です。この反射も赤ちゃんが産道を通りやすくすることを助けてくれますし,生まれたあとには赤ちゃんが見る方向に手が伸びることが見たものを触るのをサポートしてくれることになります。

こんなふうに役立ってくれる原始反射にはそれぞれ必要なタイミングがあって,その期間が過ぎると自然に消えていくもの。

でも,必要な時期が過ぎてもそのまま残り続けることもあって,そのときにかえって不便をもたらすことがあるのです。

さっき登場したガラント反射が小学生になっても残っていたら,椅子の背もたれに左右の腰が当たるたびに身体をその方向にくねらせてしまってじっと椅子に座っていられないことになってしまったり,布団に背中がこすれることが刺激になっておねしょしてしまったりするかもしれません。

非対称性緊張性頚反射の場合は頭の向いた方向の腕が伸びてしまうわけですから,黒板や教科書に目をやりながらノートを書くときやサッカーやバスケットボールで左右を見ながらドリブルするときに思うように体を動かせなくなってしまうかもしれません。

こうした赤ちゃんのとき役立っていた自然な身体の動き=原始反射のせいで学習などの学校の活動が思うようにいかなくなっているこどもたちがいる,ということも,感覚の特徴による難しさと同時に意識しておきたいな,と思います。